【コストを取るか】 電子書籍と校正のお話 【精度を取るか】

金がないから、コスト節減のために、端折ってはいけない工程を削る。 人件費削減と合理化のために、安全性を担保すべき工程を削る……という話にも通じるが、今回は「電子書籍と校正」について。 電子書籍は原稿以外の工程に掛けられる予算がかなり、というかほとんどないので、著者がセルフパブリッシングするような場合、費用の壁の問題から職業的校正者によるチェックがほとんど望めない。そのため、電子書籍は誤字脱字満載のものが増える可能性があり、そうなると消費者から「金を取れるレベルじゃないだろ!」のお叱りを受け、電子書籍が初出になるような書籍はますますお金を貰いにくいものになる――かもしれない、というお話です。 続きを読む
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加藤AZUKI @azukiglg

一方で、「校正」とか「デザイン」とか「組版」とかの周辺作業者は、あまりに投機的すぎると(売れなければ作業費が出ないとか)それは仕事として成り立たなくなるので、仕事としては請けられなくなるんじゃないかしらん。

2012-11-30 03:30:47
加藤AZUKI @azukiglg

電子書籍に付ける表紙絵、挿絵、それをデザインするコスト、校正費用、組版費用。文字が主体の小説を電子書籍にしたとしても、それだけの「作家の投機性(いちかばちか)」とは別に、確実に掛かる費用があって、それを「ダウンロードがどのくらい見込めるか不明」な電子書籍では賄いにくい。

2012-11-30 03:32:07
加藤AZUKI @azukiglg

ものによっては、組版コストやライセンスコストの数万円を「版元が回収」するだけで数年かかりそうなものもある。まあ、初版だけで重版が掛からなかった本などの多くはそうで、それ故に、絶版になって古本しか出回ってないような本は電子書籍になりにくいんだが……

2012-11-30 03:33:03
加藤AZUKI @azukiglg

政治の話なんかと同じで、「ナントカしろ。ただし、金は出さん。著者か版元がタダでやれ。もしくは、ボランティアにタダでやらせろ」みたいなものに頼らない限り、ここらへんはなんとも難しい。

2012-11-30 03:34:11
虎荒狗狼 @koalaclaw

@azukiglg ふむん。ちゃんと文章を読まない層が、わっと金を落とす数作品ブームの話でなく、作品を送り出す側のスタンスの話ねん。祭りに浮かれて金を落とす大衆は置いといて、送り手としてはコツコツ何をすればイイか考えてる最中ってとこか。全体が長持ちする方法を読むのは激ムズだわさ。

2012-11-30 03:34:37
加藤AZUKI @azukiglg

また、「タダが基本」なら誤字脱字は看過される土壌ができるかもしれないけど、「金を取るならキチっとしたもの」じゃないと許さないのが日本の消費者なんで、それに対応して商品として成り立つものを提供しようとすると、やはりそういう「周辺コスト」が嵩む。

2012-11-30 03:35:06
加藤AZUKI @azukiglg

その「周辺コスト」を回収でき、周辺作業に携わる作業者に、「本の面白さとは無関係にお金が入る」「利益が出る」という仕組みが成り立たないうちは、電子書籍は【ビジネスにならない】。

2012-11-30 03:35:58
加藤AZUKI @azukiglg

あと、「Googleがタダでスキャンするって言ってるんだから奴らにやらせろ論」は前にも出てたけど、Googleがやってたのは、フィックス、或いはレプリカと言われるもので、本の誌面をそのまま画像イメージとした電子書籍化。一般に個人が「自炊」しているもののほとんどもこれ。

2012-11-30 03:37:02
加藤AZUKI @azukiglg

ちょっと前に話題になったり提訴されたりしてた「自炊屋」さんがやってるのも基本はこれで、完成品の本を断裁して、連続スキャナでガーっと。ただこれは、ファイルサイズがでかくなる。(普通のコミック1冊で90MBくらい)コミックの多くはそれでなきゃ困るが、文字の本には無駄すぎる。サイズが。

2012-11-30 03:38:37
加藤AZUKI @azukiglg

期待されてるのはePub3やKindle8フォーマットなどでの電子書籍、所謂「リフロー型」だと思う。これはファイルサイズも小さくできるし、内容もテキスト検索が掛けられたりするし、閲覧端末が変わっても文字がフローして自動で溢れたり繰り上がったりしてくれる。

2012-11-30 03:40:34
加藤AZUKI @azukiglg

これを自動で生成するツールはあるし、今後もっと使いやすいツールは出てくると思う。思うんだけど、僕が問題視しているのは、「自動的にePub3やKFを作るツール」のことじゃなくて、そこに流し込む「テキストデータ」と「デザインを施した表紙データ」の作成について。

