![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「低線量被曝と向き合う:チェルノブイリからの教訓」メモ
-
sosorasora3
- 182034
- 12
- 7
- 95
![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
せめて項目だけでも列挙してあれば、興味をもってくれる人が増えるかもしれない、という下心。本当は資料まるごとアップできればいいんだけど、「至急まとめたもので訳語等は確認してないから、個人使用にとどめてほしい」とのことなので、アップは控えます。 会場へ、ぜひ。 #チェルノ教訓
2012-04-11 00:24:33~~ここからステパノワ氏の講演メモ~~
ウクライナ医学アカデミー国立放射線医学研究センター
エヴゲーニヤ・ステパノワ
「ウクライナの子どもの健康とチェルノブイリ」(25年間の観察の結果)
・チェルノブイリ事故について・ウクライナの受けた被害。
【ウクライナではCs汚染密度で4つの汚染地域区分がある】
① 強制退去区域:チェルノブイリ原発から30km圏、150万Bq/m2以上
全員退去の地区だが、現在は勝手に200人が居住、老人が多い。
② 移住義務区域:555kBq/m2以上(5mSv/年以上)
現在、移住を呼びかけても同意しない人たち、9478人が居住。
③ 移住希望保証区域:185-555kBq/m2(1mSv/年以上)
現在62万5543人居住。自由に移住でき、国が移住を保証する区域。
④ 放射線集中管理区域 37-185kBq/m2(0.5mSv/年以上)
現在160万144人居住。汚染は比較的少ないが
食物や空気線量を計測し、住民の健康管理を強化している区域。
汚染地域では、現在も46万4568人の子どもが住んでいる。
ウクライナの法律では、1986年生まれの子どもに対して、
チェルノブイリ事故による追加実効被曝線量は、''年間1mSv、
全生涯で70mSv''を、超えてはならないとされる。
強制退去区域は、今後、数100年間は人の居住に適さない。
第2、第3、第4区域の居住区の数は、放射性物質の崩壊につれ、
時間の経過とともに減少する。
【ウクライナではチェルノブイリ事故被災者を4グループに分けて登録している】
①事務処理作業に当たった人。
②プリピャチ市と30km圏内から避難した人。
③放射性物質で汚染された地域に居住している人。
④被曝した両親から生まれた子ども。
被曝住民の中で特にリスクが高いグループは、子どもだ。
放射能が、成長・発達している身体に大きく影響するから。
今回の報告では、チェルノブイリ事故が下記のカテゴリーの
子どもの健康に与える影響を取り上げる。
《プリピャチ市と30km圏内から避難した子ども》
《汚染地域に居住している子ども》
《胎内被曝の子ども》
《被曝した両親から生まれた子ども》
《 プリピャチ市と30km圏内から避難した子ども 》
【30km圏内から避難した子ども:1986年:
ヨウ素の危険性が高い時期の子どもの身体の反応】(急性期)
●訴えた症状:
喉がいがらっぽい、口の中で金属の味がする:55.7%、
咳31.1%、
首の痛み29.8%、
疲れやすい50.1%、
頭痛39.3%、
めまい27.8%、
不眠18%、
失神9.8%、
吐き気と嘔吐8%、
便通不順6.9%
●身体の最も典型的な反応:
呼吸器症候群31.1%、
リンパ組織過剰形成32.2%、
胃腸菅機能障害9.4%、
心臓循環系機能障害18.0%、
血液データの変化34,2%、
甲状腺機能亢進の症状の無い高サイロキシン血症6.8%、
肝臓肥大11.3%、
脾臓肥大6.2%
【30km圏内から避難した子ども:1987-1991】(暫定被曝期)
●この時期は子どもが不調を訴える回数が増加した:
疲労感82.7%
だるさ71.7%
イライラ65.9%
頭痛52.0%
めまい40.3%
不眠29.6%
胃腸の不調52.8%
心臓周辺の不快感26.4%
●臨床検査では様々な臓器や器官の機能障害が見られた:
血圧の不安定70.3%
肺の換気機能障害53.5%
心臓の機能変化40.0%
胃の機能障害39.6%
運動後の疲れやすさ31.5%
免疫T細胞群の抑制と免疫グロブリンAの低下60~70%
肝臓機能の一過性障害52.8%
【30km圏内から避難した子ども:1992頃~】
●避難した子どもや住民に、機能障害が慢性病へ移行する現象が見られた。
