甲状腺癌スクリーニングを行う意義について考えてみた
今の時点で甲状腺癌が「増えた」「増えてない」を議論するのはやっぱりどう考えても不毛だし、別の観点から連ツイしておこう。
2012-09-22 21:31:18本当のところどうなんだろう、PKAnzugさんの言うように甲状腺癌はもっと積極的に検診したほうがよいのか、直感的にわからないので検証してみようと思う。→https://t.co/ZS7VisQ3 http://t.co/mYb8yVdc
2012-09-22 21:31:37とりあえず2次資料というか、標準的な見解としていくつかの学会で認められているガイドライン(これは癌治療学会のHPより→http://t.co/G8noqMCw)を参照してみよう。
2012-09-22 21:31:56まず、小児の乳頭癌は成人のものよりも更に予後がよい(そもそも甲状腺癌の予後不良因子は年齢であったりする)、濾胞癌は更に予後良好ということは「一般的には」言えることは確認しておいたほうがよいだろう。
2012-09-22 21:32:11「一般的に」と書いたのは、これはあくまで「小児甲状腺癌患者群」という集団で見たとき、ということであって普遍的にこのことがどの症例に対しても当てはまるとは必ずしも言えない可能性はある、ということを担保しておく必要がある上に、すぐに統計に対してイチャモンをつける人がいるから(笑)。
2012-09-22 21:32:47で、もしスクリーニングを行うのであれば、一番よい方法は超音波による画像診断法(推奨グレードB、現在福島での調査にも用いられている)で、CQ6の表1aによれば、リファレンスによりバラつきはあるが、大体感度90%以上、特異度90%以上と見積もってよさそう。
2012-09-22 21:33:27ただ、こういった検査は当然これに習熟した人がやることが前提なので、読影者が誰でもOKというわけにはいかないだろうとは思われる。また、検査集団がいわゆる一般の集団検診のようなものでもないので、この値が現在福島で進行中のプロジェクトに当てはまるかどうかはわからない。
2012-09-22 21:34:06で、実際のデータhttp://t.co/ugdbuV7V で考えると、1次検査で陽性を「5mm以上の結節あり」で、今回検査した集団において「甲状腺癌患者が1人しかいなかった」という(若干無理はあるかもしれない)仮定をおくと、特異度は大体99.5%ということになる。
2012-09-22 21:34:27この値はガイドラインに引用されたデータに比べて大分高い、というか有所見率(=結節が存在している人の比率)が低い。大方ガイドラインの数値は成人を対象にしている(つまり甲状腺癌の有病率がより高い)というところが要因と考えるのが妥当とは思うが。
2012-09-22 21:34:41では、試しに結節が発見されたうち、どれだけその中に甲状腺癌患者が含まれているかを見てみると、ガイドラインでは「健常人で偶発的に甲状腺結節が発見された場合,悪性腫瘍である確率は3. 7~15. 9%である。」とある。勿論これも条件によって異なるだろう。
2012-09-22 21:34:56結節が発見された人のうち、画像で相当程度悪性か良性かも判断できるとのことなので、必ずしも全数を直で確定診断に持っていくわけではないだろうし。ちなみに、今回の事例では2次検査でももう一度超音波検査を行っている(こっちはより時間かけて見るのだろう)。
2012-09-22 21:35:28で、2次検査の結果悪性が疑われた受診者に対する確定診断は穿刺吸引細胞診で行う。その結果、今回の事例では1/38であったということなのでhttp://t.co/Vl5yWdi9単純計算すれば2.6パーセント。
2012-09-22 21:36:00あとは、B判定以上の186人(184人?)のうち、穿刺吸引細胞診を行った38人が2次の画像検査で悪性が疑われ、確定診断を行う必要があると判断されたのか、それとも単に未実施なのかはちょっとわからない。恐らく前者とは思うが確かではない。
2012-09-22 21:36:31だが、勿論この1例で何かを判断するには早計に過ぎる、というより今回の結果は以後の検討を行うためのベースラインデータとして考えたほうが適切だろうな。勿論、この患者さんに対して標準的な治療を行うことがまずは第一優先である。
2012-09-22 21:36:47もう一つ、このシークエンスでの感度がどれくらいであったのか、つまり実際に受診者中に存在している甲状腺癌患者のうちどれだけが見つかったのかも現時点では判断不能。まあ、90%の感度ということなら恐らく見逃しはないかあるとしても極少数と考えられる。
2012-09-22 21:37:00但し感度は「見逃し例」の定義によっても様々に変わるので、算定は非常に難しい。例えば以後の経過観察のインターバルの間に新たに見つかったもの(2年?)を見逃しとするか、あるいはもっと短期間で見つかったものとするかなどで変わってくる。
2012-09-22 21:37:18仮に癌組織が存在していたとしても、小さければ見つけることは非常に困難で、偶発的に穿刺吸引細胞診で微小な癌が見つかってしまった、という事も想定されるし、成長速度が非常に速いような場合、検査時点では本当に存在していなかったということもありえる。
2012-09-22 21:37:56で、本題はこのシークエンスを福島のみで行うのべきか、それとも他の適切な地域で対照データを取る、あるいは(小児)甲状腺癌検診を実施する必要があるのかということで。
2012-09-22 21:38:10小児甲状腺癌は、現時点では「見つけようとして」見つかっているものではない。どちらかといえばたまたま見つかった、あるいは甲状腺の腫脹などに気がついて病院で検査したら癌があった、というタイプのものと考えてよいだろう。
2012-09-22 21:38:54従って、今の福島県のように積極的に見つけにいくというスタンスでやったときに実際にどれくらいの子供から小児甲状腺癌が見つかるか、ということを検討することは一見すると意味があるようにも見える。
2012-09-22 21:39:07がん統計から考えると、0~19歳までの子供の10万人あたりの年間罹患者(要するにがんが見つかった例数)は1975~2007年の間で人口比がほぼ一定と仮定して平均すると10万人当たり0.175人くらいという見積もり。
2012-09-22 21:39:22有病率はhttp://t.co/zZBrOICPも参考にして控えめに5倍くらいを考えると大体10万人あたり0.75人くらい。そうすると、想定される有病率はざっぱに見て0.008%。
2012-09-22 21:40:01