弱値とはなにか?谷村省吾教授(@tani6s)による解説
自分は昨夜遅くまで仕事があって、今朝早くに東京に出たため、研究会中しばしば居眠りしてしまったのはもったいなかった。まあまあ、皆さん忙しい方たちばかりだから似たようなものでしょう。
2012-05-08 23:19:44弱測定と弱値、英語では weak measurement と weak value. 名前からはその正体がわかりにくいですが、量子力学の観測問題から出て来た新概念です。
2012-05-08 23:20:02弱値は1988年に Aharonov, Albert, Vaidmanが提唱しました。http://t.co/wItiqO2f もっとも彼らの(とくにAharonovの)動機は観測問題とは別のところにあったようです。
2012-05-08 23:23:53量子力学で「物理量の値」と言えば、「スペクトル値(固有値)」と「期待値」の2種類がこれまで知られていたけれど、「弱値」は第3の値として位置づけられると言ってよいでしょう。
2012-05-08 23:24:42「物理量」と「値」の概念を区別して用いることを私は推奨します。「質量という物理量が、5kgという値をとる」というような言葉づかいをします。
2012-05-08 23:24:58物理量と状態を指定すれば、同一の状態で、その物理量を繰り返し測定したときに得られる測定値(スペクトル値)の出現確率と平均値(=期待値)が決まります。
2012-05-08 23:25:33弱値という概念を、ごくおおざっぱに説明すると、「始状態と終状態を指定したとき、その間で物理量が取ったであろう(取ったかもしれない)値の平均値」と言えばよいでしょうか。
2012-05-08 23:26:47なんだかフィクションのような「値」ですが、最近これが物理実験で測れることがわかって、実際に実験も行われるようになって、一部の物理学者たちは活気づいているのです。
2012-05-08 23:27:14弱値はトリッキーな面白さがあるので、一部のマニアの間でウケていたようですが、やはり実験で測ることができるとなると、物理学者としては見逃していられないということになり、近年注目度が上がっているようです。
2012-05-08 23:27:39物理学会誌「弱い量子測定によるハーディーのパラドックスの観測」http://t.co/uFGK6tsi(出版後2年経過したらネットで無料公開される)や
2012-05-08 23:28:01日経サイエンス「存在確率マイナス1:天才アハラノフの予言」(1) http://t.co/COEjwtDe,(2) http://t.co/vPVX4GJI,(3) http://t.co/nYyWu87H)や
2012-05-08 23:30:28Aharonov自身が弱値を考え出した狙いについては、また別の機会に議論したいと思いますが、日経サイエンスにそのあたりの解説もあります: 「量子力学の実像に迫る:宇宙の未来が決める現在」http://t.co/vPVX4GJI
2012-05-08 23:32:07あと、弱値はまったくの新概念というわけでもなく、物理学でおなじみの form factor や S-matrix も弱値の一種と言えます(細谷暁夫先生談)。
2012-05-08 23:32:33それにしても「弱測定と弱値」では、ネーミングとしてインパクトが弱すぎる気がします。いかにも弱気という感じがします。誰かもっといい名前を付けてほしいと思います。
2012-05-08 23:33:13