「君、ルワンダの中央銀行へゆかないか?」ー1964年、とある日銀のおじさんに、国際通貨基金からこんな申し出があった。

未知の国、ルワンダ。大変貧乏な国で、独立前後から流血沙汰が続いていること位しか情報がなかった。 そんな"異世界"に、この日銀マン──服部正也氏は飛び込むことを決意する。 _(:3 」∠ )_
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さとみ(跡地) @satorni

なろう系金融ファンタジーやっと来た。POP入ってなかったんで手書きしたわ。 pic.twitter.com/4OF2O4frYs

2021-03-03 09:45:18
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フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

「君、ルワンダの中央銀行へゆかないか?」 1964年、とある日銀のおじさんに、国際通貨基金からこんな申し出があった。 未知の国、ルワンダ。大変貧乏な国で、独立前後から流血沙汰が続いていること位しか情報がなかった。 そんな"異世界"に、この日銀マン──服部正也氏は飛び込むことを決意する。 pic.twitter.com/kqMYDLIj1c

2023-04-24 01:53:40
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フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

調べてみると、ルワンダの経済は極めて絶望的だった。 固有の財源というものはなく、外貨も殆どなく、財政は大赤字。 生命線とも言える最大の輸出物資は世界的に過剰気味なコーヒーであり、それも生産量が減少しつつあった。 加えて教育状況は極めて悪く、官吏や政府の素質は劣悪であった。

2023-04-24 01:53:40
フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

実際にルワンダの中央銀行に着任して来た服部氏は、その現状を目の当たりにした。 行内には派閥があり、つまらぬことで意見が割れる理事会。 銀行の基本も知らない副総裁。 優秀だが無責任すぎる理事。 業務の内容すら理解していない一般職員。 中央銀行に最も大切な「威信」が、既に失墜していた。

2023-04-24 01:53:41
フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

こんな状況下で、中央銀行は設立当初から破綻寸前の資産状態だった。 銀行券を発行するのが中央銀行の使命のはずなのに、銀行券のストックすら不十分なのである。 予想を上回る惨状に、服部氏は戸惑っていた。 どこから手をつけるべきか……もはやどうしようもないのではないか。

2023-04-24 01:53:42
フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

ここで、服部氏は決意する。 なるほど銀行の状況は確かに最悪だ。 しかし、逆に見れば、これ以上悪くなることはない。 つまり、何をやっても改善になるはずである。 とにかく、何でもよいから、気のついたことからどしどしやればよい。 こうして、服部氏は精力的に仕事にとりかかったのであった。 pic.twitter.com/kPiVQ1GCyi

2023-04-24 01:53:44
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フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

「私はルワンダのためにきた。全力をつくして働くつもりだから、協力してほしい。」 服部氏は自ら陣頭に立ち、中央銀行の建て直しを始めた。 一週間もの記帳の遅れの取戻し、職員への教育、人事や外貨制度の整備。 こうした取組の中で、服部氏は徐々にルワンダ人からの信頼を得ていった。

2023-04-24 01:53:45
フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

経済への応急措置の中で、服部氏は様々な人物に出会った。 かつての革命指導者であり、服部氏に全幅の信頼を置くカイバンダ大統領や、彼のもとで活躍するチマナ蔵相、服部氏の片腕として寡黙に働く部下たち、そして働き者の人民たち。 後に服部氏は、彼らのお陰で任務を遂行できたのだと振り返る。 pic.twitter.com/lQrtVbRS9Z

2023-04-24 01:53:46
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フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

一方で、既得権益に拘る有力者や、口先だけの傲慢な外国人たちが服部氏や中央銀行の前に立ちはだかったのもまた事実だった。 服部氏はそういった人々も逐一論破していき、着実に協力体制を築いていった。 こうして徐々にルワンダの実情を理解し始めた服部氏は、「経済再建計画」の立案に着手する。

2023-04-24 01:53:47
フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

服部氏は確実な計画を立てるため、ルワンダ人を知ることから始めた。 その結果、次のようなことがわかった。 そもそもルワンダ人は、自分たちの食物は自作する傾向にあった。 そのため、彼らは輸入物資のためにのみ、現金が必要となる。 つまり物資の供給が不足すれば、現金の必要性は減少する。

2023-04-24 01:53:48
フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

結果、農民の多くが働く意欲を無くし、自活経済になったというのが、現状のような経済停滞の主な背景の一つだった。 実際のルワンダ人は働き者で、有望な農業資源にも恵まれている。 服部氏はここに目を付け、価格の是正や物資供給の充実による農業中心での繁栄を図ることを、計画の中心に据えた。

