腐敗した遺体を手で洗う、弥生時代以前の「洗骨再葬」の習慣から生まれた驚きの日本神話を解き明かす

日本の文化と大嘗祭の起源を、先史時代に遡る
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巫俊(ふしゅん) @fushunia

遺族などが亡くなった人の骨を掘り返し、水で洗ってやる洗骨の習慣が、 島根県、 伊豆諸島(真水ではなく、火や焼酎、海水で洗骨する)、 九州(水ではなく、火や焼酎で) にありまして、掘り返すとまだ骨になりきれて無かった遺体も、水をかけて手で洗ってたそうです。 論文「洗骨改葬の日中比較研究」 pic.twitter.com/fi4PzNctAI

2023-10-08 02:06:59
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巫俊(ふしゅん) @fushunia

洗骨の文化は奄美・沖縄にあることで知られてますが、 洗骨をするのに必要な「再葬」(洞窟や土中に安置した遺体を取り出して、再処理する)の習慣は、 縄文時代や弥生時代、古墳時代の遺跡・墓から存在が裏付けられてます。 pic.twitter.com/Okg9MrdP0x

2023-10-08 02:07:39
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巫俊(ふしゅん) @fushunia

焼骨という証拠が残る「火」と違って(骨を焼く再葬は縄文時代から裏付けらるてる) 水で洗っていたことは考古学では確認することが難しいはずですので、 洗骨葬の文化や神話が、形を変えながらも古墳時代や奈良時代以降の「日本文化/神話」の基層になってることは、話題になることが少ない気がします

2023-10-08 02:08:18

前回のまとめ記事(2023年12月29日投稿)

「源氏物語には、失われた読み切りの短編があった。幻のパイロット版「かがやく日の宮」から浮かび上がる「光源氏」の本当の姿とは?」

からの続きです。
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まとめ 源氏物語には、失われた読み切りの短編があった。幻のパイロット版「かがやく日の宮」から浮かび上がる「光源氏」の本当の姿.. 長編の源氏物語とは「別枠」で伝わっていた、「かがやく日の宮」(作者は紫式部)は、惜しくも鎌倉時代には散逸してしまいましたが、光源氏と四人の女性との恋愛によって展開する「完結性の高い物語」だったとされます。「光源氏」は何故、光るのか?その光はどの女性が受け止めるのか?日本神話との比較を交え、読み解きました。 11732 pv 88 5 users 71

巫俊(ふしゅん) @fushunia

イザナミは、永遠に腐臭を放ってるイメージがあるけど、それも神話の古層を再構成する限りでは、先史時代から存在した洞窟での「再葬」や、「洗骨葬」と関わってて、腐臭を放つ死者の身体は、白骨になったものを洗ってやることで清められ、骨を清めると水が湧いてきて、骸を満たすのだとされてた訳です

2023-12-18 18:45:04
巫俊(ふしゅん) @fushunia

高知県では、墓の中の遺体の骨が白くなると、土から水が湧いてきて、清らかな水で骨が満たされるとされてて、奄美諸島では、骨が白くならないうちに露出すると、乾燥した大干ばつが襲ってくるとか、琉球王国の首里は王の祖先の骨を清める聖所で、だから首里は地下水・湧き水が豊富だとされてます。

2023-12-18 18:45:38
巫俊(ふしゅん) @fushunia

洗骨葬は日本神話の起源を矛盾無く説明でき、「死」の後に暴れる腐肉の段階を解消し、水や火で骨を清めることで、次の段階(清らかな地下水脈が骨を満たす/清らかな火が骨を包む)にあたる「大自然=祖霊への回帰=骨から魂が抜け出る」に向かう、日本神話の元になった神話が表現された葬儀の方法でした

2023-12-18 18:53:58
じんぐうゆえ @jinguuyue

あら、こないだ私が話していた洗骨のことが。 父方の方で話に出ていてやだーとか母が言ってたなぁと。葬儀にも地域の特色が出ていて興味深い。墓で飲み会するとかも昔はやってたな twitter.com/fushunia/statu…

2023-12-18 21:30:20
おいでよ山口@民俗 @minzokunokai1

長崎の佐世保の知りあいは祖母の骨を海水で洗ったと言っていたけど海が近いからかなあ twitter.com/fushunia/statu…

2023-10-08 17:15:42
Sai@区切り遍路中 @HaburaAya

お嫁さんが洗骨することになっていて、伝染病の心配もあり、洗骨の習慣が禁止されるようになってきて良かったです twitter.com/fushunia/statu…

2023-10-08 18:51:53
巫俊(ふしゅん) @fushunia

私が洗骨葬について調べ始めたのは、「古墳の被葬者は、石室内に永遠に留まってるので、再生しない」という考古学の学説を聞いて、衝撃を受けたからでして、日本神話には「再生」を示す要素は明確に存在し、それも弥生時代に遡ると見られるので、その発想の違いがどこから来てるのか、探すことから、

2023-03-15 18:53:06
巫俊(ふしゅん) @fushunia

検討を始めたのですが、古墳も横穴式石室の場合は、横穴式石室と関連するとされるイザナギの黄泉国神話が、海岸洞窟などでの洞窟葬に由来すると見られる以上、石室の文化自体は大陸から来たものだとしても、洞窟葬を行う海民の手を介してそうしたものが伝わる訳ですから、洞窟の神話と関係してました

