かおるさとーさんの『氷菓』#14 解説

かおるさとー @kaoru_sato

真下まで来いという奉太郎。里志が応えて校舎下まで駆け寄ると、奉太郎は何かを放り投げます。そう、製菓研究会にもらった小麦粉です。薄力粉です。

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里志は急いで摩耶花にそれを届けます。摩耶花は何が起こったのかまるでわからないという顔をしていましたが、天啓が降りたのか、すぐさま動き出します。残った材料はたまねぎ、にんじん、ねぎ、大根、甘エビの殻、小麦粉、……さあ、何が作れるでしょうか。

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（アニメはテンポよく進むので気づきづらいと思いますが、中央の食材置き場に氷が残されていること、甘えびの頭を集めたビニール袋が一瞬映っていることなど、きちんとヒントは提示されています。この辺りの丁寧な描写を見ると、やはりこのアニメはミステリ的にフェアな描き方をしていますね）

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フライパンに油をたっぷり入れて火にかけます。野菜は適当な大きさに切って、甘えびの頭も合わせて、水で溶いた小麦粉で種を作ると、それを熱した油の中に……と、そこでおたまがないことに気づいた摩耶花。お料理研究会に対して怒鳴ります。焦りが見えます。

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摩耶花が作っていたのはかき揚げ……と思いきや、そこから器にご飯をよそい、その上にかき揚げを乗せてかき揚げ丼を作ります。最後にすりおろした大根を乗せ、つゆをかけて出来上がり。こ、これはおいしそう……。千反田さんの料理もそうでしたけど、深夜に観るものではありませんね。

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時間ぎりぎりでなんとか１品作り上げた摩耶花。これはすばらしい手際の良さでした。小麦粉を受け取って瞬時に判断し、たった７分でかき揚げ丼を作るとは……。そして摩耶花以上に奉太郎の働きがチームを救いました。あの小麦粉がなければ、摩耶花は何もできなかったでしょうから。影の功労者です。

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省エネ主義者の奉太郎が、部室の窓から身を乗り出して大声で呼びかけるという展開は、視聴者にかなりのインパクトを与えたと思います。直接小麦粉を届けるのではなく、窓から投げ渡すというのが彼らしいですが。千反田さんがいなかったら気づいてもらえなかったかも？

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彼は基本的にやっぱり人がいいといいますか、根っこのところが温かい人間だと思います。あの場面、省エネ主義を第一に考えるなら、何もしないのかもしれませんけど、奉太郎の心根がそれに抵抗感を覚えるわけです。口には出しませんけど、仲間を見捨てるような真似はしたくないのでしょう。

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奉太郎風に言うなら、「精神衛生上よろしくないので、手短に手伝った」「一応宣伝になるのだから、部員としてやるべきことを手短にやった」というところでしょうか。しかし客観的に見たら、全然省エネじゃないですね。彼の省エネの基準って、ひょっとしたらものすごく低いんじゃないかと思います。

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ただ、ある意味でいつもどおりの彼ともいえます。なぜなら今回の彼の行動は、一見摩耶花を助けたように映りますけど、そもそもの原因は千反田さんなので、千反田さんの致命的なミスをうまくフォローしたともいえます。困っている千反田さんを助ける奉太郎。いつもどおりじゃないですか。

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あ、でも奉太郎は、小麦粉を渡せば何かの足しになるんじゃないかと思っただけで、まさかかき揚げ丼を作るとは思ってもみなかったはずです。なぜなら残っている食材の詳細は部室にいる奉太郎にはわかりませんから。実況がたまねぎについては触れてましたけど、それ以外はわからなかったはずです。

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摩耶花がそっぽを向きながら、こっそりうれしそうにしているのがいいですね。それにしてもこの文化祭期間中、摩耶花はひたすら貧乏くじを引かされているような……。そういう星の下に生まれついてしまったのでしょうか。今回はやたら焦る場面がありましたし。

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千反田さんが部室を見上げると、もう奉太郎の姿はありませんでした。うれしそうに頬を緩めた後、千反田さんはそっと頭を下げます。一方で奉太郎は、疲れたと一言。慣れないことをしましたからね。でも言うほど疲れたようには見えません。彼特有のポーズかもしれません。誰も見てないのに。かわいい。

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ワイルド・ファイアは見事古典部の優勝で幕を閉じました。摩耶花が揚げ足りないと肩を落としていますが、優勝したのだからそこまで落ち込まなくても……。自分に厳しい摩耶花らしいともいえますけど、別に完璧主義者ではないはずなので、ちょっと違和感がありました。

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（優勝が決まる前に落ち込むのなら、わかるんですけどね）

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事前に確認していたはずなのに、なぜおたまがなくなっていたのか。千反田さんはそこが気になったようで、キッチンを確認します。一つだけ浮き上がったバットがあることに気づいて持ち上げてみると、そこには犯行声明が。

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「お料理研からおたまは既に失われた　十文字」。占い研究会にあったカードと同じものですね。文化祭のパンフレットと、犯行声明が記されたグリーティングカード。囲碁部とアカペラ部でも盗難事件があり、メモが残されていたといいます。これはつまり……えーと、どういうことなのでしょう？

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ワイルド・ファイアは２日目のお昼に行われましたから、ここがちょうど文化祭の折り返し地点となります。ようやく今回の謎が古典部の面々に提示されて、ここからは謎解きと解決がメインとなっていきます。とはいえ古典部の最優先事項は依然として文集販売ですから、ただ謎を解くだけではないでしょう。

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それでは、細かい話。

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細かい話その１。摩耶花の装いは『ひみつのアッコちゃん』のアッコちゃん。河内先輩は『ザ・キング・オブ・ファイターズ』のキングです。アッコちゃんはテクマクマヤコンでおなじみの変身ヒロインです。コンパクトではありませんが、ちゃんと鏡もありましたね。キングは男装のムエタイ使いです。

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細かい話その２。里志のメモ帳の右ページに体育館のイベントスケジュールが載っています。２日目の今日は１０：００合唱部→１３：３０ブラスバンド部→１５：３０社交ダンス部。３日目は９：３０演劇部→１３：３０ブラスバンド部→１４：００マーチングバンド部です。観に行くつもりなのかも。

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細かい話その３。千反田さんが入須先輩と話している間、２年Ｆ組の面々が何人か背景に映っています。中城さんと江波さん、杉村さんもいますね。他にもワイルド・ファイアの観客の中に、鴻巣さん・山西さん・瀬之上さんがいました。たぶんクラスメイトの沢木口さんの応援に来たのでしょう。

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細かい話その４。トリックオアトリートといえばハロウィンですが（作中時間は１０月です）、ジャック・オ・ランタンを飾っていない家に入ってはいけません（あっても知らない家に入るのはやめた方がいいかも）。いえ、お菓子を売り歩くのは彼女らの方ですけど、一応。

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細かい話その５。漫研の部室前に掲示された貼り紙には、魔女っ子ｖｓパンサーとありますが、キングの職業は元々バウンサー（バーなどで雇われる用心棒。バンサーとも）です。パンサーだとヒョウとかピューマの意味になってしまいますが、イメージには合っている……のかな？

かおるさとー @kaoru_sato

細かい話その６。校庭でマドレーヌを売り歩く女子二人組がいました。彼女らも製菓研究会員でしょうか。かぼちゃの二人とは違うようですが。