2023-04-24 01:53:48
フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

新平価導入や税制改革など、通貨の改革は順調な滑り出しを見せた。 人家が点在し、畑も少なく、荒地ばかりだった町は落ち着きと明るさを取戻し、田舎では住民の服装が明らかに良くなっていた。 一方、今まで利益を得ていた外国人商人などからの反発もあったが、服部氏はそれらも冷静に対処していく。

2023-04-24 01:53:49
フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

通貨改革が上手くいったことで、経済再建計画は本格的になっていった。 減産しているコーヒー等の農業生産の再建や、ルワンダ人の手による流通機構の整備など、発展・流通に必要なインフラの整備に順次着手したのである。 まず服部氏は、中央銀行を頂点とする経済開発金融の体制を完成させた。

2023-04-24 01:53:50
フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

これにより、国内の全金融機構は外貨事情の許す範囲内での経済再発に注力できるようになった。 また、農作物の生産体制を改善し、働けばきちんと利益を挙げられるように整備した。 さらに中央銀行の投資により倉庫会社やバス公社なども実現。 ルワンダは着実に安定、そして発展の道へと走り出した。

2023-04-24 01:53:50
フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

改革が始まり、ルワンダが発展していく中でもトラブルは発生した。 チマナ蔵相の更迭と無能な後任の就任、天候や市況の悪化、独立移行の騒動で国外に逃亡したツチ族による侵攻…… それでもルワンダは確実に発展していた。 国内物価と外貨事情の安定と、その上に経済活動の大幅な拡大が実現された。

2023-04-24 01:53:51
フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

ルワンダ経済はこの間、質的にも発展したといえる。 自作農家の自発的な努力で達成された農業の発展の影響は、農村での生活向上として確実に現れていた。 ルワンダ人商人の発展も目覚ましく、外国人が独占的だった経済活動にもルワンダ人が着実に参加しはじめ、市場での競争が正常化されていた。 pic.twitter.com/3P55dhZr3w

2023-04-24 01:53:53
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フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

1971年、自分の任務が全うされたことを悟った服部氏は、惜しまれつつも遂にルワンダを去った。 その後もルワンダは以後20年にわたり、アフリカの模範生として発展を続けることになる。 しかし80年代後半のコーヒー暴落に伴う経済悪化を萌芽として、ルワンダには不穏な空気が漂い始めるのだった。 pic.twitter.com/BTgi3qu3j4

2023-04-24 01:53:55
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フォースター勲功男爵の手記 @SirFoerster55

※今回はどちらかというと服部正也氏による「ルワンダ中央銀行総裁日記」の要約です。 参考文献 服部正也著「ルワンダ中央銀行総裁日記」(中公新書) 続きの話 twitter.com/SirFoerster55/…

2023-04-24 01:53:56
W. フェルステル卿 @SirFoerster55

1962年、ルワンダは独立を果たす。 60年代後半からルワンダ経済は急成長し政治も安定したものの、70年代になると経済の悪化に伴い政治が不安定化。 73年にはクーデターが発生しフツ系政権が発足、国外に逃れたツチ人難民はルワンダ愛国戦線(RPF)を組織して反政府運動を展開し始めた。 pic.twitter.com/USZUIUbUQ1

2023-04-07 18:39:25
猪川小砂★STONE🐗7回目XBB64接種 @Panzerkeil

「ルワンダ中央銀行総裁日記」中公新書。著者の服部正也氏は東大法学部から海軍に志願して戦争中は暗号解読班にいて、阿川弘之の上官だった。欧州の植民地経営の非道さも読み取れる好著。せっかく状況が多少好転したのに、後のルワンダが陥る地獄のような状況も、結局はそれが原因なんだよなあ。 twitter.com/satorni/status…

2021-03-04 15:31:27
乙です〜 @deep__wreck

「日銀マン」を「日本のおじさん」て書き換えたことで、一気にリアリティを帯びて感じられる。記事の向こうの何かではなく、生身の人ってレベルで。 twitter.com/satorni/status…

2021-03-04 12:17:43
いちき @ichiki_817

なろう系タイトルに対して「美しくない」と思っているけど、なろう系になった瞬間ぐっと読みたくなったから、なろう系タイトルって販売戦略として物凄く優秀なんだろうな twitter.com/satorni/status…

2021-03-04 06:19:37
るまたん(ほぼインアクティブ) @lematin

この本で一番感動したのは、欧米人の間で「怠け者だ」と評価されているルワンダ農民の実態を調査したら猛烈に働いていた(政府に捕捉される所得を計上していなかっただけ)というエピソード。 「過酷な発展途上国の環境で、怠けている人が生存できるはずはない」という筆者の納得が印象に残った。 twitter.com/satorni/status…

2021-03-04 09:04:55
るまたん(ほぼインアクティブ) @lematin

「問題は実態ではなく、評価基準のほうにある」というアイデアは、もしかしたら僕の人生を決めてくれたかもしれない。小学校高学年の頃の読書体験。

2021-03-04 09:06:15