2023-03-15 18:56:28
巫俊(ふしゅん) @fushunia

洞窟葬においては、「再生」という観念が明確に存在していて、地下水脈を通って山の山頂の池に魂が抜け出てくると考えられてました。これは、三輪山の蛇の神話に類似する唐津湾の松浦佐用姫の神話でも、そうした発想の断片があって、山の山頂の沼で佐用姫と蛇が遺体を残して魂が去ったとされます。

2023-03-15 18:59:59
巫俊(ふしゅん) @fushunia

しかも、松浦佐用姫の親族が駆けつけて、麓に遺体を納める古墳を作ったとの記述まで、『肥前国風土記』にありまして、これは古墳の起源説話にあたります。そうすると、古墳が再生しない場だとの発想はどこか不自然なのですが、古墳には明確な形で再生を表現したものが無いとされます。

2023-03-15 19:02:08
巫俊(ふしゅん) @fushunia

それで、すぐに洗骨葬のことを考えた訳では無いのですが、長野県の5世紀の鳥羽山洞窟遺跡では、洞窟の中から火葬にされた焼骨が出土してまして、火葬による「再葬」については、縄文・弥生時代より続いていたことが示唆される状況になってました。縄文時代から遺体を再度、火葬にする葬がありました

2023-03-15 19:11:31
巫俊(ふしゅん) @fushunia

古墳で分からないことは、それ以前の段階で説明があるはずなので、箸墓古墳などの前方後円墳の葬送儀礼の起源にあたる岡山県の楯築墳丘墓の不思議な出土品の数々に、その答えがあるはずだと私は考えましたが、それは当たってました。火で焼き割られて再生する龍の神話がそこには存在してました。

2023-03-15 19:13:52
巫俊(ふしゅん) @fushunia

しかし、龍が取り巻いてるように見える、被葬者の頭上で焼き割られていた「雲の形の石」(円形の孔(あな)があり、蛇のような帯が孔を取り巻き、光を出す雷神を表現してる)は、考古学者の解釈では「被葬者を封じ込めるもの」と解釈されてます。明らかに再生を示唆してるのに、封じ込めるとは…?

2023-03-15 19:16:16
巫俊(ふしゅん) @fushunia

そんなときに見たのが、日中の古い洗骨葬を比較した論文でした。洗骨葬は現代になっても、島根県・伊豆諸島・九州・沖縄に分布していて、水/海水/焼酎/火を使って、土葬されたり安置されてた遺体を掘り出すなどしてから、水や火で清める葬儀のことでした。日本では清めた骨からは魂が抜け出ます。

2023-03-15 19:21:16
巫俊(ふしゅん) @fushunia

そのため、沖縄など各地では、白くなった骨が墓地に散乱してたりして、雑に踏んでたりするのですが、鳥羽山洞窟でも岩壁の隙間に人骨が次から次へと詰め込まれてましたし、石巻の五松山洞窟遺跡の場合は、骨がバラバラにされて投げ込まれてました。それは魂が抜けだして、水と一体化するからでした。

2023-03-15 19:25:58
巫俊(ふしゅん) @fushunia

魂が水と一体化することは、地下水脈を介して魂が山の中の空洞の「黄泉平坂」を上り、山頂の池に出てくるとする三浦佑之『出雲神話論』/ 瀬川拓郎『縄文の思想』の説明と一致してますが、沖縄の琉球王国には、王妃が人骨を水で清めると高台の首里から水が湧いてくるとの「水の王」神話がありました。

2023-03-15 19:29:10
巫俊(ふしゅん) @fushunia

「水の王」神話は知らない人が話を聞くと「沖縄に限定される話」だと思うかもしれませんが、高知県でも土葬した死者の骨が清まると、遺骨付近が清水で満たされたとされ、水になった魂が雲や雨、虹や雷になるモチーフは、岡山県の楯築弥生墳丘墓の雲の形の石「弧帯文石」の謎を解き明かすピースでした

2023-03-15 19:33:25
巫俊(ふしゅん) @fushunia

私は被葬者が雲になる仕組みが、どうしても分からなかったのですが、沖縄の御嶽(うたき)やグスクでは、人骨が「雲子石」と呼ばれ、「照る雲」という名前の神女が清水を探し求めると、「嶽が隈基(くまもと)」「杜が隈基」から水が湧き出すと、沖縄の古い歌謡の久米島オモロに出てきます。

2023-03-15 19:40:42
巫俊(ふしゅん) @fushunia

古墳にも導水施設埴輪があり、遺体を水で洗ってたことまでは確実なのですが、少し違いがあります。古墳には「再生阻止」という思想がありますが、それは被葬者が再生して大自然に回帰し、個人としての人格を失うことが怖れられたからでした。そのため、再生を願いながら阻止するという、矛盾が出現。

2023-03-15 19:45:12
巫俊(ふしゅん) @fushunia

弥生時代の社会では、司祭者の魂も大自然に回帰することで「循環」し、権力の拡大も抑制されてたと考えられますが、墳丘墓/古墳の大型化は、被葬者がその中に永遠に留まることで、その霊力/妖力を墳丘が見せ付け、子孫に自分の地位を継がせようとしたことを意味してます。

2023-03-15 19:49:59
巫俊(ふしゅん) @fushunia

銅鐸・土器の連続した構成の絵画から復元された弥生時代の神話では、「死→生と死の重ね合わせの状態→再生」の三段階で秋・冬・春の季節が構成されますが、洗骨葬も「死→腐肉→骨が清められて再生」の三段階でした。三輪山や三笠山の禁足地にはこの三段目を抑制する祖霊封じ込めの長い列石があります pic.twitter.com/DUVCAjeWjW

2023-03-15 20:02:59
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