続・埼玉県西部の神社彫刻~秩父・大里・比企の宮彫めぐり~

以前に投稿した埼玉県西部の宮彫めぐり(https://togetter.com/li/1932821)で廻っていない地域を別途まとめました。 また、探訪に当たっては前回と同じく以下のサイトを参考にしました。 新・龍元洞雑記帳 続きを読む
6

埼玉県・秩父地方(秩父市も併せた秩父郡内)の神社彫刻(宮彫)といえば、秩父神社・三峯神社・宝登山神社のいわゆる「秩父三社」に代表される極彩色で豪華絢爛な彫り物のイメージが強いのですが、当まとめでは上記の三社以外にも彩色の無い白木の彫刻ながらも見応えのある神社彫刻を採り上げたいと思います。

なお、当日のルートの都合上、併せて参拝した秩父郡と接している寄居町や小川町の神社彫刻も紹介します。

宇根八阪神社(横瀬町・横瀬)

一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

昨日は埼玉県の秩父と寄居を中心に宮彫ガッツリ系の神社を巡ってきましたので、スローなペースでレポートしていきます。1箇所目は横瀬町・宇根八坂神社さん。格子タイプの覆屋内に社殿のみを安置という形式ですが周囲が開けているため光量も申し分なく、見事な彫り物を間近で鑑賞することができます。 pic.twitter.com/pbhQiHDkH8

2022-10-16 22:36:00
拡大
拡大
拡大
拡大
一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

胴羽目は順に劉備・関羽・張飛、鞍馬山で僧正坊から兵法書を受ける牛若丸、神功皇后が三韓征伐に於いて弓の筈で勝利の証として石に詞を彫り付ける場面となっています。また、脇障子は玉巵弾琴と蕭史(笙を持っているが鳳凰に乗っているため、少なくとも鶴に乗る王子喬や費長房ではない)と思われます。 pic.twitter.com/aAcieX1DpL

2022-10-16 23:14:00
拡大
拡大
拡大
拡大
一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

更に尾垂木には霊獣が連なり、腰羽目は唐子遊び・猩々・司馬温公の瓶割りとなっていますが、総じて社殿の規模に対し力の入った密度の彫り物です。 ※同社は横瀬町の指定有形文化財。なお、最初に社名を「八坂神社」としましたが、正式には「八阪神社」らしいです…(掲載媒体により表記の揺れがある) pic.twitter.com/YLabr0zoGL

2022-10-16 23:35:09
拡大
拡大
拡大
拡大
一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

小社であるからこそ、例え格子を隔ててはいても、普通であれば目視困難で望遠レンズが必須な尾垂木や大虹梁の上の見事な彫り物を間近に鑑賞できるのが実に堪らないですね…。#神社 #彫刻 pic.twitter.com/Lfh6eYpm72

2022-10-15 19:59:18
拡大
拡大

恒持神社(秩父市・山田)

一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

2箇所目は秩父市・山田地区の恒持神社さん。こちらはメインの社殿に彫り物がある訳ではなく、本殿部分の右手に増設するような形の覆屋内に鎮座している織姫神社・天神社(旧・丹生神社)さんの社殿に彫り物が施されているのですが、目視可能な部分が少なく正面と斜め右からしか見ることができません。 pic.twitter.com/OacMX3P7Aa

2022-10-17 16:02:28
拡大
拡大
拡大
拡大
一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

…ですが、実は本命はその隣の覆屋内に鎮座する諏訪神社さん。前述した八阪神社さんに勝るとも劣らない豪華な彫り物が施されています。なお、こちらも目視可能な箇所は正面のガラス格子と左側面にある数箇所の節穴ぐらいですが、前者に比べて胴羽目や脇障子などが見やすい位置にあるのが有難いです。 pic.twitter.com/rIGSkIwaki

2022-10-17 16:20:58
拡大
拡大
拡大
拡大

国神神社(皆野町・国神)

一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

3箇所目は皆野町の国神神社さん。明治40年以前は社号額にもあるように琴平神社でした。拝殿~本殿が直結している形式で、本殿の胴羽目に彫り物はないものの、向拝部分と海老虹梁の彫り物が充実しており見応えがあります。また既に他の方の指摘がありますが木鼻の意匠が牡丹である点が珍しいです。 pic.twitter.com/HD54NtOJQi

2022-10-17 18:42:53
拡大
拡大
拡大
拡大
一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

