ICRPのLNTモデルは安全側に立った仮説というのは誤解/曲解/歪曲のいずれかである。

最初反語表現でタイトルを考えたのですが… 念の為、付け加えますと、ICRPのLNTが科学的に正しいという主張をしているわけではありません。ICRPの文章を読んでおいて、それを専門家が「安全側に立った」仮説であると説明・解釈するのはおかしいと言いたいのです。 で、後段の重要な点というのもLNTモデルが正しいのであれば、という話です。 続きを読む
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Masashi Shirabe @M_shirabe

リスクの分かち合いの正当性が必ずしも科学によって根拠付けられないだけの話。

2012-07-05 13:14:45
Masashi Shirabe @M_shirabe

だから一定程度の社会的合意が必要であるし、そのためには、徹底した測定と情報開示、それ以上に、納得できる形でのリスクの総量を減らす対策が実施されることが求められる。

2012-07-05 18:26:18
Masashi Shirabe @M_shirabe

現にある程度行われているように、食品中の放射性物質の総量を減らす努力を徹底するとともに、リスクをそれが取れる人間、放射線の影響を受けにくい世代で分かち合うことが科学的かつ倫理的に妥当な解決の方向ではないかと個人的には考えている(異論は当然あるだろうし、それを排除する気はない…)

2012-07-05 13:15:52
Masashi Shirabe @M_shirabe

もちろん、リスクを受け入れたくない人々の意思を尊重するのが大切。(ただし、無言の社会的圧力を無くすのが難しい…)

2012-07-05 18:27:37
Masashi Shirabe @M_shirabe

。o O (以上、8月末の岩波書店『科学』9月号に掲載いただく原稿の前宣伝でした。(原稿料は変わらないけど…)買って下さい

2012-07-05 13:18:03

@tonkyo_hanageさんから重要な指摘をいただいたので、付け加えました。


地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

.@M_shirabe さんの「ICRPのLNTモデルは安全側に立った仮説というのは誤解/曲解/歪曲のいずれかである。」をお気に入りにしました。 http://t.co/YgQy6Sqm

2012-07-05 23:42:33
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

@M_shirabe まとめ拝読しました。http://t.co/YgQy6Sqm ちょっと気になったこととして、LNTモデル自体は、必ずしも(分子)生物学的知見に依存するものなのかどうかという点があります。どちらかといえば、その位置づけは傍証なのではないでしょうか。

2012-07-05 23:56:58
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

@M_shirabe 実験的に得られる知見というのは現象を人が認識可能な要素に分解することによって得られるもので、仮に全ての要素が独立に検証されたとしても要素の影響の総和=全体を説明できるものとなるとは限らないと考えられます。

2012-07-06 00:00:02
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

@M_shirabe LNT仮説自体は、集団としての閾値は存在しないということですが、これは個人レベルでは閾値が存在していて(そうでなければ線量依存性が成立しない、但し、それが個人内で常に一定であることは仮定しなくてもよい)、それがある区間で一様に分布しているということを(続く)

2012-07-06 00:02:37
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

@M_shirabe (承前)仮定しているので、生物学的には必ずしも妥当とは考えにくい前提です。ただ、現状のヒトの疫学データからそれ以上のパラメータを推定は困難なので、防護という観点からそれなりにリーズナブルな前提として採用しているのではないかと個人的には想像しています。

2012-07-06 00:06:59
Masashi Shirabe @M_shirabe

@tonkyo_hanage コメント、ありがとうございます。興味深くかつ重要なご指摘ですね。よろしければまとめに加えさせて下さい。

2012-07-06 08:20:21
Masashi Shirabe @M_shirabe

@tonkyo_hanage で、レスポンスですが、まず歴史的にみて、疫学データや疫学的な考察が先にあるのは当然ですし、その点、完全に同意します。問題は、その先のご考察の部分が、ICRP 103の中でモデルの正当化の前提として使われているかがまず問題だと思います。

2012-07-06 08:25:49
Masashi Shirabe @M_shirabe

@tonkyo_hanage つまり、これはLNTの疫学的な解釈ですよね。私もそれは素人ながら生物学的にはあり得ないと思います(多くのモデルはそういうことを抱えているので、まぁ仕方ないですか(^_^))

2012-07-06 08:38:04
Masashi Shirabe @M_shirabe

@tonkyo_hanage 問題は、それが正しいかどうかではなく(おそらく現状のデータや科学のフロンティアではそれが判断できない)、LNTをどうやって正当化したかだと思います。で、ICRP103では、coupled withと書きながらもメカニカルな方から主に正当化しています。

2012-07-06 08:43:10
Masashi Shirabe @M_shirabe

@tonkyo_hanage 私が翻訳したBremmer et al. 2003は、その点、疫学が主で、メカニズムは従です。UNSCEARは形式はさておき疫学(というか公衆衛生学?)が主で、そのため、LNTでなくて、fittingに拘るのでしょう。

2012-07-06 08:51:11
Masashi Shirabe @M_shirabe

@tonkyo_hanage 話を戻しますと、ICRP103中のLNTの説明については、疫学者には疫学者としての、oncologistにはそれとしての異論はあるはずです。そのような異論は中でも当然ぶつかりあったわけですから、その結果としての文書表現を尊重するしかないと考えます。

2012-07-06 08:58:29
Masashi Shirabe @M_shirabe

@tonkyo_hanage そういったこともあって、あのまとめにあとで付け加えたのが、ICRPのLNTが科学的に正しいという主張するわけではなくて、勧告に書かれているICRPの解釈として、「安全側に立った」仮説というのはおかしいといった文言なのです。科学的にはまでわからない…

2012-07-06 09:05:30

さらに触発されて思いついたことを足しておく。


Masashi Shirabe @M_shirabe

ナイーブに腑分けしてしまえば、ICRPの勧告は諸科学が共有可能な合意点ではなくて、諸科学による「科学政治」の妥協点的なものなんだと思う。で、その妥協点はまず一端は尊重してもよいかな?と思っている。その妥協点を蹴飛ばしたのが我が国の…という話。

2012-07-06 12:57:58
Masashi Shirabe @M_shirabe

一端は尊重と言うのは、さらに、ICRPには通常のポリティクスが働いていること(たとえば、原子力産業からの「影響」)をどうみるかの問題が残るから。具体的には、歴史的には結構あるとして、現在のICRPの勧告の科学的な部分に、どれだけポリティクスの影響を見て取れるかが難しいところ。

2012-07-06 13:01:28
Masashi Shirabe @M_shirabe

科学的ではないところ。たとえば、alaraにせよ、reference levelにせよ、ポリティクスの影響を容易に見ることができる。ただ、これは、原子力産業をある意味で利するだけでなく、現代社会の冷酷な側面の鏡でもあって、すんなりスルーできる人も当然いる。

2012-07-06 13:04:34
Masashi Shirabe @M_shirabe

位置づけが難しいのはECRR。ポリティクスと「科学政治」の混合物みたいなところにいるは間違いない。ただ、倫理性の議論は良いとしても、「科学政治」をやる部分で一般のポリティクスとの切り分けに失敗してるため、頷ける着眼点はあるのだけど、「科学政治」のアリーナにあがりにくいという評価。

2012-07-06 13:10:03
Masashi Shirabe @M_shirabe

ICRPだってもちろん混合物なんだけど、脱政治化に「成功」している(異論は当然あるだろうし、というか自分もあるw)。

2012-07-06 13:12:57

ある方から指摘をいただき、ICRP Publication 99を駆け足で眺めました。そのうち、そちらについてもまとめますが、とりあえずこのまとめに関係あるところだけ以下についかします。