東北大助教、堀田氏(QEnergyTeleport)のツイート

主に量子力学の話について、堀田さんの何度もの連続ツイートをまとめたもの。最初から最後まで繋がっているわけでは全然ないので、飛ばし読みして面白い部分を探してもOKです。 他の人との会話もあったのですが、相手の発言も拾わなければ分からないものは省きました。当初は誰でも編集可能にしていましたが、堀田さんのツイートは追加できない(はずな)ので、停止しました。
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@QEnergyTeleport

理想測定以外の一般量子測定は、注目系と相互作用をしてその情報をとってくるプローブ系を理想測定することで構成される。従って注目系の測定後状態は、その相互作用の様々なバックアクションに依存するため、あらゆる測定後状態が出現可能であることが、定理として知られている。

2012-02-03 06:03:59
@QEnergyTeleport

電子のスピンz成分を、非一様磁場とH=gσ_z B(x,y,z)で相互作用させ、電子空間座標をスピン成分に応じて上下に分解させて測定するシュテルン・ゲルラッハ実験。これはスピンの間接測定だが、電子の位置が十分分離できる極限において、スピンz成分の理想測定でもある。

2012-02-03 06:24:47
@QEnergyTeleport

弱測定の文脈で、観測確率が負になるというのは、言い回しの問題。これは波動関数から作られる疑似古典的確率分布であるウィグナー関数ρ(x,p)が量子効果で負の領域を持つのと、似た現象にすぎない。古典的理解を波動関数に求めると、負の観測確率を導入する事態が起こるのは昔から知られていた。

2012-02-03 06:30:46

2月4日

@QEnergyTeleport

量子情報では、一般の物理的過程を情報通信理論における通信路(チャンネル)とみなすことができるので、量子チャンネル理論の結果は、物理とってもいろいろ有効。

2012-02-04 05:42:13
@QEnergyTeleport

数学的には任意の物理過程は、完全正値トレース保存写像(Completely-Positive Trace-Preserving map略してCPTP map)で書けることに。また初期状態が注目系と測定機の直積状態である、任意の測定過程もCPTP写像で基本的に書ける。

2012-02-04 05:44:45
@QEnergyTeleport

量子情報では、量子測定全体の集合を考えることができる。(これはこれまでの物理では想像できない成果の1つ。)従って「あらゆる測定に関して、○○○」というステートメントが可能になった。数学的に量子測定は、量子インスツルメントという概念で扱われる。

2012-02-04 05:48:11
@QEnergyTeleport

量子測定過程も、CPTP写像の1つとして、数学的に1つの物理過程として記述される。

2012-02-04 05:52:04
@QEnergyTeleport

任意の物理過程は量子チャンネル理論のCPTP写像とみなせる。このCPTPのTPは確率保存を意味するだけ。CP(完全正値性)は、量子もつれ(エンタングルメント)と組むと、量子パラメータ推定問題で興味深いことをひき起こす。

2012-02-04 05:53:12
@QEnergyTeleport

以下ではトレース保存(TP)は前提にしよう。正値写像(Positive Map)というのは、注目系の任意の量子状態(純粋状態を特殊例として含む一般の混合状態)を、ある量子状態に写像するもの。非負なエルミート演算子ρを非負なエルミート演算子Γ[ρ]に写像する。

2012-02-04 05:57:38
@QEnergyTeleport

TPならば一見、任意の正値写像Γ(positive map)で物理的過程を記述できるように思えるが、これは甘い。注目系以外に補助物理系(アンシラ系)を用意してその合成系も作れるが、その合成状態に関してΓ⊗Iを作用させても、物理的量子状態に写像されることが必要。この性質がCP。

2012-02-04 06:01:40
@QEnergyTeleport

実際正値写像(C map)ではあるが完全正値写像(CP map)ではないΓを使って合成系状態を写像すると、得られる演算子が負の固有値をもつ場合があり、物理的混合状態を記述しない。任意の物理的過程はCPである。

2012-02-04 06:04:22
@QEnergyTeleport

素粒子物理で相互作用の小さな結合定数を測定する場合の問題は、量子情報分野では、「量子チャンネル推定問題」と呼ばれる。CP写像Γ_gが未知のパラメータgに依存していて、いろいろな初期状態ρを写像したΓ_g[ρ]という相互作用後の状態を量子測定し、その結果からgの値を推定する問題。

2012-02-04 06:08:59
@QEnergyTeleport

gの推定誤差に関しては、量子フィッシャー情報量Jを用いた量子版のクラメール・ラオ不等式が成り立っている。誤差下限はJの平方根に反比例し、Jが大きいほど、原理的に誤差の少ない量子測定が存在する。

2012-02-04 06:11:02
@QEnergyTeleport

実は注目系だけで実験して未知のパラメータgを推定するより、外部補助系を用意して、量子もつれをその間ともつ初期状態を作ってから、注目系をチャンネルΓ_gを通したほうが、量子フィッシャー情報量Jが大きくなることがある。

2012-02-04 06:14:17
@QEnergyTeleport

知りたいパラメータgの情報を初期状態ρに書きこむ実験装置自体は全く同じままなのに、終状態に入っているgの情報が量子もつれのために増えているのだ。これは実験家にとって、量子もつれの注目すべきアドバンテージだろう。

2012-02-04 06:15:37
@QEnergyTeleport

量子情報分野では、量子状態と量子過程の間のdualityも知られており、それだけでも興味深いし、道具としてもいろいろ便利。(これは時間のあるときにでも。)また「ナイマーク拡大」というアイデアも物理屋にとって便利だと思うけど、これも機会を改めて。量子情報は、物理屋にとって宝の山。

2012-02-04 06:29:34

2月5日

@QEnergyTeleport

東大では、量子情報の村尾さんが量子力学の授業をしていたはず。新しい形の授業なのかな。他大学でも、古くからのデマを排した正しいの理解の現代風講義をしていかないと、今後は学生から先生が突っ込まれる事態に。RT2012年4月13日開催・東大物理教室コロキウムで小澤正直先生が

2012-02-05 04:21:53
@QEnergyTeleport

数学者が量子力学を考えるときには、やはり公理からスタートして証明をするほうが理解しやすいらしい。しかしその場合に、状態や系のハミルトニアンは既に分かっているという前提で、不確定性関係を論じたりする。

2012-02-05 10:04:58
@QEnergyTeleport

物理屋は、状態や系のハミルトニアンが分からないから、測定をするという立場。量子力学自体の破綻が将来の実験でいつ見つかるか分からないし、これまで当たり前と思っている確率解釈も変更を受けるかもしれないと感じている。このように数学者と物理屋で指向性が違うので、量子力学の論じ方も変わる。

2012-02-05 10:08:48
@QEnergyTeleport

宇宙論で有名な元京大の佐藤文隆さん。情報数学者が鍵のかかっていない物理屋の倉庫から量子情報の種を盗んだのに、それに物理屋は気付かなかった、というような感じのコメントをしていた。そのため現在物理屋は量子情報で数学者の下請けばかり、という、彼一流の皮肉もチクリ。

2012-02-05 15:38:10
@QEnergyTeleport

だから個人的には、カッコウのごとく情報数学者達に托卵させていた量子情報の根っこを、物理にとり戻して孵化させ、「量子情報物理学」として大成させるべきと、考えている。

2012-02-05 15:41:33

3月1日

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