司法試験受験生のガチ自民党改憲案検討 ①改憲案は個人主義否定→天賦人権否定か?

改憲案騒動にかこつけて憲法の復習してみよう第一弾は天賦人権である。 改憲案の天賦人権否定については護憲派が強力に主張しているが、そもそも、発端となった片山議員や改憲案Q&Aを関連付ける議論も不当なものであった。その点は下のまとめ前半で詳細にその理由を述べてある。 さらに、護憲派の言う、具体的な「改憲案が天賦人権を否定している条文上の根拠」も、ほとんど妥当なものとは思えなかった。 その点についても、近日中にまとめる予定である。 続きを読む
政治 憲法 自民党改憲案 天賦人権 法律 人権 個人主義
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自民党議員とかQ&Aとか歴史と伝統につき肩慣らし
huna @hunahunahunahun
天賦人権論について、片山議員が「国民が権利は天から付与される、義務は果たさなくていいと思ってしまうような天賦人権論をとるのは止めようというのが基本的考え」と発言しとんでもないことになった> http://t.co/ORezkehT
huna @hunahunahunahun
さらに、http://t.co/dSSWaSp9にある自民党公式改憲案Q&Aは「権利は共同体の歴史伝統文化の中で徐々に生成されてきた」「人権規定も我が国の歴史伝統文化を踏まえ~西欧の天賦人権説に基づいて規定されている~規定は改める」としている。
huna @hunahunahunahun
これについて一応コメント。「人権が共同体の歴史伝統文化の中で徐々に生成」などと言えるのは、世界広しといえどイギリスだけだろう。イギリスにおける人権保障は、1215年のマグナカルタに始まり、権利請願・権利章典と発展していき、今に至る。3つともイギリスの憲法扱いなんだから恐ろしい
huna @hunahunahunahun
もっとも、イギリスで歴史的に生成された権利は【学説芦部】「イギリス人が歴史的にもっていた権利・自由であって『人権』というよりは国民権」【第5版p76】であり、これがフランスやアメリカで「人権」となるにはご存知社会契約説が出てこないといけないわけである。
huna @hunahunahunahun
余談。イギリスは主権者が国民ではなく議会だとされてたり、今は確か変わったと思うが、非民選貴族院があったり、違憲立法審査権が議会自体にあったりという近代現代憲法理論泣かせ。そんなんでうまくいくのはひとえに長大な伝統ある議会の権威と法の支配概念のおかげ。くわしくはめんどい
huna @hunahunahunahun
閑話休題。てなわけで、歴史と伝統に基づく人権なんて日本では観念できないいや、実は強引に観念できる。「敗戦」という歴史に基づいて。ポツダム宣言受諾により、天皇主権から国民主権となる(8月革命という)とともに、人権も天皇から与えられるものではなく、天賦のものとなったというふうに。
huna @hunahunahunahun
もしくは、日本国憲法下でのこの60年ぐらいも立派な「歴史と文化と伝統」なわけで、それをさしているといえるかもしれないけどさ。環境権・犯罪被害者の権利とか各種新しい人権をとりこんでるのはそういうことか?皮肉です
憲法・法律解釈は起草委員・政党や政府解釈に引きずられないように
huna @hunahunahunahun
と、自民党改憲案Q&Aをからかってきた。もうどう読めばいいのかよくわからんので、分析も混乱する。しかし、これらはすべて徒労なのだ。先ほど述べたとおり、片山が、Q&Aが、あげく自民党改憲審議会が何を言おうが、それはさほど重要ではない。以下、長谷部教授の教科書引用
huna @hunahunahunahun
【学説長谷部】ある法律の成立の経緯、あるいは起草や審議にあたった人々の考えは、その法律の解釈を決定するわけではない。法としての効力を有するのは、あくまで条文に定式化された限りでの立法者の意思である【第5版p56】
huna @hunahunahunahun
【学説長谷部】それ以外の起草者や立法者の考えは、(略)憲法思想史や比較法上の素材と同様、解釈の参考資料となるに過ぎない。()いかなる解釈が9条を憲法全体の構造と理念に整合的に位置づける最善の解釈といえるかを議論すべき(略)【第5版p56】
huna @hunahunahunahun
えー、おわかりいただけたであろうか。「条文に定式化された限りでの立法者意思」とはなんぞや?それが「憲法全体の構造と理念に整合的に位置づける最善の解釈」である。たぶん、その規定がその法にある理由とか、法・規定の目的から導かれる解釈ってことかな。
huna @hunahunahunahun
要は三権分立。法を作るのは立法機関たる国会(憲法なら+国民)、法を執行するのは行政機関たる内閣というか官僚、そして法の解釈をするのは司法機関たる裁判所(+法律学者)というふうに独立している。特に司法権はその独立が大事。
huna @hunahunahunahun
一議員が何を言おうと、それは法解釈には原則影響しない。1議員の意見が審議会や政党の意見をすべて代表するわけではなく、また、立法を行った審議会や政党の見解解釈が裁判所や学者を拘束するものではまるでない。2重の意味で、一議員の発言と改憲案の解釈を結びつけるのは間違い。
huna @hunahunahunahun
結局、自民党の議員やQ&Aなど見ずに、自民党改憲案だけを純粋に分析すればよい。条文「だけ」見ましょう。
huna @hunahunahunahun
