ゲームブックにおける主人公の命の重さ
伸び伸びになっていた自作ソロアドトークを始めます。今回のお題は「ゲームブックにおける主人公の命の重さ」。ようするにゲームオーバー=キャラクターロストという構造について色々と考えてみた話だ。
2024-01-10 22:26:51自作ソロアドの『パランニール島錬金工房』と『死せる魔王の迷宮』はその問題を掘り下げてルールを作成しているんだけど、これは両作品がボリューム割と多め&ランダムイベントで事故ると耐久度が0になりやすい構造になっているため。
2024-01-10 22:27:24そういう構造でゲームオーバー=キャラクターロストにしちゃうと、読者側のプレイコストが大きくなりすぎるんでは?と思ったんですよね。
2024-01-10 22:28:23プレイコストが大きくなりすぎると「戦闘は必ず勝利&判定は必ず成功のチートプレイが横行する」「慎重に進めるのでプレイ時間が間延びしやすい」「死亡した段階で心が折れてしまって、そのまま続きを遊ばなくなってしまう」みたいな問題が生じる。
2024-01-10 22:28:43「戦闘は必ず勝利&判定は必ず成功のチートプレイが横行する」はファイティングファンタジーシリーズも割と早い段階ではまった陥穽で、どうせ皆ズルしてんだから数字なんて適当に盛っておけばええねんみたいなことになる。 #雪の魔女の洞窟の鳥男強すぎ問題
2024-01-10 22:32:03敵がどんどん強くなっていったのは、弱い敵を蹴散らすよりも強敵と戦って倒す方が主人公がヒロイックになるからだと思うんだけど、『死のワナの地下迷宮』のウケが良くてその傾向が加速してしまった。 #判定難易度とかが高くなるのもたぶん同じ理由
2024-01-10 22:33:06「自キャラが恐るべき強敵を打ち負かし、難関をギリギリで成功しながら突き進むのを想像しながら読む」のは楽しいし、そういう需要に応えた結果なんだろうなってのは想像つくんですよ。自分もそういう読み方をしていたクチだし。
2024-01-10 22:33:24でも、ゲームの難易度を上げるのは「簡単にクリアできないようにしてプレイ回数を増やしてゲームの寿命を延ばす」効果を狙っていた面もあるのに「積極的にズルして誰でもクリアできるようになったことで結果的にゲームの寿命を縮めた」面もあるんでないかと思うわけです。
2024-01-10 22:33:36「慎重に進めるのでプレイ時間が間延びしやすい」ってのはCD&Dで10フィート棒で床を叩きながら一歩ずつ進み、棒の先につけた鏡で歯医者のように死角となる天井やドアの奥まで観察しないと部屋にも入らなかった頃の経験から来ている。
2024-01-10 22:34:34こういう遊び方だと3部屋しかないダンジョンでも5時間くらい遊べたけど、逆に言うと10部屋くらいある普通の構造のダンジョンだと長すぎてうんざりするし、集中力が落ちてプレイが荒くなり満足度も落ちてしまう。 #この辺のボリューム問題は最新作の話で改めて触れます
2024-01-10 22:37:46「死亡した段階で心が折れてしまって、そのまま続きを遊ばなくなってしまう」は、想定読者となるプレイ時間のあんまりとれない現代の大人は、果たして何回も死んではリトライするか? とも思ったため。
2024-01-10 22:39:15そこで心を折れさせてしまうくらいなら「これだったらまぁいいかな」ぐらいの受け入れやすいペナルティに留めて、死亡時にコンテニューされることを前提として作った方が良いんじゃないか……?という発想で作ったのが『パランニール島錬金工房』の蘇生ルール。
2024-01-10 22:40:02選択ルールだけど、本作では冒険中に行動不能になったら、有能な同行者が頑張って救助してくれるので、日数が余分に経過するだけで必ず助かるようになっている。
2024-01-10 22:41:21本作は1年をかけて卒業制作用の錬金素材を集める話なので、日数が経過しすぎると不満足なできの卒業制作を提出するか、クオリティを上げるために留年して延長戦をするかの二択となる。
2024-01-10 22:42:10留年したところで就職が不利になったりステータスが下がったりするわけでもないので、純粋にフレーバーの問題なんだが、ウィザードリィで加齢するのを嫌がって宿屋ではなく馬小屋に寝泊まりする人も多いんだし、ある程度は慎重な行動をとるよう誘導できると踏んでのこのような設定にした。
2024-01-10 22:44:39ちなみに1ゲームごとに1年経過するのは、直接的な元ネタである『マリーのアトリエ』に加えて、1シナリオごとに1年経過する『ソーサリアン』の影響もある。
2024-01-10 22:45:24本作は1年経過や素材辞典の完成がある程度区切りとはなっているけれど、どちらかといえばプレイヤーが満足するまでエンドレスで遊び続けられるような構造を目指している。 #これもソーサリアンの影響
2024-01-10 22:47:00そうやってエンドレスで遊べるようにしつつ、いつまでも同じゲームを続けていると容赦なく加齢が進むことで(そろそろ他のキャラにするか、別のソロアドに移行しよう……)と促すような構造にしているわけだ。
2024-01-10 22:55:48ただこの構造はソーサリアンと全く同じ問題(作中で数十年経過しても全く同じNPCが老けないまま出てくる)が発生するし、そもそもエルフみたいな長命種だと十数年の経過など誤差みたいなもんなのでペナルティとして機能しないという問題もある。
2024-01-10 22:56:35積み重なることが前提だと、一回一回の全滅はペナルティの重みが軽すぎとなり、その結果プレイが大味になりがちという面も否定できない。この辺はオープンワールドとしてのイベントや素材アイテムを作りこむのに時間リソースを吸われて、ゲームバランスの調整が甘くなったところがある。
2024-01-10 22:59:16ただ甘めの裁定になっているのは、同じゲームバランス崩壊でも、「誰もクリアできない方向に崩壊している」よりも「誰でもクリアできる方向に崩壊している」ほうがマシという判断からこの難易度を下げる方向にしている面もある。
2024-01-10 23:00:15とはいえゲームバランスを考えるうえで色々と考えるべきだった点があるのは事実で、その辺を踏まえて次回作『死せる魔王の迷宮と運面のカード』では別の切り口から蘇生ルールを整備した。
2024-01-10 23:00:35本作では大迷宮に挑む冒険者向けに回収・蘇生サービスが営業していて、登録さえすればそれなりの料金(1000GP)がかかるけれど確実に蘇生してくれる。 #さらに初回登録時に1回だけ無料で蘇生できるクーポンがもらえる
2024-01-10 23:02:47手持ちの資金では足りなかった場合、最も高い能力値を1点減少するごとに200GP割引してもらえる。 #このアイデアはドラえもんに登場するデビルカードにインスパイアされた #身長1ミリごとに300円
2024-01-10 23:04:30最も高いの能力値が減少するのは元に戻すのにそれだけ必要な冒険点が高くなるから。そのため強くなった冒険者ほど蘇生サービスを利用するのが痛くなるが、逆にまだ弱くて頻繁に利用するころは戻すのに必要な冒険点も控え目でリカバリーが効きやすくなっている。
2024-01-10 23:04:53