直観主義の数学

足立先生の「直観主義の数学」についての連続ツイートをまとめました。
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足立恒雄 @q_n_adachi

【直観主義の数学1】現在整理された直観主義,あるいは構成主義的数学は創始者ブラウワーの直観主義とはかなり様相が異なる.つまりブラウワーの持っている哲学性をすべて剥奪したものになっている.そこでブラウワーの哲学をちょっとメモ風に紹介しよう.

2012-05-11 14:17:47
足立恒雄 @q_n_adachi

【直観主義の数学2】ブラウワーの直観主義の本質は時間直観の重視である.「根源的な現象は時間直観以外の何物でもない.」「人間は世界の中に列の反復,時間における因果の体系を観る能力を有する.」

2012-05-11 14:28:06
足立恒雄 @q_n_adachi

【直観主義の数学3】「数学のすべては究極的には数の順序付けられた列そのものに還元し得る.」「直観主義の数学は本質的に言語のない精神構造であって,根源的直観としての抽象的「双性(2であること)の自己展開である.」

2012-05-11 14:30:22
足立恒雄 @q_n_adachi

【直観主義の数学4】「数学は言語的に表現された理論でもなければ,何か客観的な実在に関する審理の集積でもない.むしろ人間精神の行動あるいは創造である.」

2012-05-11 14:31:30
@formal_de_hyde

(小声で)ハイティングにもきっと言い分はあると思う。@q_n_adachi 現在整理された直観主義,あるいは構成主義的数学は創始者ブラウワーの直観主義とはかなり様相が異なる.

2012-05-11 14:33:27
足立恒雄 @q_n_adachi

【直観主義の数学5】「真理は実在(すなわち過去現在の意識の経験)の中にある.」「ヒルベルトの無矛盾性証明の計画は最初から可能性がない.彼は数学の基礎を形式化といった不適切で無関係なものに求め,数学を閉じた体系として外部からの正当化に求めようとしている.」

2012-05-11 14:34:02
足立恒雄 @q_n_adachi

【直観主義の数学6】「数学の真の正当化は根源的直観の把握の中に求められるべきである.」「言語的表現は数学の本質ではなく,数学的構成の過程を個人の記憶としてとどめておくための補助手段である.言語は意思を通じるための不完全な道具に過ぎない.」

2012-05-11 14:37:12
足立恒雄 @q_n_adachi

【直観主義の数学7】数学にとって絶対的に安全な言語は存在しないので,論理主義者や形式主義者が考えるように,証明を命題の論理的な関係の列と見ることはできない.」

2012-05-11 14:38:37
足立恒雄 @q_n_adachi

【直観主義の数学8】パラドクスなどというものは純然たる言語の問題なので,最初から問題にならない.それは創造する自我によって実行される数学的構成とは何の関係もない.論理と数学は無関係である.」

2012-05-11 14:40:19
足立恒雄 @q_n_adachi

【直観主義の数学9】数学の証明は永遠に固定されているということはなく,自由に成長し,人間の経験とともに変化していく.形式的体系は静的であるため,創造的な数学的活動のダイナミズムを把握することは不可能である.」

2012-05-11 14:42:03
足立恒雄 @q_n_adachi

【直観主義の数学10】「数学の命題は,証明されたか,その否定が証明されたか,まだ真偽が知られていないか,のいずれかであるから,排中律の無原則な使用は認められない.」(ここで初めて排中律が関係してくるのである.)

2012-05-11 14:43:41
足立恒雄 @q_n_adachi

【直観主義の数学11】直観主義的論理の有効な結論であっても,なお直接的精神的構成によって確認されるべk知恵あって,その結論が不正確であることが判明する可能性がつねにある.

2012-05-11 14:45:16
足立恒雄 @q_n_adachi

ブラウワーの哲学は唯我主義であろうと思われる.そういう思想だけならそう珍しくないが,彼は,元祖クロネッカーや半直観主義のポアンカレと違って,その直観主義に基づいて実数連続体の構成に成功した.これは真に偉大な数学的業績であろう.

2012-05-11 14:48:22
@formal_de_hyde

@q_n_adachi ハイティングにしてみれば「時間直観」だの「双性」だのというのは数学的に内容があるとは思えないから、「要は、排中律を認めなければいいんだな」と思うのは当然だろう。わけのわからないことばかりいう上司につく部下は大変だ。

2012-05-11 14:48:56
足立恒雄 @q_n_adachi

直線は点からできているのではなく,分け入っても分け入っても直線であるというのはカオス的思想で,とても現代的な思想だろう.ただ,そのままだと有理数の集合と実数の集合を区別することができなくなる.そこがブラウワーの苦心のしどころだった.

2012-05-11 14:53:45
@formal_de_hyde

@q_n_adachi ブラウアーが真に偉大なのは、自分の哲学ではどうにも正当化できない不動点の存在定理を証明したことだろう。当人はこれを「黒歴史」だと思ってるようだが、直観主義に興味がない大多数の数学者の見方は全く逆だろう。

2012-05-11 14:55:50
足立恒雄 @q_n_adachi

分子,原子,素粒子,・・・といくら分けて行ってもいつまでも究極の粒子にたどり着かないという可能性はあるだろう.そういう意味で直観主義的(構成主義的)数学の方が物理学に適している可能性もあるのではなかろうか? ただ,ブラウワーは極端に物理学が(論理学とともに)嫌いだった.

2012-05-11 14:56:41
足立恒雄 @q_n_adachi

明日,弟子の結婚式兼子供の誕生祝の会で講演する.「デデキントの数学思想」が表題だが,「数学は人間精神の自由な創造である」と主張するデデキントとの比較のためにブラウワーの哲学も紹介する予定である.まだ成熟した考察ではないので,披露宴の座興のつもりで話す.

2012-05-11 15:02:41