【2012年12月23日訂正】危ない危ない。これはミスリーディング。起草委員や政府官僚解釈「だけ」で法の解釈をしては「いけない」というのが正しい。特に憲法に非常に顕著だが、条文の解釈の際には、条文には書いていない人権の性質や比較法的検討、改正前法との比較なんかが普通に用いられる。
huna @hunahunahunahun
【2012年12月23日訂正】Q&Aや議員の発言を決定的根拠として、改憲案の解釈をする言説への批判という名目に引きずられて、こちらも条文文言だけだ!と反対側に偏ってしまっていた。ここに訂正してお詫びする
天賦人権とか自然権とか何だよおい
huna @hunahunahunahun
さて、早速条文を見よう…と、その前に。天賦人権ってなんぞや?その定義を示す。天賦人権とは、国家が無くとも、憲法がなくとも、人は生まれながらにして権利を有しているという思想である。天賦の才=生まれつきの才能、と同じようなものとどこかに説明があったがまぁそんなかんじ
huna @hunahunahunahun
なお、この、憲法がなくとも国家が無くとも、権利があるのだ!というそのときに、その権利自然権と呼ぶ。で、いや、国家や憲法がないと権利があるとは言えないでしょう?というのが法実証主義。念のためいうけど、「義務がないと権利じゃない」という思想じゃないですからね?法実証主義は。関係ない
なんで「生まれながら」「何もせずに」権利があるわけ?
huna @hunahunahunahun
問題は、天賦人権の思想的根拠である。自民党からレキシガーデントウガーとか聞こえるが無視しましょう。あれはイギリス限定です。以下、アメリカ・フランス・現行憲法・改憲案とみていきましょう。
アメリカ独立宣言の場合
huna @hunahunahunahun
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コメント

huna @hunahunahunahun 2012年12月13日
まとめを更新しました。
taku @_heathworld_ 2012年12月13日
とてもまとまっていて、わかりやすく感じました。まとめどうもありがとうございます。このまとめを読むに、自民党改憲案は、Personality を欠落させてHumanityを伸張させる様な改憲案になっていると言えそうですね。これは評価が真っ二つになりそうな発想ですね。。。
甲賀志 @hiroujin 2012年12月13日
「個人」ではなく、「人」と定義されることによって「「生まれながら共同体の関係性の中に生きる人間」とされ、前国家的だが前共同体でない権利、つまり、もとより共同体との関係で縮小されたものとしてしか自然権が認められなくなるかも?」という指摘は重要だと思う。 12条、13条の「公益及び公の秩序」は言い換えれば、「共同体の利益及び、共同体の秩序」とも言い換えられるだろう。共同体(の多数派の価値観)の中でしか人権が認められないという構造、というわけだ。
Tuba56@法律の素人 @Tuba56 2012年12月13日
家族が共同体の最小単位とされていることは疑いないと言っていいと思いますが、その中で個人としての人権が今までだって無制限に主張できたわけではないでしょうね
MaliS @MaliSNacht 2012年12月13日
少なくとも「自然権」は否定する方向っぽいよねぇ。改正案の102条1項とか…。まぁ、ギリギリ「尊重」で留めてはいるけれど。
MaliS @MaliSNacht 2012年12月13日
あと、そんなに「歴史と伝統」を重んじたいのならば、「憲法典」を無くして、イギリスのような不文憲法にすればいいのに、と思ったり思わなかったり。
カウンター・マスメディア(脱体制) @counter_mm 2012年12月13日
たいへんすばらしいまとめ。イギリスについてもまさにそのとおり。イギリスの自由は大英帝国という覇権国家だったという歴史的背景を抜きにしては語れないだろう。イギリスの自由は他国の不自由とセット。
カウンター・マスメディア(脱体制) @counter_mm 2012年12月13日
イギリスの自由は資本家の自由。法の支配は貴族の自由。から始まったという歴史的側面もあるのではないかという視点も大切。現在はともかく。
でき @dekijp 2012年12月14日
神の名を出して憲法を解説した挙句に司法試験受験生が…とか言っちゃうのは、某『科学』をつけてもっともらしく見えるようにした、幸福何とか党並みに胡散臭いです。政教分離で天を否定しながら天賦人権を描かなければいけないのかもしれません。
カウンター・マスメディア(脱体制) @counter_mm 2012年12月14日
捕捉。ヴォルテール(啓蒙思想家)とかはイギリスについてすごい評価するんだよね。自由な国。議会の国として。でも彼はイギリスの「民衆」を見てこなかったと言われるわけだ。イギリスの議会だったり自由というのは自由を認めることで富裕層、貴族が発展していくという構図があったからこそで、たぶんに歴史的なものに過ぎないということ。まあ法曹集団が形成されていたというのもあるが。
カウンター・マスメディア(脱体制) @counter_mm 2012年12月14日
そんなのを他国が導入したところで成文化された大陸法に劣るのは明白。
K&U @khk_u 2012年12月14日
個人の権利より共同体の利益、家族主義e.t.c.確かに改憲案の方が日本本来の性質には合ってる気はする。けど、生活基盤としての共同体が形骸化し、企業を家族の延長線として見る終身雇用も崩れ、自己責任の風潮が強化された今そんな改憲しても、日本本来の性質のネガティブ面が強化されるだけじゃ?
