三国志こばなし集2023年9月号(下)現パロ編

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典韋「すまねえみんな！しばらく風呂に入れなくなっちまった！」 曹操「何か故障したのか？」 典「多分な…」 夏侯惇「だいぶ古くなっていたからな」 夏侯淵「そういうこともありますって！」 典「…ありがとな」 曹「ならば皆で銭湯に行かんか？」 惇「ほう」 淵「いいですな！」 典「俺に任せろ！」

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荀彧「この辺りに銭湯ってありましたっけ？」 典「デカい風呂が自慢の所さ」 郭嘉「へえ」 于禁「若手の頃はあちこちで世話になっていましたよ」 許褚「ここだ」 爺「いらっしゃい」 典「親父！しばらく世話になるぜ！」 爺「あいよ」 曹「…趣のある銭湯ではないか」 典「じゃあ早速！」

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郭「やっぱあなた、筋肉エグいですね」 典「あたぼうよ！」 郭「どれどれ…」 典「なんで胸から触るんだ！」 荀「中学生じゃあるまいし…」 曹「文若!?」 荀「はい？」 曹「なんだその間抜け極まるパンツは…」 荀「しまった!?」 惇「…意外だ」 淵「選んで買ったの？」 于「…これは、竜ですかな？」

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荀「皆して眺めに来ないでください！」 曹「やいやい！間抜けパンツ文若！」 荀「あんただっておっさん極まる白ブリーフ履いてるじゃないですか！」 曹「仕方ないだろう！元譲がこれしか買ってこないのだから！」 惇「文句を言うな！」 荀「ええっ!?」 于「なんですと…」 曹「何がおかしい！」

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郭「あんた、夏侯惇殿が買ってきたブリーフ履いてるんですか？」 惇「!?」 典「いくつのガキだよ、曹操…」 淵「やっぱこのブリーフ、そうだったんだ…」 曹「やかましい！」 許「さっさと入るぞ」 郭「うわ！管理人さんもヤバい！」 許「胸を触ったら頭骨を鷲掴みにするからな、郭嘉」 郭「…おす」

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曹操…帰宅次第大慌てで自分のパンツを確認したら九割白ブリーフだった。 夏侯惇…孟徳の下着なんぞに金をかけられるか！ 夏侯淵…だっさかったなぁ二人とも… 典韋…手拭いをバンダナにすると似合う男ナンバーワン。 荀彧…帰宅次第大慌てで自分のパンツを確認したら普通のパンツが見つからなかった。

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郭嘉…許褚のデカすぎる手に頭骨を触られただけで死を覚悟した。 于禁…曹操らの悪ノリに適応し始めてきた。 許褚…かつて一度だけ体重計に乗ったら壊してしまった事があるのを内緒にしている。

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曹操「なあ、文若、奉孝」 荀彧「はい」 郭嘉「なんでしょう」 曹「最近半泣きで歯医者に行ってきたんだがな」 荀「夜中におやつを貪ってそのまま寝てたんですか？」 郭「歯磨き嫌いそうですもんね、孟徳殿」 曹「…もっと心配してくれよ」 荀「それでどうされたんです？」

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曹「…まあ歯の治療を受けに行ったわけだ」 郭「ええ」 曹「お前たちも知っていると思うが、歯の治療中は口内に唾液が貯まるよな」 荀「貯まりますね」 曹「それを逐一吐き出す訳にもいかんから、折り合いで歯医者が唾液を吸引するだろう？」 郭「…それで？」

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曹「唾液を吸引する装置があるということはだ、二人とも」 荀「…」 曹「それを貯める器も付属している訳だ」 郭「そりゃそうでしょうが…」 曹「するとその器の中には一体何人の患者達の唾液が蓄えられ…」 荀「孟徳殿」 曹「どれほどの口内細菌がいるのだろうかという事に想いを馳せてしまってだな」

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荀「信じられない…」 郭「なんであんたはみんなで水あめ練ってる時にそんな話をするんですかね！」 曹「…」 荀「もう当分水あめは舐められなくなっちゃいましたよ！」 郭「まだ一口も舐めてないのに…」 曹「ちなみにこのネタを思いついた瞬間、作者は歯の治療中にも関わらず笑ってしまったという」