この傾向は子どもが18歳になるまで続いた。
(3年毎のグラフ:30km圏から避難した子どものグループでは、健康な子どもが減り、様々な慢性疾患をもつ子どもが増加)
●健康な子どもの割合:
1986~1987年27.5%→2005年7.2%に減少。
●慢性疾患をもつ子どもの割合:
1986~1987年8.4%→2005年77.8%へ増加。
(グラフ:被曝線量と相関関係)
●甲状腺に高い線量を被曝した子どものうち、健康な者の割合は2.8%以下。
●プリピャチ市から避難した子どもの疾病レベルは、事故後一貫して対照グループよりも高く、2003年の健康調査によると、避難グループの疾病レベルは対照グループの3倍になる。
(グラフ:1993-1995で慢性疾患のでる避難児童が急増し、非汚染地区の3倍に)
●健康診断システムを導入した初期と比べ、もっとも有意な変化は下記の疾患にみることができる:
・消化器官の疾患 ・神経系疾患 ・循環器系疾患
(グラフ:消化器官疾患が特に多い)
●避難した子ども及び青少年には、呼吸器疾患レベルに関して悪い傾向が見られる。
:慢性気管支炎、喘息、気管支炎のグラフ
(グラフ:2003には慢性気管支炎49%、喘息20%、気管支13%)
《 汚染地域に居住している子ども 》
ウクライナでは広い地域が汚染を受けた。
そこに223万5365人が暮らし、その1/4(46万人4568人)が子どもだ。
食品を通じて137Cs等が摂取され、内部被曝が長期的被曝要因となった。
特に問題なのが牛乳で、内部被曝の80%とされる。
●内部被曝の原因の98~99%が食品。内訳:
牛乳80%
肉5~10%
ジャガイモ5~6%
野菜1~6%
魚1.2%
キノコ類2~12.5%
パン1~1.4%
・汚染の酷いジトミーロフ州、キーロフ州、ロヴェンスク州の農家では
「汚染されていない」乳製品の入手は非常に困難で、大きな問題。
(地図:キーロフ州とジトミール州各地区のCs137(kBq/m2)汚染レベル)
●汚染地区の子どもにみられる慢性疾患の特徴:
・より若い年齢での発症(通常は大人の慢性疾患とされるものが子どもに出る)
・多器官、多臓器の損傷
・再発傾向
・治療効果が低い
●1996年汚染地区の農産物の摂取制限が解除されると、
肝臓の実質組織異常の頻度が増加した。
(グラフ:汚染地域の子どもと、ウクライナ全体の子どもの消化器系の疾病率の変化)
●消化器系:
内部被曝では137Csが主な問題で、消化器系に悪影響を及ぼす。
主に食品で摂取されるが、長期間だと汚染地域の子どもの様々な疾患の原因となる。
・汚染地域の子どもの特徴:
胃腸器系の複数臓器に病状が現れ、その後全体が機能低下する傾向。
・137Csは、消火器の粘膜、肝臓、膵臓など実質臓器に直接影響を与える。
・一日の食事量が不規則で、更に137Csが体内に長期間にわたって摂取される場合、
胃腸管羅病率の恒常的上昇が生じる恐れがある。
・消化器系の病気では、66.2%の子どもが胃腸管の複数臓器が関わる複合的症状。
・慢性胃十二指腸炎が主流。
・子どもには普段見られない半萎縮性の疾患が見られ(22.6%)、
胃酸形成機能の低下が確認された。(42.0~48.0%)
●呼吸器系:
線量が非常に高い地区では、呼吸器疾患が2倍にも。
・集団被曝線量9.4人Svの集団と同2.6人Svの集団を比較:以下の病気が増加。
呼吸器疾患2.0倍、
自立神経失調症1.52倍、
肝臓組織の線維化2.3倍、
血液系障害2.5倍、
うつタイプの免疫障害1.8倍
●総線量による抹消血リンパ球における染色体異常頻度の増加が子どもにも確認された。
これは線量によって染色体が損傷を受けることを示す。
汚染地域の子供たちは、ヘモグロビンや赤血球、白血球、血小板に異常がでている。
(ヘモグロビン・赤血球・白血球・血小板のレベルは、住む場所の137Cs汚染度と直接的な関係がある)
(グラフ:異常細胞、染色体異常、対断片、二動原身体の染色体)
*参照:グラフもあり↓
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2459146/
From: Exposure from the Chernobyl accident had adverse effects on erythrocytes, leukocytes, and, platelets in children in the Narodichesky region, Ukraine: A 6-year follow-up study.