また、脇障子や軒下の長押部分にも様々な彫り物がありますが、賽銭箱に設置されている同社の由来と彫刻の解説を記した冊子(無料配布だけど志納を推奨)によれば、脇障子を除いては本社である讃岐・金毘羅大権現(現・金刀比羅宮)の縁起や祭礼に関わる内容が主体となっているとのことでした。 pic.twitter.com/87Ml2BIRSZ

2022-10-17 18:57:37
拡大
拡大
拡大
拡大

末野神社(寄居町・末野)

一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

4箇所目は寄居町の末野神社さん。こちらもメインの彫り物は向拝部分のみ。中備には二十四孝の董永、唐破風の下には董奉(或いは巨霊人)。海老虹梁は親子龍の透かし彫りです。なお、拝殿左手には竜と虎の古い彫り物を再利用した社殿改修記念の奉納額(昭和53年)もあります。 pic.twitter.com/FVRsyMMsm3

2022-10-17 19:18:06
拡大
拡大
拡大
拡大

佐太彦神社(寄居町・折原)

一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

5箇所目は寄居町・折原地区の佐太彦神社さん。当日は午前中が祭礼だったそうで境内に氏子さんが居たので撮影許可について尋ねたところ、隣家が宮司さんのお宅とのことで訪問してご許可を頂戴しました。本殿は少々高い位置にあり、目線の位置は瑞垣の下の孔のあたりで鑑賞時は脚立があるとベターです。 pic.twitter.com/2T3gewxxLl

2022-10-17 21:12:24
拡大
拡大
拡大
拡大
一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

胴羽目は順に太公望と文王の邂逅、猿田彦命と天鈿女命、黄石公から太公望の兵書を授けられる張良となっています。なお腰羽目には彫り物はないものの、四方の持ち送りに龍を配しており、そこそこシンプルながらも大振りの造りで迫力を感じます。 pic.twitter.com/eb1IuK8M38

2022-10-17 21:28:21
拡大
拡大
拡大
拡大

稲乃比売神社(寄居町・鉢形)

一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

6箇所目は寄居町・鉢形の稲乃比売神社さん。本殿を社殿内に安置するタイプです。正面の大きな格子戸に加え、社殿両側の後部と背面にも少し低い位置ながらそれぞれ格子があり、やや見上げる形になるものの彫り物の鑑賞は比較的容易ですが、背面は社殿から彫り物までの間隔が狭いため難があります。 pic.twitter.com/eBUvALI3xC

2022-10-17 21:51:26
拡大
拡大
拡大
拡大
一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

胴羽目は順に、全て二十四孝の大舜、楊香、郭巨ですが、大舜の彫り物には原典には登場しない謎の女性キャラや、楊香の方には同じ二十四孝ながら全く別のエピソードに登場する剡子が何故か同じ場面にいるなど、アレンジを効かせた内容となっています。なお、腰羽目には彫り物はなく簡素な造りです。 pic.twitter.com/Ip95wNQjRT

2022-10-17 22:08:16
拡大
拡大
拡大
拡大

八宮神社(小川町・小川)

一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

そして当日最後の7箇所目は小川町の八宮神社さん。本殿は完全露出型の割には彫り物自体の劣化も少なく、尚且つ、周囲の玉垣も低いため腰羽目などの彫り物もストレートに鑑賞ができるという好条件でもあることから、個人的にオススメしたい神社さんです。 pic.twitter.com/pb2uuirXpo

2022-10-17 22:26:13
拡大
拡大
拡大
拡大
一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

胴羽目は三国志の逸話で有名な「三顧の礼」で順に草庵の孔明と童子、劉備・関羽・張飛、そして最後は劉備たちが草庵を訪れる際に待機する兵卒たちと思われます。また、腰羽目にはいずれとも唐子を配するなど脇障子の神仙も含めて全体の統一感を出した構成となっています。 pic.twitter.com/x8TiDe8Ane

2022-10-17 22:41:47
拡大
拡大
拡大
拡大
一魁斎 正敏@浮世絵スキー&狼の護符マニア @ikkaisai

なお、同社の境内の青麻三光宮にも小社ながらしっかりと彫り物が施された社殿が安置されており、八宮神社さんの社殿と共に埼玉県指定有形文化財となっています。…といったところで、当日はここで日暮れとなったので探訪を切り上げて帰路へと就いたのでした。【了】 pic.twitter.com/8ENin4IydB

2022-10-17 22:50:18
拡大
拡大
拡大
拡大

参考書籍はこちらです。