K&U @khk_u 2012年12月14日
改憲するなら、そうした各々の問題を整備してからじゃないと。よかれと思って規制したことが逆に現場を苦しめるという、よくあるパターンになりそう。
高村武義 #WalkAway @tk_takamura 2012年12月14日
@khk_u 同感です。家族や地域の共同体が成立していた戦前ならいざしらず、現在では価値観の多様化、核家族化、非正規雇用の常態化、郊外店進出による地方生活圏の崩壊(ファスト風土化)、そして自己責任の風潮(共同体の否定)など、現在の日本では共同体をベースにした生活形態が成り立たないんですよね。
高村武義 #WalkAway @tk_takamura 2012年12月14日
こういう中で共同体を基準にした憲法は、完全に逆効果になるでしょう。残った共同体としての国家や政党、企業への臣従を強いられるだけで、一言で言えばブラック国家化が進むだけになります。上位の指導者は、下位には無制約の権威を持つが責任は負わず、下位の者は、上位の指導者に絶対的な責任を負うナチズムの指導者原理を、憲法化してしまう結果に終わるでしょう。
K&U @khk_u 2012年12月14日
tk_takamura 国民は国に奉仕するためのものであって、国に助けてもらうもんじゃありません。って宣言でしょうか極端に言えば。家族が病気や怪我で働けなくなったり、介護老人その他抱えて身動き取れなくても、国が助けるのは公益に反するから家族で助け合いなさいみたいな。でも憲法ってそういうお国の言い訳を宣言するためのものではw
Tsuyoshi CHO @tsuyoshi_cho 2012年12月15日
心に止めておこう。それはそれとして人と人との関係=法律とすると人として、となるのもあるかなぁ、とは思うけど
huna @hunahunahunahun 2012年12月23日
条文だけみなくていけない、というのは明らかにミスリーディングであり、起草委員や官僚の解釈は決定的ではないというふうにいえばよかった。失敗失敗。そこを訂正追加
水瀬秋(えるマーク付き)【#消費税は廃止 #山本太郎を総理大臣に】 @biac_ac 2013年7月21日
「享有」=「生まれながらにして持っていること」というのは、現行憲法での用例であって、常にそういう意味だとは限らない。まず、その点に留意しておくべき。 / 「社会に出て大らかな自由を享有する」〔池田潔・自由と規律〕、「享有盛名」(名声を博す)のように、後天的に持つようになるという用例もある。 / なにより、民法第3条で「私権の享有は、出生に始まる」と書いている。「享有」=「生まれながらにして持っていること」とは限らない、だからこそ、わざわざ「出生に始まる」という条文を最初に置いてあるのだ。
水瀬秋(えるマーク付き)【#消費税は廃止 #山本太郎を総理大臣に】 @biac_ac 2013年7月21日
さて、「人は生まれながらにして全ての基本的人権を持っている」(自然権)のであれば、国籍は関係無い。 / では、日本国民ではない人(「非国民」と略す)は基本的人権を持っているか? / 現行憲法11条からは、「非国民も基本的人権を持っているが、その行使は妨げられることがある」と導かれる。(たとえば、入国の自由を持っているが日本国によって妨げられることがある)
水瀬秋(えるマーク付き)【#消費税は廃止 #山本太郎を総理大臣に】 @biac_ac 2013年7月21日
この点、自民改憲草案11条は明快だ。「国民は、基本的人権を持つ」のであるから、「非国民は、基本的人権を持たない」。「まったく持たない」のか「全ては持たない」のかという条文解釈の問題は残るが、一部であれ全部であれ「非国民は、基本的人権を持たない」。
水瀬秋(えるマーク付き)【#消費税は廃止 #山本太郎を総理大臣に】 @biac_ac 2013年7月21日
「いや、そうじゃない。自民憲法草案は自然権は否定していない。非国民にも基本的人権はある」と言うならば、自民改憲草案11条冒頭の「国民は」を「人は」に変更すればよろしい。 / まぁ、そうしてしまうと、非国民の入国の自由や選挙権を妨げることができなくなってしまうわけだがw
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