先日のトータスの32ポンド砲の話から、薬莢サイズと初速の因果関係について@bouninng=サンと少し話題がありまして。そのあたりについて数字で遊んだりしてましたので、ちょっと投下したりします #SW42
2013-01-03 00:47:45最初に、32ポンド砲の周辺口径の火砲について、諸々の情報を書き出してみました。初速・弾頭重量といったよくある諸元に、装薬量や運動エネルギーも付けてみました。うわあ見づらい http://t.co/C4CVqvob
2013-01-03 00:49:46周辺口径と言えども、装薬量を調べることができたものだけを書いたので、下は75mmから上は114mmまで少々幅が広いです。また今回は特に榴弾砲や臼砲の類は除いて、加農に分類されそうなものを対象にしています
2013-01-03 00:51:28さて、まず見慣れない値「薬莢体積」を見てみましょう。これは薬莢肉厚やボトルネックは考えず、単純に薬莢を円錐台形状として見た体積です。こうして見ると、大重量高初速の砲ほど薬莢が大きいような傾向はぼんやり見えてきます。これはなんとなく直感でわかりますね
2013-01-03 00:53:49ただし、8.8cm SK C/31と8.8cm FlaK41を比べてみれば判るように、薬莢サイズが大きいからといって必ずしも大重量高初速であるとは限らないようですね。この傾向は3年式8糎砲と90式野砲なんかでも似てます
2013-01-03 00:55:28これを踏まえた上で、次は「装薬密度」を見てみましょう。これは薬莢1立法センチメートルあたりに何グラムの装薬が詰まっているかを示します。装薬の種類とか質は考えず、単に詰まってるか・スカスカかですね。ちなみに、さっき私が思いついた指標なので、なんら学術的正当性はありません
2013-01-03 01:01:32先に挙げた8.8cm FlaK41と8.8cm SK C/31に注目してみますと、前者が0.758g/cm^3なのに対して後者は0.558g/cm^3でしかなく、随分とスカスカです。薬莢が大きいからといって、装薬が一杯入っているとは限らないんですな
2013-01-03 01:02:52@FHSWman その手のヒッカケめいた話はよくありますね 大型薬莢だからといっても、断面図では半分少々しか装薬嚢が入っていないなんてのは案外頻繁に見ます
2013-01-03 01:05:33@Jagdchiha とくに分離薬筒の場合は、普段使いの薬莢は案外スカスカだったりしますね。マジでヤバイ時にだけ使う超装薬のためのマージンもあったりするかも知れません
2013-01-03 01:09:03また、装薬密度は火砲の性格とあまり関係無さそうなのも判ります。この表は初速順で並べてありますが、高初速砲だからといって装薬がぎゅうぎゅうに押し込めてあるわけでもないのです
2013-01-03 01:06:01@FHSWman 装薬の燃焼速度が圧によって変わったりするんじゃないかとも思ってるんです すなわち、空気もほとんど入らないようなギッチギチに詰め込んでしまうと未反応の装薬の燃焼速度に影響が出て初速にバラつきが、とか
2013-01-03 01:11:31@Jagdchiha でかい薬莢≒大初速なんではなくて、でかい薬莢のほうが初速を増し「やすい」って話ですな。圧力曲線はよくわかりませんが、たぶん詰まってると急激に増大したりするんでしょう
2013-01-03 01:16:27余談ですが、あまりに高密度に装薬を詰め過ぎると発砲後に薬莢が膨らんで薬室に張り付いてしまい、排出できなくなる場合があります。例えば大威力10加は後に試製ホリ砲に転用された際、試験で抽筒不良を頻発しましたが、この高めの装薬密度を見ればなんとなく納得できますね
2013-01-03 01:12:47もう一つ気になるのは「口径*口径長+薬莢体積」で出る「砲内総容積」じゃないかと思うのですだよ つまりどんなに薬莢がでかくてガス量があったとしても砲弾に対して効果させている間しか砲弾の初速は上がらないわけで、そのためには圧力上昇を急にするか砲身長を伸ばして効果時間を長くするしかない
