【質問】 じゃがいもは七年戦争~ナポレオン戦争の間に,いかにして欧州において食用として広まったのか?
- KCin_Tokorozawa
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◆概要
18世紀のこと。フランスはプロイセンと七年戦争を戦っていた。軍医として従軍したアントワーヌ・パルマンティエは戦争の中、プロイセンの捕虜となり、捕虜収容所に収監される。ここで彼は運命的な出会いをした。 じゃがいも。 pic.twitter.com/UrJHQ2uklG
2023-01-06 22:25:46じゃがいもはアメリカ大陸からいわゆるコロンブス交換でもたらされたものの一つだったけど、当初、食用とは見做されなかった。 一つには根菜に対するヨーロッパ人の偏見。地に埋まってる物は邪悪に違いない。 もう一つは、よく知られてるようにじゃがいもの芽が猛毒を実際持っていたから。
2023-01-06 22:28:54とは言え、やがてヨーロッパ人もじゃがいものポテンシャルに気づく。痩せた土地でもよく育つ。栄養価が豊富で、しかもありとあらゆる料理に合わせやすい。 「貧民のパン」 やがてじゃがいもは密かにそう呼ばれ出した。一方で偏見も根強い。マトモな人の食べるものではないともされる。
2023-01-06 22:35:1518世紀のフランスは天下の美食大国であり、じゃがいもなんて鼻から無視する。パルマンティエも家畜の餌か、貧民の窮余の食べ物みたいなのを食べさせられる捕虜の惨めさと共にじゃがいもを嫌々食べる。ところが表情が変わった。 「……美味いじゃないか」 パルマンティエはじゃがいもを完食。
2023-01-06 22:38:31「お前、じゃがいもを食べるなんて……。ハンセン病に罹るぞ」 捕虜仲間からそう言われるパルマンティエだけど、まるで意に介さない。プロイセンは貧しい国で、国民に満足なパンを支給できないからじゃがいもを仕方なく奨励してる。まして捕虜ならパンなど出ない。
2023-01-06 22:40:31じゃがいもを拒否する仲間は衰弱する一方。しかしパルマンティエは満腹で健康。パルマンティエは確信した。 「じゃがいもは下賤な野菜じゃない。まして、食べたらハンセン病になるなんて、嘘っぱちだ」 こうしてパルマンティエは生涯をじゃがいもに捧げる決意をする。 pic.twitter.com/b5TFTNNx5f
2023-01-06 22:42:36帰国して後、パルマンティエはじゃがいもの安全性と効能を声高に訴えた。 「我が国において無視されているこの野菜は、全く安全であるのみならず、美味であり、また栄養豊富で、そして痩せた土地でも豊富に実る万能の野菜です! どうかじゃがいもを可食物として認可されたし!」
2023-01-06 22:47:46パルマンティエ同様、科学的見地からじゃがいもを擁護する人たちがたちまち賛同する。中にはアメリカ建国の父の1人であるベンジャミン・フランクリンもいた。 しかしコロンブス交換以来250年間、毒とみなされていた偏見はその程度では覆らない。
2023-01-06 22:49:57パルマンティエは職場である医院の畑で個人的にじゃがいもを栽培し、患者に栄養をつける安価な薬代わりとして処方していたものの、反対運動が巻き起こり、お陰様でパルマンティエは出世が妨げられた。しかしそれで折れるパルマンティエではない 「じゃがいもは名医より大勢の人を救う食べ物なんだ!」
2023-01-06 22:52:25パルマンティエはじゃがいもに関する論文を著し、パリの医学会に送りつける。 「あなた方はご存知ないだろうが、地方では既にじゃがいもはありふれている。貧者のパンは伊達ではない。無視するのも大概にして頂きたい」 医学会はこれを認め、遂にじゃがいもは公認の食べ物になった。
2023-01-06 22:55:21「芋学者が!」 とエリート層はパルマンティエを馬鹿にする。しかし熱心で、しかも見返りを求めず、ただじゃがいもの普及に努める彼の姿にやがて大勢が絆されていった。 「凡人は華やかな悪党を持ち上げる。しかし、パルマンティエ氏は飽くまで純粋で、等しく人類のために身を捧げている……」
