『地図に描かれなかった集落』の今を確かめに行った

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R774@まとめ屋 @kendou774

スレッドにします。 『地図に描かれなかった集落』最新の地理院地図に描かれた険しい地形。かつて、この場所には集落があった。集落が無住化したのは14年前だが、不思議なことに、無住化以前の地図にも集落が描かれていないのだ。『地図に描かれなかった集落』の今を確かめるため、物部村へ向かった。 pic.twitter.com/Suc75C6m4x

2023-11-18 21:09:33
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物部村(現・香美市)は、高知県東部を流れる物部川上流に位置する山深い村で、平家の落人伝説や、民間信仰のいざなぎ流が伝わることで知られる。村内の集落は、物部川がつくった深い谷間に点在し、『地図に描かれなかった集落』も、物部川支流の深い谷間の真っ只中にある。集落の名は『杉熊』という。 pic.twitter.com/XzNdkPH0dM

2023-11-18 21:10:36
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『地理院地図に描かれていない集落がある』杉熊の存在を知ったのは5年前のことだった。過去の国土地理院の地図に描かれているのは畑の記号だけで、集落名だけでなく、家屋すら描かれていない。それも無住化後ならともかく、無住化以前からだ。その疑問から、4年前に杉熊川からの山道で杉熊へ向かった… pic.twitter.com/ZGjYDRjqEH

2023-11-18 21:12:00
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が、山道は崩れていた。高巻きも難しい。集落が無住化した以上、杉熊への山道は復旧されないだろう。半ば諦め気味で4年の月日が過ぎた。この4年間で大きな変化があった。それは、ひなたGISをはじめとした「地図データ」と、YAMAPの「山行データ」の充実だ。機は熟した。再び杉熊へ向かった。 pic.twitter.com/TIV1IX6tqP

2023-11-18 21:13:27
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ひなたGISの「高知県CS立体図」と、YAMAPの「山行データ」から、麓の落合集落から尾根伝いに山道があることを知った。意気揚々として落合を出発するが、山に向かう階段が複数あるではないか。何度も階段を間違って時間をロスした挙げ句、晴れ予想にも関わらず雨が降ってきた。嫌な予感がする。 pic.twitter.com/IcDJmh3Fxn

2023-11-18 21:14:34
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最初のうちは、しっかりとした山道だった。崩れている箇所もあるが、道筋は明朗で迷うことはない。この山道は以前から存在する杉熊集落への古道だろう。山道を辿ること約10分で尾根に出た。あとは尾根伝いに山道が続くと思っていた。しかし、山道は徐々に尾根から離れ、危なげな急斜面を横切っていく。 pic.twitter.com/LvyNYHZrW4

2023-11-18 21:15:58
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嫌な予感は的中した。降り続く雨が激しさを増したのだ。木陰の下で雨がおさまるのを待つ。30分ほどしただろうか。雨が弱まったタイミングで山道を離れ、尾根を直登することにした。尾根の傾斜はきついが、危なげな山道よりも安全だ。標高差で約50m登ると、一気に傾斜が緩んで穏やかな尾根に変わった。 pic.twitter.com/lQHYJcNX23

2023-11-18 21:17:26
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穏やかな尾根上に再び山道が現れ、程なくして東と西の二手に別れた。「高知県CS立体図」によれば、東方向が杉熊集落に向かう山道のようだが、辿り着ける保証はない。このことは事前に予想し、安全策を考えていた。山道を通らず、地理院地図の816m地点まで登り、東に伸びる尾根を下降するルートだ。 pic.twitter.com/w0VoXLP3WY

2023-11-18 21:19:57
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予想通りだ。地理院地図の816m地点までやって来た。東に伸びる尾根は緩やかで、容易に下降することができそうだ。手入れされた植林地の中を順調に下っていく。5分もしないうちに、人工的な平場と石垣が見えてきた。平場の中央には巨石が鎮座している。巨石を特別な存在として祀っていたのだろうか。 pic.twitter.com/AIZh5cneOf

2023-11-18 21:21:12
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『杉熊集落』 いつしか雨は止み、木々の間から日が差し込む。平場の先には家屋跡があった。杉熊集落に着いたようだ。小さな沢の始点にできた緩斜面に集落を形成している。地理院地図に見られるほどの険しさはない。方角は南向きで日当たりもいい。この地に集落ができたのも納得できる。 pic.twitter.com/hT92ZBJnH0

2023-11-18 21:22:27
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次々に家屋跡が現れた。どの家も空き家化して久しいようで、家屋は尽く潰れている。杉熊の祖先は、字岡ノ内の宗石権之守の家来と言われる。杉熊山の山番としてこの地に住み着き、徳川時代には十一軒にもなったという。集落最下部に一軒だけ家屋が残っていた。杉熊に最後まで住んでおられた方の家屋だ。 pic.twitter.com/BUIFDlulgf