《 胎内被曝の子ども 》
胎内被曝の影響評価は、次の子どものグループで行われた:
①グループ:事故当時プリピャチ市から避難した婦人から産まれた子ども。340人
②グループ:事故当時妊娠中で、現在、放射線集中管理地域に居住している女性から生まれた子ども。373人
対照グループは放射線状況が良好な地域に住む1986年に生まれた子ども。431人
・線量負荷:
●①②グループの胎児に、甲状腺への線量負荷には明確な差異はなく、
線量は0.0~3.35Gyとなっている。
胎児の総被曝線量は4.2~376.0mSv。
●汚染地域住民で18歳までに、4.2~376.0mSv。
・汚染地域住民で18歳までに蓄積された総被曝積算等価線量と赤色骨髄の被曝線量:
●総被曝線量 10.5~72.1mSv
●赤色骨髄被曝線量 14.1~81.7mSv。
個体発生の生後期における慢性身体疾患の頻度は、
胎児の甲状腺被曝線量と相関することがわかった。
1993-1997に、慢性身体疾患が多く認められたのは
胎児期甲状腺被曝線量が0.36-0.75Gy(p<0.05)だった子どもで、
さらに線量が1.0Gyを超える場合には、身体疾患が大多数の子どもに認められた。
しかし、そのような傾向は2002-2005年には見られない。
なぜなら、1.5-17才までに多くのみ成年者に慢性疾患が現れていたからである。
(グラフ:胎児発達期の甲状腺被曝線量の違いによる、
子どもの慢性身体疾患の頻度)
(・0.36-0.75Gyがしきい値で、1Gy超えると、ほぼ全員に慢性疾患が出る)
子どもの身体的な発達障害の頻度は、胎児期の甲状腺被曝線量と相関する。
(グラフ:0.36-0.75Gyがしきい値と思われる、と)
子どもの甲状腺エコー構造の異常は、胎児期における放射性ヨウ素被曝量と
相関関係にあると指摘されている。
(グラフ:黄=1グループ 赤=2グループ、
横軸:線量Gy 縦軸:%)
他の危険要因に放射線リスクが加わったため、発達異常が増加した。
(軽度の発達異常数と胎齢のグラフ)
・子どもの軽度な諸発達異常数と総被曝線量(r=0.61)には、
正の相関関係がある。
・被曝時(R=-0.53)の胎齢と総被曝線量とは負の相関関係がある。
=妊娠初期に被曝したほうが発達異常は多い。
体内被曝した子どもに見られる染色体異常の頻度は、胎児の赤色骨髄被曝線量と相関関係があると判明。
グラフ 縦軸:染色体異常の頻度:
横軸:赤色骨髄に対する等価線量
染色体異常の頻度、組織異常の頻度、安定型異常の頻度