三国志時代の動乱 (付:政治活動と個人生活)

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1 三国志の時代

お菓子っ子 @sweets_street

反董卓連合軍から、官渡戦役のあたりまでの群雄が行う人事の傾向としては、広域支配を担う太守や刺史は元高官や名士などの外様の有力者を充て、別駕や治中、司馬や長史などの属官に腹心や在地豪族を充てる傾向がありました

2012-02-05 01:59:53
お菓子っ子 @sweets_street

官渡戦役以降の曹操勢力は飛躍的に支配力が高まったので、譜代を太守や刺史に充てられるようになりました。孫権勢力は赤壁以降、劉備勢力は荊州で自立して以降。君主権力の強さは人事からも伺えます

2012-02-05 02:02:29
お菓子っ子 @sweets_street

なぜ君主権力の弱い勢力が外様の有力者を太守や刺史に充てるかといえば、君主が取り立てた在地豪族出身の腹心では、地域支配に必要な人脈。つまり、人と金を集める力がないからです。君主権で直接地域から人と金を集められるようになって初めて、譜代の腹心を太守や刺史に充てられるようになりました

2012-02-05 02:09:47
お菓子っ子 @sweets_street

夜中にも言ったけれど、反董卓連合軍から官渡戦役までの刺史・太守は、群雄の臣下であっても、基本的に独自の勢力基盤を持つ小群雄であると考えたほうが良いです。半独立の存在としてクローズアップされる臧覇は珍しい存在ではありません

2012-02-05 09:51:21
お菓子っ子 @sweets_street

君主直属の兵力だけで郡県を制圧することも、君主の顔で土着勢力から協力を得ることもできないから、自前の人脈や私兵を使って地域を抑えることができる外様の大物の力が求められるわけですね。どの土着勢力も押さえられる力が必要なんで、少なくとも州レベルで通用する格の人間でなくてはなりません

2012-02-05 09:56:19
お菓子っ子 @sweets_street

郡の大姓なんかを服従させるに足る威信がある人材となると、やはり中央官僚の経歴か、もしくは品行や学識で群雄にも礼遇されるぐらいの有名人でなくてはならないです。190年代の群雄のプロパーが軒並み州郡や将軍府の属官なのはそういう事情があるからです

2012-02-05 10:02:10
お菓子っ子 @sweets_street

群雄のプロパーなのに初期から刺史や太守なんかをしてる人は、結構な数の私兵を持ち込んできた人か、そこらの郡の大姓では太刀打ち出来ない閲歴がある人物ですね。曹操のプロパーで最初に太守になった夏侯惇、袁術のプロパーで孫策を差し置いて盧江太守になった劉勲などがそうです

2012-02-05 10:07:49
お菓子っ子 @sweets_street

あと、孫策が置いた郡太守はもともと孫堅のプロパーの中で力があった人が、軍功を重ねて袁術から高い官位を受けて孫策に匹敵するほどの閲歴を持つに至ったという特徴がありますね。孫堅・袁術の下で蓄えた兵力と知名度をもって地域を抑えることを期待されたんです

2012-02-05 10:12:33

2 中央集権とその動揺の過程

お菓子っ子 @sweets_street

ただまあ、こういう傾向は三国時代に限らず、古今東西の自力で本拠地以外の地域の土着有力者を押さえることができないほど君主権が弱い政権全般に言えますけどね。封建制は兵力と知名度を世襲している家に地域を抑えさせる体制で、連邦制は地方の自治政府固有の兵力と知名度で地域を抑えさせる体制

2012-02-05 10:16:43
お菓子っ子 @sweets_street

中央集権と言うのはとかくお金がかかるもの。地域を自前の兵力で押さえるための常備軍、地域に中央の威令を浸透させるための官僚組織、地域の有力者を中央に直結させるパイプを維持するための選挙制度や人事制度。これらは本当に金食い虫。コストだけで国が傾きます

2012-02-05 10:21:11
お菓子っ子 @sweets_street

そういうわけで兵力や知名度を持つ人材に、納税と軍役を条件に地域支配を丸投げするのは安上がりなんですが、持てる国力すべてを中央に集中させる必要がある大規模な戦争や全国規模のインフラ整備、制度改革などには向かない体制ですね

2012-02-05 10:26:13
お菓子っ子 @sweets_street

「大事業を行うから、地方の金を根こそぎ使わせてもらいますね。使える人手も全部出してね。しばらくは地方は困ると思うけど、国家百年の大計のために泣いてくれ」と言われたら、地方の有力者は支持者の生活を守る必要があるので反発します。中央集権じゃないと、中央がそれを抑える力を持てません