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荀「嘘ですよね!?」 郭「そこまで馬鹿だったんですか!?」 曹「歯医者でいきなり笑い出す患者第一号になってしまったという」 荀「うわあ…」 郭「歯医者さんもたまったもんじゃないですね」

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曹「話を戻すが」 荀「もういいですって！」 曹「曰く、我らの口内細菌は三百から七百種類いて」 郭「へえ」 曹「その数たるや千億から二千億、歯磨きを怠る者は四千億から六千億、ひいては一兆にも至るという」 荀「兆…」

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曹「そんな口内細菌を多量に含んだ唾液を何人分もブレンドした器があるのだぞ？」 荀(言い方…) 郭「小宇宙ですね」 曹「その通りだ。もしかしたら例の器の中では我らが可視できないだけで、未知の世界があるのかもしれんと思わないか？」 荀「そんな馬鹿な…」 曹「本当に否定できるか、文若？」

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郭「我らの生きる惑星だって、大宇宙から見れば砂粒にも満たないのですよ？」 荀「…たしかに」 曹「だが彼らの生きる界隈は我らよりも過酷ではないかな」 郭「単位が千億からですものね」 荀「人類ですら七十億だというのに」 曹「だろう？千億どころか一億すら想像できん」

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曹「例えば虫歯菌は口内の糖類を代謝することで、我らの口内環境を悪化させる」 荀「はい」 曹「つまり虫歯菌は我らの口内にいるから厄介なのだな」 郭「ほう」 曹「だから口内細菌のみの小宇宙に生きていれば、必ずしも人から嫌悪される細菌ではないのではなかろうか？」 荀「一理ありますね」

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郭「虫歯菌が厄介なのは我々人類の歯に害を及ぼすからだものな…」 曹「その通り！」 荀「…そういえば、先日古代の英雄の墓から英雄本人と思われる人骨が発掘されるニュースを観たんですが」 郭「ああ！頭骨を調査したら虫歯だらけの小男だった英雄ですね！」 曹「それはみっともない英雄だな！」

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荀「…？」 郭「…？」 曹「なんだ、お前たち…」 荀「いえ…」 郭「別に」

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曹「…話を戻そう」 荀「口内細菌も大変なんですね」 郭「どれだけの小宇宙を発展させたところで、彼らの命運は常に歯医者さんに握られてますもんね」 曹「ああ。唾液を捨てて消毒されたら今まで築いていたかもしれない文明も何もかもが台無しだ」

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荀「それって地球に巨大隕石が衝突するよりも苛烈ではありませんか？」 郭「ええ。宇宙が突然なくなってしまう事態なんて考えられません」 曹「彼らからすれば杞憂が本当になったようなものだな」

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郭「もしも杞憂が本当になる事が分かったらどうします？」 曹「合コンの鉄板ネタだな」 荀「おそらく地獄絵図になるでしょうね…」 曹「ああ。辺り一帯が無法地帯になるであろう事は想像に難しくない」 郭「やっぱり人間ってそうなっちゃうんですかね…」 曹「どうだかな…」

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荀「私もどこまで正気を保てるか、自信はありません」 曹「いや、文若。お前は大丈夫だ」 荀「孟徳殿…」 曹「奉孝もな」 郭「ありがとうございます…」 曹「七十億の人々の中から、我らがここで出会う事ができた奇跡に改めて感謝しようではないか」 荀「そうですね」 郭「口内細菌に教わりましたな」

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曹「ありがとう、二人とも！」 荀「…やっぱり孟徳殿、口臭いですね」 郭「歯を磨いてきてください」 曹「こんな落とし方があってたまるか！」

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曹操…荀彧と郭嘉の見立て通り、深夜におやつをむしゃむしゃ貪り、歯磨きを徹底的に横着し続けた当然の帰結であった。 荀彧…なんかあのニュースの英雄に見覚えがあるんだよな… 郭嘉…どこかで会ったことある気がしましたよね。

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曹操「…」 夏侯惇「さっさとゴミを捨てに行かんか孟徳！」 夏侯淵「今日を逃したらまた二週間後になるんですぜ！」 曹「…やれやれ」 惇「鍵を持って行けよ」 淵「俺らもう仕事なんで」 曹「…」 曹「もっと近場にゴミ捨て場を設置してもらえんかな…」 「」 曹「ん？」 「」 曹「…鍵は」 曹「…」