2023-01-06 22:58:36滅多に人を褒めないので有名な哲学者ヴォルテールは手放しでパルマンティエを賞賛した。 「貴殿の如き栄光は純粋で、人類を愛する全ての人々の賞賛に値するものであります」 パルマンティエは全く無私の心でじゃがいもの普及に努めた。 「地位も年金も要らん。じゃがいもは人々を救う」
2023-01-06 23:01:43「毒物を勧めるか!」 と言う人にパルマンティエは言い返した。 「科学はじゃがいもの安全を証明している! 国王陛下も禁止されていない! あなたはなぜ国王よりも王様ぶるのか!」 そして当の国王もパルマンティエに熱い視線を注ぐ。 「貧民をも満腹させられるのか!?」
2023-01-06 23:04:14後にフランス革命で断頭台の露と消えるルイ16世はパルマンティエを猛烈に応援した。 「気候変動で不作が激しい! どうかフランスのためになってくれ。余が出来ることは全てやろう!」 こうしてフランスは国家を挙げてじゃがいもを普及させる事に。
2023-01-06 23:07:10王家自らじゃがいもを食べ始めた。貧民が仕方なく食べてたじゃがいもは、にわかに王族のテーブルに載る。王妃マリー・アントワネットはじゃがいもの花を髪飾りにあしらう。 流行の中心である王家がじゃがいもを積極的に受け入れたので、フランスはじゃがいもブームに。
2023-01-06 23:10:23「じゃがいもをくれ!」 パリ市民がじゃがいもに殺到する。じゃがいもを栽培してたパルマンティエの畑にも押すな押すなで人々が押し寄せた。 「ええい! 下民め! 貴重なじゃがいもを渡すものかよ!」 パルマンティエは厳重な警備を敷いて畑を守る。
2023-01-06 23:12:13しかしパルマンティエは実のところ、警備に意図的に穴を開けていた。 「ありがたい物だと思わせれば、より普及するだろうし、まして、危険なものとは思うまい」 このやり方はじゃがいも先進国であるプロイセンの模倣だった。 「盗まれる度、じゃがいものファンが増えるのさ」
2023-01-06 23:14:221787年、パルマンティエは廃兵院(傷痍軍人のための名誉ある施設)で一大イベントを催す。 「じゃがいも尽くしです! じゃがいもにどれだけの事ができるか、ぜひ、ご賞味を!」 前菜からデザートまで全てじゃがいものフルコースだった。パルマンティエの技量はそれを可能とする域にあった。
2023-01-06 23:18:51こうして下賤な野菜とされたじゃがいもはフランス料理に定着し、料理大国フランスが大々的に採用した事で、諸国もそれに倣ってじゃがいもを使うようになる。 やがてフランス革命が起こり、国王と密接だったためにパルマンティエは王党派と目され、命の危険にさらされる。
2023-01-06 23:21:10逃げ回ってなんとか命を守ったパルマンティエに新たな天命が下る。 「医療総監に命じる。あなた以上にフランス人の健康と栄養に通じた人を知らない。余も、助けられた」 粗食の軍人皇帝ナポレオンだった。 pic.twitter.com/2KN7j7gucJ
2023-01-06 23:24:03こうしてじゃがいもは毒物から貧民のパンに、そして、フランス料理の定番として定着し、ヨーロッパ料理の基礎の一つである高貴な野菜になる。 今やその高カロリーは嫌われる事が多い。しかし貧しい頃、どれだけ多くの人の命をじゃがいもが救ってきたか。
2023-01-06 23:28:03チート作物と言えば? 歴史クラスタならコメと共にじゃがいもを挙げる。 偏見に負けず、実体験と科学に基づき、生涯じゃがいもを応援し続けた料理人にして医師が、ヨーロッパ料理の中心たるフランスに生まれた事。 ひょっとしたら、人類史に残る奇跡かもね。 pic.twitter.com/7Gazv8sbHl
2023-01-06 23:31:19@elizabeth_munh 冷製のジャガイモのスープはヴィシソワーズと言うのはよく知られてるけど温製のスープはパルマンティエと呼ぶのはなかなか知られて無いよね・・
2023-01-07 12:12:42