2012-02-05 10:29:42
お菓子っ子 @sweets_street

だから、政権は「地方有力者や民衆を結集して、前政権を打倒、もしくは無政府状態を収拾して政権を獲得」→「軍隊や官僚組織を拡大せずに地域支配を地方有力者に委ねて、税や統制を軽くして民衆の歓心を買う民力休養政策を施行」→「地方が経済力を蓄えた段階で税や統制を重くして自立傾向を抑制」→

2012-02-05 10:34:25
お菓子っ子 @sweets_street

「地方から回収した経済力をもって軍隊や官僚組織を拡大」→「強大化した中央権力で地方に委ねていた権力を回収して、中央が権力を一手に握る集権体制が完成」→「国力を総結集して外征して宿敵を討つ、もしくは長年の懸案だった国家事業に着手する」→

2012-02-05 10:37:55
お菓子っ子 @sweets_street

「事業の成否にかかわらず、国力を激しく消耗したために統制が緩み、集権体制が劣化を始める」までが1つのサイクル。そこから「コストの掛かる集権体制を放棄して地方に権力を委譲する」か、「さらに集権を強め、地方から搾取した金と権力で集権体制の維持を図る」の2つの方向性に分かれ、

2012-02-05 10:41:58
お菓子っ子 @sweets_street

前者を選ぶと、やがて移譲された権力で経済力と軍事力を付けた地方が、経済力と軍事力を手放してますます衰弱した中央に見切りをつけて自立して国家分裂。後者を選ぶと、反発を強権で押さえ込むために強めた集権体制の維持コストをひねり出すためにさらに搾取を強めて、反発を抑えこむためにさらに

2012-02-05 10:45:30
お菓子っ子 @sweets_street

集権体制を強化して維持コストにあえぐという悪循環の果てに、反発した地方に打倒されるか、肥大した集権体制の中で執行者として力を蓄えた軍人や官僚に国を乗っ取られるかのどちらか

2012-02-05 10:47:17
お菓子っ子 @sweets_street

権力移譲や集権強化が成功して政権の寿命が伸びることもありますが、あくまで延命しただけなので、集権体制の弛緩や、地方の疲弊といった根本的な問題の解決には至りません。これらは数十年単位の時間がないと解決しませんが、常に課題山積で一寸先は闇の政治の政界では、そんな余裕はないです

2012-02-05 10:52:15
お菓子っ子 @sweets_street

そういうわけで抜本的な改革を性急に行って政権の体力を削ぐか、あるいは政権延命のために体力を温存すべく抜本的な改革を行わずにその場その場を取り繕うことに終始するというのは、道理なんですね。時間がないというのが一番の問題。結局根本的な解決は、政権が消滅して問題も消滅するしかありません

2012-02-05 10:56:39
お菓子っ子 @sweets_street

そして更地の中から新政権が誕生して、もう一度やり直すと。政権が消滅して更地になって、新政権が発足するまでの過程で、内乱なり経済崩壊なりで民衆生活は完全に破壊されますので、そういう形での最終解決は命賭けで回避して、現政権を少しでも延命させるほうが為政者としては良心的なんですけどね

2012-02-05 10:59:56
お菓子っ子 @sweets_street

後漢の混乱の中で三国が成立して、晋の統一をもって体制の再編成が完成し、後漢の旧弊は流血をもって一掃されましたが、旧弊を一掃するために血を流すぐらいなら、旧弊が維持されても構わないから生きたかった人のほうが多かっただろうなという感想を抱いたりもします

2012-02-05 11:05:38
お菓子っ子 @sweets_street

革命政権や新王朝の強みは、前政権の民衆に対する責任を負っていないという一言につきまして、いくら血を流そうと民衆生活を破壊しようと「全部旧弊を改められなかった前政権が悪いもん。俺らは悪くないから痛みに耐えてくれ」と言い張っても支持されるということ。だから大胆的なことができるんです

2012-02-05 11:10:51
お菓子っ子 @sweets_street

しかし、誰の責任にしても痛い目見る人間が多いのは事実なんで、改革というのはある意味無責任さが必要なんだろうなと思います。だから、英雄が多くの血を流しても、そういう無責任な自分に耐えられる精神力があるから英雄足り得るんでしょう

2012-02-05 11:13:44