2013-01-03 01:16:40ガス圧力を上げれば砲身内側はすぐに焼蝕され精度も気密も保てなくなり砲身命数を下げることになる、砲身長を伸ばせば運用や製造で手間がかかる、弾を軽量にすれば加速しやすくなるが威力が犠牲になる… WW2頃まではこれらを天秤にかけるしかなかったところ、装弾筒の発明で道が開けることに
2013-01-03 01:21:09装弾筒を使うことで発射時は(それまでのAPに比較して)軽量なAPDSを高初速で撃ち出し、砲外へ出てすぐに密度の低い装弾筒部分を排除することで弾体全体の密度を上げ高初速の小口径弾を作る… 当然ながら貫徹後のダメージは元の口径のAPには敵わないものの、とにかくは「抜ける」弾が出来る
2013-01-03 01:27:15ぐらいに自分では認識しているんだけれど、実際のところAPDSが表に出てきた頃にはHEATが猛威を振るいだした頃でもあるんだよなあ 純粋に貫徹力で喧嘩したらHEATには敵わないし、ただ傾斜装甲に対してAPDSがどう振舞うのか聞いた事ないけども、HEATよりはマシだったのかなあ?
2013-01-03 01:29:29確かにHEATはちょっとした小細工で貫徹力を激減させることが出来るし、貫徹後の破壊効果も実体AP弾が貫徹したときのそれとは劣るというけど、定量的なデータを見せられて聞いたこともないんだよな
2013-01-03 01:31:48さて話が逸れました。表の最後に「装薬量/運動エネルギー」などと謎の欄がついてます。これは装薬1gにつき、砲弾にどの程度の運動エネルギーが与えられるかを示します。これもさっき私が思いついた指標です
2013-01-03 01:17:54表だけでは判り辛いので、ちょっとグラフを用意してみました。結構口径がバラバラな火砲の集団なのに、なんとなく相関っぽいものが見えますね。高初速になればなるほど装薬1gあたりが伝えられるエネルギーは限られてくるみたいです http://t.co/9nQDGW3p
2013-01-03 01:19:35例えば、ほぼ同口径で初速の大きく異なる3inch Mark37高角砲と90式野砲に着目してみましょう。前者は装薬量あたりの効率が後者のほとんど半分でしかありません。似た口径ながら装薬量に4.5倍もの差があるのは、高初速を出すことがそれだけ難しいからなのです
2013-01-03 01:23:28砲としての規模がほぼ同等で、かつ開発時期に16年程差がある3年式8糎砲と90式野砲にも着目してみますと、こちらでも90式野砲のほうが随分と効率が良いです。装薬や弾帯の改善なのか砲身製造技術の向上か何なのかは判りませんが、とにかく16年間の技術蓄積の差が表れているような気がします
2013-01-03 01:27:11ここで表に戻って、先日話題になった32ポンド砲を当てはめてみましょう。この砲は不明点の多い火砲で、砲身長には50口径説と65口径説(参照 http://t.co/kJ5HXAEH)、初速には878m/s説と930m/s説があります http://t.co/aE5dxjRa
2013-01-03 01:31:2132ポンド砲は装薬量こそ明らかになっていますが、薬莢のリム径が不明です。今回は参考値として、原型砲である3.7インチ高射砲Mk.I系列のリム径135mmを採りました。そこから算出した装薬密度は平均的な値になったので、この仮定は当たらずとも遠からずではないかと思います
2013-01-03 01:35:42さて、32ポンド砲の初速説2つをグラフに当てはめてみます。どちらも他の火砲の集団から大きく外れてはおらず、“ありそう”な値のように見えますが、930m/s説のほうが相関の近似線により近いですね http://t.co/nzXU5zbo
2013-01-03 01:41:11