お玉さんの読書マラソン企画「本格力を高めよう サンシャイン」(6部)

お玉と毒をくらわば皿まで @ottama709

またミステリを書くのがやたら上手いセンセイ、そんなセンセイを事件の紹介人として得ることが出来た金田一耕助もラッキーだった。 『本陣殺人事件』などは探偵作家クラブ賞を獲得している。 次々と事件を解決する金田一耕助。 その事件の深い真相を、次々と探偵小説として世に送り出すセンセイ。

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【鬼首村問題】5 センセイはミステリがやたら上手い。 基本は金田一耕助を主軸においた三人称視点にて名探偵の活躍を小説化している。でも、物語の題材に合わせてアプローチの仕方をかえることもあった。 長編分量でパッと思いつくのは『八つ墓村』であり『三つ首塔』であり、……『夜歩く』だ。

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おそらくだが、『八つ墓村』や『三つ首塔』は金田一耕助からだけじゃなく辰ちゃんや禰っちゃんに取材することで、作品の内容を固めていったのだろう。ペラペラと楽しげに語る辰ちゃん、はにかみながらもかなり言葉に詰まる禰っちゃん、そんな様子が容易く思い浮かぶ。

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『八つ墓村』と『三つ首塔』の作品の仕上がりの差って、事件の犯人が持っていた資質の違いってのは当然あるのだが、 センセイがインタビュー先からどれだけのネタを引き出せたのか？ というのも原因のひとつとしてあるんじゃないかな？

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【鬼首村問題】6 で、肝腎要の『夜歩く』なんだけど、こちらはちょっと事情が異なる。 金田一耕助からの話は当然聞いているのだろうが、この事件に関してはネタ元と云えるモノがもうひとつあったりするわけだ。そう、推理作家が記した文書、そういった原稿が『夜歩く』には存在しているのだ。

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『夜歩く』制作にあたり、センセイによる推理作家へのインタビューは、当然為されていない。 金田一耕助からの情報と推理作家の文書、そのふたつから『夜歩く』は探偵小説としてまとめられている。 ……否。 悪い言い方かもだけど、 ……センセイはおそらく推理作家の原稿をまるっと大量引用している

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【鬼首村問題】7 「おい、お玉。お前はセンセイをパクり屋扱いするんか！ センセイが悪魔だと言うんか！」 と、金田一耕助ファン & 金田一耕助の友人である探偵小説家のセンセイファンから激ヅメされそうですね。 しかし、戦後大探偵時代のエース金田一耕助が解決した事件量を考えてみると、、、

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新聞記事で掲載される奇妙な殺人事件は断片的だ。 真の真相、事件背景、戦後の価値観の変容から浮かび上がる旧態的な日本の在り様、トリックの面白味。 それらの詳細を知りたがる庶民が紙面の向こう側に大量にいた。彼ら彼女らに早く物語を届けようとする使命感、センセイはそれに満ち満ちている。

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エース級の名探偵を友人に持つ探偵作家は、クオリティが高いネタを手早く素早く料理せねばならない責務があった。 探偵作家としてネタをじっくり熟成させ手間暇かけて世に出したかっただろう。 でも、その間に名探偵は次の事件に巻き込まれてしまっているし、なんなら、次の事件も解決もしちゃってる

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【鬼首村問題】8 だからこそ『夜歩く』なのである。 元ネタ原稿から推理作家の手によるものなので文章はしっかりしている。構成は……、お世辞にも理路整然とは言い難いが、それがかえって怪しげで妖しげな雰囲気を乗倍している。金田一耕助が推理した事件の真の真相もセンセイの期待に応える内容だ

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（トータルバランスで考えるともう全然分が悪いんだけど、作品の趣向であるアレだけに関して言えば、私は『蝶々殺人事件』より『夜歩く』のほうが上だと思っていますよ）

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【鬼首村問題】9 だから、センセイは、推理作家の原稿を、利用した。 けど、そのまんま使用することには思うことがあったろう。 大胆な仮説だが、『夜歩く』の原稿利用をするにあたり、センセイは「推理作家の原稿で使用されていた固有名詞を全て書き換えた」のではなかろうか？ と推察する。

