新属新種の「光合成をやめた植物」発見という約1世紀ぶりの快挙!研究者さん本人による「何がすごい?どんな植物?」が好奇心で胸踊る

発見したこともこの植物自体も全部面白い
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末次 健司 @tugutuguk

光合成をやめた植物(菌従属栄養植物、腐生植物、寄生植物)研究者。神戸大学理学部教授(兼・高等学術研究院卓越教授)。専門は、植物、昆虫やキノコの自然史(生態や進化)。変わった生物に心惹かれますが、特にラン科植物が大好き。学生さん、学振応募者や共同研究者を募集中。自身初の単著の書籍『「植物」をやめた植物たち』好評発売中!

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末次 健司 @tugutuguk

約1世紀ぶりの快挙! 新属新種の光合成をやめた植物を発表しました。その名もムジナノショクダイ(狢の燭台)!発見と同時に新属と認識され、現在もその属名が認められている日本産の維管束植物は1930年にまでさかのぼり、今回の成果は世紀の発見といえると思います!doi.org/10.1007/s10265… pic.twitter.com/khMC13Eokz

2024-03-01 07:08:20
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末次 健司 @tugutuguk

現在の日本で、新属レベルの未知の植物が残っていたとは全く想像していませんでした(こんな研究に関わることはないと思っていましたが、自分が関わるかどうかに関係なくこの植物が誰にも発見されずに残っていたことそのものに大きな驚きを感じています)。如何にすごいことなのか解説していきます。 pic.twitter.com/k9jYHNOlCD

2024-03-01 07:16:43
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末次 健司 @tugutuguk

タヌキノショクダイ科の植物は、菌類と見紛うばかりの奇妙な花をつけます。この変わった花からタヌキノショクダイの仲間は海外では 「fairy lantern(= 妖精のランプ)」と呼ばれ、日本名のタヌキノショクダイも「狸が燭台(= ロウソク立て)として利用した」と見立てられて名づけられました。 pic.twitter.com/1IndclEHT3

2024-03-01 07:19:54
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末次 健司 @tugutuguk

しかしこれらは非常に稀で、全て絶滅危惧種に指定されており、キリシマタヌキノショクダイに至ってはすでに絶滅が宣言されています。こうした希少性のため、タヌキノショクダイ科の植物に関する知見は非常に乏しく、私はタヌキノショクダイ科の調査・研究を近年特に精力的に行っていました。 pic.twitter.com/Q731hmfTL5

2024-03-01 07:24:05
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末次 健司 @tugutuguk

そのような中、植物愛好家の中村康則さんは、2022年6月上旬、鹿児島県の大隅半島で、既知の種とは形態の異なるタヌキノショクダイ科の植物を偶然、1個体発見し、鹿児島大の田金さん経由で末次のもとに(写真で)鑑定依頼が届きました。 pic.twitter.com/aB9xk0ESYl

2024-03-01 07:27:03
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リンク www.kagoshima-u.ac.jp トピックス|【博物館】約1世紀ぶりの快挙! 新属新種の植物「ムジナノショクダイ」を発見 鹿児島大学総合研究博物館の,田金,秀一郎,准教授と神戸大学大学院理学研究科の,末次,健司,教授(兼,神戸大学高等学術研究院卓越教授)・福岡県の中村,康則,氏・京都大学大学院理学研究科の,中野,隆文,...
末次 健司 @tugutuguk

田金さんは、タヌキノショクダイ属の新種と考えておられましたが、末次にはどうみてもタヌキノショクダイにはみえませんでした。田金さんに新属の可能性があることをお伝えして、発見者が発見した翌週に追加調査を、末次&田金さんで行うことにしました。

2024-03-01 07:28:54
末次 健司 @tugutuguk

経験豊富な田金さんと私であれば、発見できるだろうと高を括っていましたが、残念ながら調査は空振りに終わりました。そのあと発見者の中村さんも追加調査を行いましたが、それでもやはりその年は再発見できませんでした・・・発見者の中村さんもこのままUMAで終わるかもと心配されたそうです笑。

2024-03-01 07:31:15
末次 健司 @tugutuguk

しかしながら、翌年の2023年6月に、中村さん・田金さんが諦めずに再調査を行ったところ、見事追加の数個体の植物を発見し、分類学的な研究を行うのに十分な追加標本を得ることができました。 pic.twitter.com/noDYuORegl

2024-03-01 07:33:10
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末次 健司 @tugutuguk

その結果、今回発見された植物は、これまでに知られているどのタヌキノショクダイ属にも見られない特徴の組み合わせを持つことが分かりました。さらに確固たる裏付けを得るため遺伝解析を行ったところ、遺伝的にも今回発見された植物は隔絶した存在であることが分かりました。 pic.twitter.com/YTP9GgYzvr