2023-11-18 21:24:01
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古くより、杉熊集落では焼畑を主とした山の暮らしを続けてきた。集落の軒数は順調に増え、杉熊川を挟んだ対岸のサイニョウ(現在は無住)に分家するほどだった。しかし、S.30年頃から離村が相次ぎ、H.21年に最後の方が杉熊を離れたことにより、集落の歴史は途絶えた。杉熊が無住化して14年になる。 pic.twitter.com/tpQyR9d5Pt

2023-11-18 21:25:06
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集落最上部に登り返した。最上部には小さな祠があり、背後に墓石が立ち並ぶ。杉熊集落では先祖八幡様と観音様、役行様を祀っていた。今は麓の神社に合祀されているという。墓石は全てH姓とあり、杉熊は全員同姓であったことが窺い知れる。お墓はそれほど荒れていない。最近まで人が訪れていたようだ。 pic.twitter.com/zjfytS3Y6g

2023-11-18 21:25:59
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杉熊から引き揚げようとしたとき、背後の草木が揺れた。小動物だったようだ。既に杉熊は動物達の楽園だ。もう杉熊に人の暮らしが戻ることはないだろう。人のいなくなった集落ほど寂しいものはない。816m地点までの尾根を登り返し、来た道を引き返す。またしても雨が降ってきた。寂しげな雨だった。 pic.twitter.com/53OXXsGO7d

2023-11-18 21:26:56
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今回、別府地区で聞き取りを行ったが、当時の話を聞き出すのは難しかった。幸いにも、杉熊出身で大元寺の二代目住職であるHさんが、故郷杉熊のことをブログに記されていた。Hさんは他界されてしまったが、ご子息である三代目住職にブログの転載許可をいただいた。ブログ中の杉熊関連項目を転載する。 pic.twitter.com/8yNVEvnAUh

2023-11-18 21:28:22
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物部村は、民間信仰のいざなぎ流が伝わることで有名だが、杉熊集落にも『杉熊伝』として伝わっていた。今となっては、その詳細を知ることは難しい。Hさんのブログには多くの伝説、伝記が記されている。いざなぎ流との関連性は不明であるが、ブログ中の印象深い項目を転載する。(転載内容は画像参照) pic.twitter.com/qRs0raDm6l

2023-11-18 21:29:58
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転載元のブログ

リンク goo blog 昔物語-土佐・奥物部から- 奥山の昔話を先祖から受け継いだ話を元に編集した物です。今残さないと無くなってしまう…誰も知らない伝承物語です。【昔物語-土佐・奥物部から-】
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『有宮神社』 最後にどうしても行きたい場所があった。出発地点の落合集落近くにある有宮神社だ。大元寺の三代目住職から、杉熊集落の神様は有宮神社に合祀されているとお聞きしていた。境内には新しい社がある。ここに杉熊の神様が祀られている。杉熊の神様に手を合わせた後、家路についた。 pic.twitter.com/9aK9nq2KJP

2023-11-18 21:33:17
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『地図に描かれなかった集落』杉熊は14年前まで人の暮らしがあったにも関わらず、それ以前から国土地理院の地図に描かれていない……実は、杉熊はS.40年代半ばまでの国土地理院の地図には描かれているのだ。最近の住宅地図にも描かれている。S.40年代半ば以降の国土地理院の地図に描かれていないのだ。 pic.twitter.com/adbTmSJjSK

2023-11-18 21:34:47
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何故、杉熊集落はS.40年代半ば以降、国土地理院の地図に描かれなかったのか。無住化したと思われたのか。国土地理院・自治体の方針が変わったのか。地図の製作・更新過程で漏れたのか。それとも他に事情があったのか。別府地区での聞き取り時、この点も確認したが、答えに辿り着くことはできなかった。 pic.twitter.com/t5IydAiqhM

2023-11-18 21:35:56
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地図に描かれなかった杉熊集落だが、今では地理院地図の通りに集落自体が消滅してしまった。この先、時の流れとともに暮らしの跡は失われ、集落の存在すら忘れ去られるかもしれない。しかし、たとえそうであっても、この地に『長い歴史を持つ人々の暮らし』があったという事実が消えることはないのだ。 pic.twitter.com/T08sTUIf1m

2023-11-18 21:37:40
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R774@まとめ屋 @kendou774

以上で『地図に描かれなかった集落』についてのツイートは終わりです。ブログの転載許可をはじめ、大変お世話になりました香北町大元寺三代目住職のHさん、そして杉熊集落に関するお話を聞かせていただいた別府地区の方々には、この場を借りてお礼申し上げます。 pic.twitter.com/OfvJMoUgGV

2023-11-18 21:38:59
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