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【鬼首村問題】10 『夜歩く』がパク……、別の推理作家の原稿からの引用で成り立っている事件ファイルだと考えると、『悪魔の手毬唄』にて金田一耕助が「鬼首村」の名前を見聞きしたときに無反応だったことに説明がつく。 『夜歩く』事件の折、金田一耕助は推理作家のオリジナル原稿を読んでいる

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なので、 雑誌掲載されたセンセイの『夜歩く』連載第一回を金田一耕助が目にしたとき、固有名詞の置換や多少文章に手を入れたりなどの変化はあったが、一度熟読したモノとほぼほぼ同じだということに当然気付くわけなのだ。 その後の金田一耕助、どう反応するだろうか？？？

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そう。 金田一耕助、センセイが書いた『夜歩く』はちゃんと読んでないのだ！ 連続して大事件に関わっていた多忙過ぎる時期でもある。また、同時期、事件関係者への聞き取りをガッツリ行い、創意工夫された『八つ墓村』の雑誌掲載もされている。 一度モノホンを読んだ『夜歩く』、そりゃ読まないよ

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【鬼首村問題】11 固有名詞の置き換え。これに関しても一応の根拠がある。 『八つ墓村』や『悪魔が来りて笛を吹く』を思い返すとピンと来るんじゃないのかな？ 昭和史をちょっとだけ深掘りするとブチ当たることになる幾つかの大事件、それらに金田一耕助は間接的に絡むけど、……ボヤかしてるよねえ

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『八つ墓村』に関しては村の名前を変え、関係者の名前を変え、そして、少しだけ盛られている。 『悪魔が来りて笛を吹く』では毒薬嚥下が行われたお店の名や業種が変更となっている。 センセイ、センシティブな事案にはきっちり気を配る人なのね。 そして、『夜歩く』も内容は相当センシティブだ。

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【鬼首村問題】12 『夜歩く』における岡山県鬼首村。これも舞台を特定されないためのセンシティブな置き換えだったと推察する。推理作家の原稿段階では実際に事件が起きた知名で書かれていたはずだ。 じゃあ、その実際に事件が起きた村は、サテ、何処だ？ そういう話になる。

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推察材料はないんだけれど、『夜歩く』の前後で金田一耕助は『八つ墓村』に関わっているので、『夜歩く』の実際の事件地な岡山県の近距離にあるんじゃないのかしら？ と。 馬鹿馬鹿しいけど「おにこうべむら」だから、神戸じゃないのかな？ と考えてみる。神戸って都市部以外は意外と田舎だもんね。

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超偏見だけど、金持ちの旧領地、金持ちの避暑地って考えると岡山県より神戸市のほうがシックリ来ない？

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【鬼首村問題】13 『夜歩く』の鬼首村が、実は兵庫県神戸市だったとすると、当然のように岡山県警が関わることはないわけなので、『夜歩く』での磯川警部も別の警察官の置き換え人物となる。 『悪魔の手毬唄』で磯川警部サイドからも鬼首村についての言及がないことも、コレで一応の説明がつく

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金田一耕助→兵庫県神戸市での実際の『夜歩く』事件の解決はした。でも、岡山県鬼首村へ舞台改変されたセンセイの書いた『夜歩く』は読んでいない。 磯川警部→そもそも『夜歩く』事件の捜査に関わってない。そんなの知らない。 ということね。

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【鬼首村問題】14 センセイの書いた『夜歩く』を読んでないから金田一耕助は鬼首村という名前を知らない。『夜歩く』事件をそもそも知らない。 実際の金田一耕助や磯川警部はそういう事情があったため、『悪魔の手毬唄』で『夜歩く』についての言及がないわけね

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でも、センセイは事実を盛ることがあるので、事件を小説化する際、実際の金田一耕助や磯川警部は言ってなかったけど、『夜歩く』へのフォローが出来たはずだよね。 でも、しなかった。 どうして？

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【鬼首村問題】15 そう。センセイは『夜歩く』にて「鬼首村」という固有名詞を使用したことを、『悪魔の手毬唄』制作時すっかり忘れていたのだ。 述べた通り『夜歩く』の大半は他の推理作家の筆によるもの。センセイはちょちょっと置き換えをした、ラクをしたので、同作への印象が薄かったのである。