丸山天寿先生の「文献にある、食感の日本語」

「味や食感を言葉で表すのは難しい」
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丸山天寿 @tenjumaruyama

さて日曜日のお遊び。最近TVでよくグルメ番組を見る。さまざまな形態があるが、長く続いているから一つのジャンルとして人気があるようだ。だが、レポーターと言われる人達の表現方法に首を捻る事がままある。味や食感を言葉で表すのは難しい。そこで本日のお題は「文献にある、食感の日本語」→

2012-07-08 08:01:15
丸山天寿 @tenjumaruyama

「さっくり」-粘らず心地よく簡単に割れるイメージ。古語の「さ」には「離く=さく」の意味があり、「さくさく」や「さっくり」も同語源ではないかと思われる。最近の料理漫画でも、パイやクッキーのほめ言葉、パンの好ましい食感に使われている。小麦粉で作られる食品に合うのかも知れない→

2012-07-08 08:03:04
丸山天寿 @tenjumaruyama

「さらり」-室町時代の書物にすでに出ている。ものがすれて軽く心地よい音がする、湿り気や粘り気のない様子。食表現としては粘りのなさ、舌ざわりの良さを表す場合が多いようだ。菓子や酒類がべたつかない、あるいはさっぱりして素朴の意味。語尾の「り」は軽快で円滑、落ち着いた印象を与える→

2012-07-08 08:05:23
丸山天寿 @tenjumaruyama

「しゃくしゃく」-「さくさく」の持つ軽快な歯切れと「しゃきしゃき」の持つ繊維感やみずみずしさを合わせ持つ表現。二つの混ざったような言葉だが歴史は案外に古い。江戸期の滑稽本では金属が触れ合う音等に使われている。現代ではリンゴを噛む時や、山芋、岩茸などの心地よい食感に使われるようだ→

2012-07-08 08:07:31
丸山天寿 @tenjumaruyama

「しんなり」-野菜などに硬さがなく折れずに曲がる様子。「しなう=徐々に曲線を描いてたわむ」から来た言葉だと思われる。「しおれる」「しなやか」と同語源で野菜の水分張りがなくなった時にも使う。類似の「しなしな」は元気のない様子を表すが、しんなりは歯ごたえの良さを差す時もある。→

2012-07-08 08:10:01
丸山天寿 @tenjumaruyama

「すっきり」-気分や味わいが爽快であるという印象の良い言葉。これも室町期からある古い言葉。「す」には「まとまる」「澄む」などの意味があり「すきと」の語形が「すっきと」「すっきりと」に転化したようだ。すっきりには「清涼」「簡素」「洗練」などのイメージがあるので、飲料に良く使われる→

2012-07-08 08:12:09
丸山天寿 @tenjumaruyama

「とろとろ」-主に流動体や粘液を描写する言葉。「さらさら」よりも粘り気があり「どろどろ」よりもなめらかな物。食感と外観を合わせて表し、シチュー、かゆ等に使われる。室町期の女房言葉で「とろとろ」はとろろ汁の事。語源は「溶く」で「とろける」や「瀞=静かな川の流れ」と同じようだ。→

2012-07-08 08:14:53
丸山天寿 @tenjumaruyama

「ぬめぬめ」-手で触ると不快なのに食べ物として舌にあたると心地良い。ぬめぬめは、なめらかの意味の「滑=ぬめ」から来たようだ。なめらかで光沢があり、少し粘る感じ。鎌倉期から使われたようで、類似の「ぬるぬる」はすべる感じのみを表す。メカブ、ナメコ、ジュンサイなどに使用されている。→

2012-07-08 08:16:51
丸山天寿 @tenjumaruyama

「ぽろぽろ」-炒り卵やそぼろ、粘り気のないご飯等によく使われる。水分や粘りが少なくて粒状にばらける様子でご飯の場合は悪口に近い。「ほろり」や「ぼろぼろ」と同じく、小さな塊という意味の「含ろ=ほろ」あるいは少しの意を持つ「ほろく」、ばらばらの意「ほろに」等が語源ではないかと思う。→

2012-07-08 08:18:50
丸山天寿 @tenjumaruyama

食感を表す言葉は多い。今回は語源が分るものだけを書いた。「食通読本」や「食べる日本語」「国語辞典」等様々な本を参考にしたが、同じ言葉でも本によって違うから個人の感覚はもっと違うだろう。最近のグルメ本には全く分らない表現もある。奥は深いが基本的には「美味ければ表現はどれでも良い 了

2012-07-08 08:22:48