2012-11-30 03:41:36
加藤AZUKI @azukiglg

電子書籍については、「作家が原稿を用意すれば、出版社がなくても本が出せる」という喧伝がされてたし、実際、「作家が出版社の手を借りずに、完璧な完成原稿を作れる」なら、それもありだろうとは思う。思うんだけど、四半世紀の編集者経験から言えば、【無理】だねw

2012-11-30 03:42:36
加藤AZUKI @azukiglg

これは、新人作家に限った話じゃなく、その道で十数年やってるベテラン作家でもそうだと思うんだけど、「作家当人以外の誰にも触れさせずに、誤字脱字や文法のミス、誤変換、そして誤解(勘違い)や致命的ミス(例えば推理小説のタネとか)の間違いを、完全にゼロにすることは不可能だと思う。

2012-11-30 03:44:18
加藤AZUKI @azukiglg

どんなに注意しても無理。仕事柄、色々な作家さんの色々な「草稿」を拝見したり時には整理のために手を入れさせて頂いたりする機会が多いんだけど、作家さんが出してきた草稿に、まったく手を入れることなくそのまま右から左で入稿できたコトは、過去にタダ一度もなかったヽ(´∇`)ノ

2012-11-30 03:45:22
加藤AZUKI @azukiglg

なぜか、と言われると、それはもう「人間だから」としか言いようがない(´・ω・`)プロの校正さんの眼力でダムを壊すような鬼の校正の洗礼を経た後の原稿にすら、誤字が見つかることがあるくらいなわけで、これはもう時間掛けて人数掛けてなんとかするしかない。

2012-11-30 03:46:27
加藤AZUKI @azukiglg

そのために編集者がいて、校正作業者がいて、編プロ或いは出版社というものがあるわけだけど、電子書籍ではそうした「システム」を通さないことでコストを下げ、その負担の全てを「作家個人に求める」ということになる。作家の負担は膨大になる。

2012-11-30 03:47:14
虎荒狗狼 @koalaclaw

@azukiglg 単行本系じゃ不可能だろね。数ページで済む雑誌だけだよ、神懸かり的に「今月は校正部分ゼロでした!」と一切赤が入らないなんてシチュがあるのはw それも年に数回あるかないか。

2012-11-30 03:48:41
加藤AZUKI @azukiglg

大昔、DTPの走りの頃の話なんだけど、ゲームブックを作ってたことがあった。選択肢選んで何頁へ行け、みたいなアレね。あれは、本文は明朝で、項目番号と選択肢だけゴシックだったんだけど、そのゴシックになる部分に、タグを手入力してた。まあ、黎明期の話ですがw

2012-11-30 03:49:07
加藤AZUKI @azukiglg

今だったら、WYSIWYGなエディタで、がーってやってくところだけど、その頃はそんなのなかったから、テキストエディタで原稿開いて、一個一個にタグを手入力していった、という……。いやあ、DTPってこんなに面倒なのかと(ry

2012-11-30 03:49:54
加藤AZUKI @azukiglg

つまり、それまで分業してた作業で、組版屋さんがやってくれてたことを、編集者がやるようになった。手で。その結果、確かにコスト削減にはなったんだろうけど、編集者の作業負担が倍とかそんなレベルではないほどに増えた。主に、精神が削れた気がしますw

2012-11-30 03:50:42
加藤AZUKI @azukiglg

ゲームブックっていうのは、1行はみ出してページがずれると、それだけで商品として成立しなくなっちゃうから、テキストデータの時点では行はみ出しも含めて「完璧」になってる。完璧である前提で、印刷したときには表示されないタグを手打ちしてく。うまくできてるかどうかは出力しないと分からない。

2012-11-30 03:51:53
加藤AZUKI @azukiglg

出力も今みたいに「試しでプリンターで出す」とかできないので、ロール状のお高い紙にガーッと。それを後で編集者がちょきちょき切って、折りごとに版下に面付けしていく、という……。そして校正紙は青焼き一回しか出ないw

2012-11-30 03:53:02
加藤AZUKI @azukiglg

あんな過酷な(編集者が)現場はその後はなかったけど(技術も進化したし)、その経験から言えるのは、「複数のスキルを持った個人が複数の作業を一人でやれば確かにコストダウンは図れるけど、製品精度は落ちる」ってことと、「作業者が潰れやすくなる」ってこと。

2012-11-30 03:54:16
加藤AZUKI @azukiglg

電子書籍についても同じ事が言えるわけで、流し込むためのテキストデータを、作家一人だけに「完璧にすることを強いる」というのは非常に困難。てか無理。てか不可能に近い。もちろん、中には一人でそれをできてしまう人もいる。

2012-11-30 03:55:02
加藤AZUKI @azukiglg

僕などは自分で書いて自分で校正して自分で組版までやってるけど、一応、第三者の校正は必ず通している。京極先生は自分で書いて自分で構成して自分で装幀もして自分で組版もやってて、この分野では第一人者だと思うけど、そこまで複数のスキルに秀でた「作家」となると、まだまだ決して多数派ではない

2012-11-30 03:56:21