2024-03-01 07:35:27
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末次 健司 @tugutuguk

特に興味深い点として、リング状の構造から雄しべが垂れ下がるのは、今回発見された植物とタヌキノショクダイ属だけで見られる一方で、雄しべが独立し円筒状にならない点は、その他の属と共通です。つまり今回の植物はタヌキノショクダイ属とその他の属の繋ぐ存在であることが分かりました。 pic.twitter.com/P6dEXq8i8w

2024-03-01 07:37:49
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末次 健司 @tugutuguk

またタヌキノショクダイ科の植物はいずれも雄しべと雌しべ遠く離れているのですが、今回の植物は雄しべと雌しべ接しているのも大きな特徴です。 pic.twitter.com/mBFl450ZjY

2024-03-01 07:41:04
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末次 健司 @tugutuguk

上述の形態と遺伝子の情報を総合的に判断し、私たちは新属ムジナノショクダイ属を設立しました。和名の「ムジナノショクダイ」は、本種が一見するとタヌキノショクダイ属に見えるものの、似て非なるものであることから名付けられたものです。 pic.twitter.com/PYt2jisjt2

2024-03-01 07:43:22
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末次 健司 @tugutuguk

またムジナノショクダイは、開花時期ですら、ほぼ地中に埋まっており、地中をすみかとするムジナ(=アナグマ)の名はぴったりです。タヌキノショクダイだと少なくとも花は地上に出るのですが、こちらは花も高さ1㎝くらいのうち1㎜くらいしか地上に出てきません(〇の範囲にも1個体咲いています)。 pic.twitter.com/lGHwZnjW8D

2024-03-01 07:48:01
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末次 健司 @tugutuguk

ラテン名として提案された新属名「Relictithismia」は、「relictus」(「残された」という意味)と「Thismia(タヌキノショクダイ属)」を組み合わせたものです。ムジナノショクダイがタヌキノショクダイ科の基部で分岐した系統とタヌキノショクダイ属を繋ぐ特徴を持つことから名付けられました。 pic.twitter.com/pShaxAzg9p

2024-03-01 07:49:58
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末次 健司 @tugutuguk

今回の発見により、日本にはヒナノボンボリ属・タヌキノショクダイ属・ムジナノショクダイ属が分布することが明らかになりました。タヌキノショクダイの仲間が三属も分布しているエリアは他にはなく、日本はタヌキノショクダイ科の進化史を明らかにする上で重要な地域だということがわかりました! pic.twitter.com/8eRRiPJE2f

2024-03-01 07:53:44
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末次 健司 @tugutuguk

日本の植物学という大きな視点で見ても、新属の発見は特筆すべき成果です。日本は植物相の調査が非常に進んでいます。このため、近年日本から発表される新しい種は、新種といえども、すでに誰かは見たことがある(=新種という判断はついていないにしろ博物館に標本が収蔵されている)ものばかりです。

2024-03-01 07:58:09
末次 健司 @tugutuguk

つまり日本から誰にも全く知られていなかった新種の植物が見つかることは非常に稀で、新属ともなるとなおのことです。事実、発見と同時に新属と認識され、その属名が認められている維管束植物は、最新のものでも1930年のオゼソウ属にまで遡ります! pic.twitter.com/V9bPc3pjnO

2024-03-01 08:02:33
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末次 健司 @tugutuguk

やはり今回の新属新種「ムジナノショクダイ」は日本の植物史上、およそ1世紀ぶりの歴史的快挙と言えるでしょう。今回の仕事は何といっても発見者の中村さんがすごいのですが、今回の仕事に関わることができ、本当に嬉しく思っています。 pic.twitter.com/dyh3gBeOJ9

2024-03-01 08:05:08
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末次 健司 @tugutuguk

いくつか補足で裏話も行いたいと思います。まず本論文が掲載されたJournal of Plant Research誌ですが、もともとは東大の植物学教室が中心となり創設した雑誌で、らんまんでもその創設は詳しく取り上げられていたと思います。このような連綿と受け継がれた雑誌で報告できたことをうれしく思います! x.com/tugutuguk/stat…

2024-03-01 11:58:49
リンク SpringerLink Relictithismia kimotsukiensis, a new genus and species of Thismiaceae from southern Japan with discussions on its phylogenetic r The family Thismiaceae, known as “fairy lanterns” for their urn- or bell-shaped flowers with basally fused tepals, consists of non-photosynthetic flowering monocots mainly in tropical regions, extending into subtropical and temperate areas. Here, we propo 1 user
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