『山月記』でおなじみ、虎になった李徴の元ネタ『人虎伝』と逆的な昔話が朝鮮にある。人間と思い込んだ虎の話『木こりと虎』

儒教的な教えを含んでいて興味深い
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リンク www.aozora.gr.jp 中島敦 山月記 3 users 73

『人虎伝』を逆さにしたような朝鮮の昔話『木こりと虎』

SOW@ @sow_LIBRA11

作家のはしくれでございます。「戦うパン屋と機械じかけの看板娘」(HJ文庫)全10巻。「剣と魔法の税金対策」(ガガガ文庫)全6巻「機動戦士ガンダムSEED ECLIPSE(ストーリー担当)」ガンダムエースにて連載中です!

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そういえば、みんな大好き「その声は、我が友李徴子ではないか!?」でおなじみの「山月記」なんだが、元ネタは中華の古典と言われるこの話の逆サイド的な昔話が、朝鮮にあってね、「木こりと虎」って言うんですが。

2023-09-18 15:25:41
SOW@ @sow_LIBRA11

あるところに貧しい木こりの男がいた。病の母との二人暮らし。少しでも多くの木を切ろうと、森の奥に入り込みすぎてしまい、とんでもない巨大虎に遭遇する。 食い殺す気まんまんの虎を見て、錯乱した木こり、とっさに叫ぶ。 「兄さん、兄さんじゃないか! 探してたんだ!!」

2023-09-18 15:27:37
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その時、不思議なことが起こった。 虎が返事をしたのである。 「え、俺? 俺、人間だったの?」 わずかに見えた生への光明に、木こりは必死にすがり、口先八丁を並べ立てる。 「忘れたのかい兄さん、ああこんな虎になってしまって。俺はずっと探してたんだ。母さんも心配してたよ」と。

2023-09-18 15:28:54
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首をひねる虎。 「いや俺、人間だった記憶ないんだけど・・・いや待てよ、いやそうか、言われれば思い当たるフシがある」 そういうと、虎は言う。 「俺、かーちゃんいないんだ。生まれたときからずっと一人でな。どんだけ探しても見つからなくて。そうか、人間なんだから、虎の母親はいないよな」と。

2023-09-18 15:30:22
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信じ込んでしまった虎、木こりを弟と認めてしまう。 「できれば母上に会いたいが、このような姿では恥ずかしくて合わせる顔が(文字通り)ない。どうかご健勝にと伝えてくれ。あとお前、こんな奥まで入ったら危ないぞ」と言って去っていった。

2023-09-18 15:31:37
SOW@ @sow_LIBRA11

やれ命拾いしたと思った木こり。 だが、それから不思議な事が起こる。 木こりの家の前に、イノシシが置かれていた。 首筋には虎の牙の跡。 あの虎が置いていったのだ。 それからも、何日かおきに、そういった獲物が置かれるようになった。

2023-09-18 15:33:07
SOW@ @sow_LIBRA11

その肉と毛皮を売ることで、木こりの暮らしは楽になる。だが怪しんだ母親に問い詰められ、ついに顛末を話すと、母は言う。 「ああそうなのか、その虎は、私を母と慕ってそのような孝行をしてくれているのか。ならば私も母として礼をしなければならない」と。

2023-09-18 15:34:27
SOW@ @sow_LIBRA11

病床の身を無理して立ち上がり、森に向かって母は言う。 「息子よ、ありがとうよ。いつかお前と会える日を楽しみにしているよ」と。 虎が「会える日」は、人の姿に戻った日。 だがそんな日は来ない、虎は虎なのだから。

2023-09-18 15:35:39
SOW@ @sow_LIBRA11

そうしてしばらくたち、それなりに滋養のあるものや、薬も買えるようになった木こりの家だが、母親はついに病で命を終える。 葬儀が行われた夜、森から聞いたこともないような獣の吠える声が響き、参列者たちは震え上がる。

2023-09-18 15:36:58
SOW@ @sow_LIBRA11

だが木こりだけはそれを理解する。 「ああ、兄さん。知ってしまったのだな」と、それは虎の咆哮だった。啼き声ではない、泣き声だ。 母を失い、悲しみにくれる「息子」の涙の声だった。

2023-09-18 15:38:20
SOW@ @sow_LIBRA11

それから木こりの家に獲物は置かれなくなった。 ついに虎は去ってしまったのかと思われたが、数カ月後の後、再び森に入ると、二匹の子虎がいた。 子虎たちは木こりに尋ねる。 「叔父上様ですか」と。

2023-09-18 15:39:27
SOW@ @sow_LIBRA11

子虎たちは、かの虎の子どもであった。 虎はどうなったかと問う木こりに、子虎たちは答える。 「父は死にました」と。 母が死んだあの日から、悲しみに暮れるあまり食を絶し、衰弱して死んだのだという。

2023-09-18 15:42:25
SOW@ @sow_LIBRA11

「私はなんという恥知らずなのだ。このような獣に成り果ててしまったがゆえに、母の死に目にも会えなかった。なんという親不孝者なのだ」悔いて悲しみ、虎は死んでしまった。 それを聞いた木こりは、虎の亡骸を探し、母の墓の隣に「家族」として弔い、二匹の子虎を引き取って育てたという。

2023-09-18 15:43:49
SOW@ @sow_LIBRA11

古来より「孝悌」という教えがある。 孝は親を慈しみ、親は子を慈しむ。 悌は弟は兄を大切にし、兄は弟を大切にせよ。 そういう道徳の教えである。 獣でさえ、道徳を知れば、例え偽りの関係でも、人のように悲しみ人のように尽くす。

2023-09-18 15:46:21
SOW@ @sow_LIBRA11

しかるに世を見るに、人でありながら道徳を失い、獣のように生きる者が散見される。 弱き者を貪り喰らい、家族すらないがしろにするような恥知らずな者たち。 そんな者たちと、この虎、果たしてどちらが「正しい人」なのか――

2023-09-18 15:48:13

韓国では有名な昔話の模様

カーティス@プ◯リポ雌雄鑑定士協会 @Curtis21Captain

『親思いの虎』とか『親孝行の虎』等の名で伝えられてる朝鮮の民話ですな。 いろんなVer.があるけど、それぞれ話のポイントが少しずつ違うのが興味深い。「虎を騙してしまった事への罪悪感」だったり「いつしか虎を本当の兄のように思っていたこと」だったり。 twitter.com/sow_LIBRA11/st…

2023-09-18 20:10:40
毛玉(とうとう大河アカに💧)まんまる @green82724542

@sow_LIBRA11 漫画で読んだこと有ります、随分昔で作者さんはググっても分かりませんが… …騙した息子の罪深さと虎の哀れなまでの情に、本当に虎の母になろうとするお母さんが切なかった記憶が…

2023-09-18 21:29:32
うるち米お @urutimaidesu

@sow_LIBRA11 韓国語音声、日本語字幕の読み聞かせもあります ほんとにいい話ですよね... youtu.be/tQbF94Ya1Ts?si…

2023-09-18 23:32:40
リンク www.koreanculture.jp 駐日韓国文化院 Korean Cultural Center 韓国文化院は日本の皆様に韓国文化を伝える前進基地の役割。今後も韓国文化院では韓国と日本の文化・芸術・スポーツ・観光を柱とする交流事業の中心的役割を担い尽力いたす存在です。