- toshihiro36
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<ナレーション> 多くの医師が都会の病院での勤務を希望する中で、地域にとどまり続けている医師がいます。小児科医の大木智春さん(50)です。ここに来て9年、一番の古株です。震災前からこの町の小児科医は大木さんただ一人。静岡出身の大木さんは、岩手とは縁もゆかりもありませんでした。
2012-04-23 10:15:33<ナレーション> 「1年でいいから陸前高田に行ってくれ」と大学から言われ、ここに赴任しました。しかし、代わりの医師が来ないまま9年の月日が流れました。
2012-04-23 10:19:38<ナレーション> 石木院長はこれまで以上に多くの医師を確保する必要に迫られることになります。北海道から一人の医師が志願してこの病院に赴任し、勤務を始めていました。消化器内科の専門医・高橋祥さん(39)です。この日は胃カメラ検査を行う石木愛子さんを指導します。
2012-04-23 10:29:10<ナレーション> 消化器内科医を目指してきた愛子さん。ここでは専門医になるためのトレーニングを積めずにいました。そこに運よく現れたのが消化器内科の専門医の高橋さんでした。愛子さんが目指す消化器内科の専門医の資格を得るには、学会が認定する病院で3年以上の研修を受けないといけません。
2012-04-23 10:43:00<ナレーション> ここでのトレーニングは専門医資格には直接結びつきません。それでも愛子さんは、少しでも技術を吸収したいと指導を願い出たのです。高田病院に勤務している限り、いつまでたっても専門医資格には近づくことはできません。
2012-04-23 10:47:41<ナレーション> しかし、ここには愛子さんの技術を必要としている大勢の患者がいます。地域の役に立ちながら、腕を磨いていく道が見えてきました。
2012-04-23 10:50:18<ナレーション> この日、診療を終えた石木さん親子は小学校の体育館に向かいました。普段病院に来ない住民を集めた健康講演会が始まります。石木さんは病院に来る患者を減らすことも地域医療の役割だと考えています。講演が始まる前、高齢者に多い骨粗しょう症の検査が行われます。
2012-04-23 10:55:25<ナレーション> 大阪の大病院に勤める大澤さん、病気でもない人を検査することはほとんどありません。病気だけでなく、患者をまるごと診ることを大切にしてきた高田病院の地域医療。さらにそれを超えて、患者だけでなく地域全体を診ることを目指してきたのです。
2012-04-23 11:00:31<ナレーション> この日の講演は冬の感染症について。インフルエンザが重症化しやすい高齢者。一緒に暮らす家族に感染の予防と拡大の防止を呼びかけます。本来こうした取り組みは、保健所などの行政の役割とされてきました。
2012-04-23 11:05:00<ナレーション> 玄米を入れた袋を握りしめて身体を動かす「玄米ニギニギ体操」。高齢者にも無理なく楽しめます。地域と共に歩み、地域全体を診る医療。そんな医療のあり方も学んでほしいと、石木さんは高田病院を訪れた若い医師たちに伝えています。
2012-04-23 11:15:35<ナレーション> この夜、若手の医師たちが仮設住宅の一室に集まりました。担い手が減る一方の僻地医療。誰がそれを支えるべきなのか。議論が始まりました。
2012-04-23 11:19:34大澤:本当に俺がいなくなったら、この町の整形はどうなるのかなって思うから。それを岩手に入る前に、岩手県の教授から言われたの。「入ってもいいけど、お前が辞めるとき、誰もいなくなったあと…その地域の患者さんはどうなるんだ?それを考えてくれ」と。
2012-04-23 11:27:09大澤:「なんで帰ってしまうの」とみんなには言われるんだけど…いろいろな問題が。家族の問題、今の職場の問題…大阪でもたしかに自分を必要としてくれる人がいると。そう考えると自分はこっちにいたい気持ちもどこかにあるんだけど、やっぱり待ってる人たちのために帰らなくちゃいけないかなと。
2012-04-23 11:31:42大木:僕も自分が元気なうちはいいんですけど、例えばばったり倒れちゃったりしたら、やりたくても続けられないので…そういうことを考えたら、誰か(後任を)という思いはありますね。後任にバトンタッチできればという思いはあったが、誰も来ませんよね。そうしてるうちに情が移ってしまって。
2012-04-23 11:37:59高橋:そうであっても、自分のところにも医療僻地はあるわけだから。なぜ高田なんだっていうところは…今回は地震があったけど、地震とは関係なしにという人はどうやって増えるだろうなと。
2012-04-23 11:47:49大澤:後をどうするかってことを(きちんとしないと)地域医療の本望は危うい。震災ブームと言ったらあれだけど、注目されて「困っている人がいるから行きましょう」と。
2012-04-23 11:52:54大木:たぶんね。ちっちゃなものがだんだん大きくなって、大きな流れになると思ってるんで。そこがすごく大切というか。最初はきっかけは小さくてもいいんですよ、どんどんつながって大きくなれば。
2012-04-23 12:01:19応援医師・通山:今は情とかに頼らざるを得ないんで、将来的にはちゃんとルールを作らないといけないと思います。結局、1年なり2年間地方に行くというルールをしっかり作っていかないと、どんどん過疎化が進むと思いますし…今の若い世代って冷静に見ているので。
2012-04-23 12:05:54