昨今のインフレーションおよび円安におけるMMT的な一考察
- motidukinoyoru
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昨今のインフレーションにおける一考察として、Nersisyan&Wray(2022)のWPなどをもとにスレッドでつらつらと書いていくことにします。 levyinstitute.org/pubs/wp_1003.p…
2023-11-05 14:19:14巷では、米政府による放漫財政がアメリカのインフレを加速させたが如き主張がまかり通っておりますが、実際には個人所得は2019→2020を最後に頭打ちで、その理由は社会給付が早々に手仕舞いされたからです。また、一時給付の大部分は貯蓄増に吸収され、その後貯蓄水準は元々の水準に戻りました。 pic.twitter.com/0gXgKoxfdS
2023-11-05 14:21:54インフレーション下でもCapacity Utilization Total Indexは過去に比して相対的には高くありません。 需要インフレではないのは明らかで、むしろサプライチェーンの障害や、価格決定権を有する企業による意図的な生産抑制などが想定されるインフレ機序です。 pic.twitter.com/2X5W4G12My
2023-11-05 14:23:38Capacity Utilization Total Indexについては下記リンク群を参照のこと: fred.stlouisfed.org/series/TCU federalreserve.gov/releases/g17/A… federalreserve.gov/releases/g17/C…
2023-11-05 14:24:26インフレの主な要因は運輸と家賃で、OPECによる原油減産の影響もあるようです。 利上げがもし主流派の予想通りに投資抑制に働くなら、住宅供給が抑制されて家賃上昇をむしろ増悪させてしまいます。 相対的な高インフレではありますが、加速はしておらず、特に原油安に転じれば反転するでしょう。 pic.twitter.com/4Ywp0mx7ES
2023-11-05 14:25:50実際のインフレ上昇の影響で短期のインフレ予想は上昇していますが、長期のインフレ予想は対して上昇していません。 これはブレーク・イーブン・インフレ率といった他のインフレ期待指標でも同様です。 tradingeconomics.com/united-states/…. pic.twitter.com/GV3phrA2hZ
2023-11-05 14:27:51労働コストは現状、インフレを"後追い"しているだけで賃金物価スパイラル≒conflict inflationを発生させてはいません。 重要なインフレ要因は投入コストの上昇、金融コストの上昇、在庫コストの上昇、パンデミックに直接関連するコストの発生でしょう。 pic.twitter.com/54m1AnD3pV
2023-11-05 14:29:19一方で、アトランタ連銀の調査では、企業の23%が利益率が通常より高いと回答し、残りの企業の44%は、利益率を改善・維持するための値上げを計画していると回答しています。 pic.twitter.com/Lm9zq8mV1t
2023-11-05 14:30:36•Dayen & Mabud (2022)は、寡占されたサプライチェーンによる過大な価格決定力が、いわば便乗値上げのような形で、インフレを惹起していると指摘しています: nytimes.com/2022/02/28/opi… prospect.org/economy/how-we…
2023-11-05 14:32:31ちなみに日本はというと、2022年時点で営業利益は復帰した一方、経常利益は大きく反跳しています。 一概に中小零細への補助金etcのおかげとはいえず、むしろ国際的大企業における海外からの所得移転の増加が要因として大きいようです。 jil.go.jp/kokunai/statis… (以下は法人企業統計より望月慎作成) pic.twitter.com/pYWoPDq60U
2023-11-05 14:36:50インフレを主に起こしているのは家賃、食料品、外食・宿泊ですから、人々(労働者)はこれらに対して借入支出しているはずもなく、可処分所得から支払っているので、利上げがインフレを抑制するには、中途過程として労働者の失業・大量解雇が必要ということになります。
2023-11-05 14:38:00それは要するに利上げによって人為的に金融危機を起こすのと同じことであり、これにより当然、不平等は拡大します。 •MMTは、政府は財政的にいくらでも支出する余裕があると説明していますが、失業対策として無差別に景気刺激策を支出することは提唱していません。一方で、
2023-11-05 14:38:33無差別に歳出を削減したり増税したりしても、インフレ対策にはなりません。 注意すべきなのは、経済のボトルネックによって、完全雇用が達成される前にインフレが起こる可能性があることです。パンデミックは既存のボトルネックを悪化させ、新たなボトルネックを生み出しました。このためMMT/MMTerは、
2023-11-05 14:39:33雇用保証(Job Guarantee)という形で的を絞った支出(Targeted Spending)を行うことを好むことになります。この支出は、景気下降時(失業を防ぐ)だけでなく、景気上昇時(物価の安定をもたらす)にも不安定性を抑制する役割を果たす機能を持ちます。
2023-11-05 14:40:15Nesisyan&Wrayによる別のレポート levyinstitute.org/pubs/ppb_157.p… は、上述の議論の良い要約の一つになっています。 既に確認した通り、アメリカのインフレは需要主導のインフレではなく、援助策の効果は2022時点で既に一巡しており、賃金上昇率は相対的に低いためインフレ圧力の源泉にはなっていません。
2023-11-05 14:41:58また、Fedが労働力不足、原油供給、輸送の遅れ、ウクライナ戦争、住宅不足などのサプライサイドの問題に(利上げなんかで)対応できると考えるのはナンセンスです。 そもそも過去にFedがマイルドな利上げで緩やかにインフレをコントロール出来たことなど一度もありません。過去にあったのは、
2023-11-05 14:43:52全くインフレに効かない利上げか、ラディカルな利上げによる金融危機惹起のいずれかです。金融危機を(ある意味わざと)起こして失業を増やすことでインフレーションをコントロールするのがFedのいつもの手口ですが、今のような供給面でやると1970年台のスタグフレーションの再現になりかねません。
2023-11-05 14:44:49金利を引き上げることは、仮に効果があるとしても、むしろ投資を抑制し将来の供給力を低下させることで現況を悪化させうるわけです。今はむしろ、供給面にアプローチする積極的な財政政策(財政支出)の方が求められていると換言することもできます。
2023-11-05 14:45:23