- karitoshi2011
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0続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』ここまで第2章、第3章について読み解いてきたが、今度は第4章とそれに先立つ「インターミッション」の読解。ここが本書の核心で「信頼の条件」を明示しているところ。「倫理」から「信頼」へ焦点が移るが、結局は同じ問題。
2013-04-26 13:11:521続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』「信頼」は力を行使する側の「クレディビリティ」があり、その影響を受ける側の「トラスト」が生じるところに成立。重要なのは行為と言語情報とが照応すること。言語情報の形式的整合性があっても文脈と内容的に合わないと信頼は崩壊。
2013-04-26 13:12:092続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』クレディビリティを超えてひたすら信頼が成り立つのは「フェイス」(信仰)だが、クレディブルな情報を提示していないのに「信頼」して下さいという言葉が発せられれば、「トラスト」ではなく「フェイス」を求めていることになる。
2013-04-26 13:12:233続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』2011年3月19日の日本産婦人科学会会長声明では「国からの情報は、多くの機関から監視されており、正確な情報が伝えられていると評価されますので」とあるが、これは誤った(クレディビリティに欠ける)情報だ。だが、それに続いて
2013-04-26 13:12:404続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』「誤った情報や風評等に惑わされることなく、冷静に対応さますようお願い申し上げます」と一般市民に呼びかけだ。この発信行為の実質内容―国はクレディビリティがあり、問題はトラストやフェイスを失っている市民の側にあるとの訴え。
2013-04-26 13:13:255続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』2011年7月8日の哲学者、一ノ瀬正樹氏の緊急討論会「震災、原発、そして倫理」での発言「まだphysicalな被害がほとんど顕在化していないにもかかわらず、なぜ々はここまで不安を抱くのだろうか」についての影浦氏の批評。
2013-04-26 13:13:426続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』「このような発言は…危険性のある、あるいは不当な状況が現実に存在してしまっていることという、本来扱われるべき問題を隠蔽し…不安の原因ではなく、不安そのものを問題視します」。トラストを失って不安を抱く市民に問題ありと示唆。
2013-04-26 13:13:597続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』他方、不安の原因に注意し、適切な対応をとることから注意を背けさせる効果をもつ。もう一つの例は環境省の「放射性物質による環境汚染情報サイト」から。「一方、子どもや妊婦の被ばくによる発がんリスクについては、100ミリシーベルト」
2013-04-26 13:14:208続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』「以下の低線量被ばくでは、発がんリスクの明らかな増加を証明することは難しいとされています。しかし、100ミリシーベルト以下の低線量被ばくであっても、住民のみなさまの大きな不安を考慮に入れて、子どもや妊婦に対して優先的に」
2013-04-26 13:14:419続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』「取り組むことが適切です」。この「しかし」は「ですから」とすべきものだし、「住民のみなさまの大きな不安を考慮に入れて」は不適切だと影浦氏は言う。ここでは「専門家」は「本当は対策をとる必要はないのだけれども、不安がる住民が」
2013-04-26 13:15:0010続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』「いるから恩寵としてやってやろう」と述べていることになる。責任は国の側にはなく、不安がる市民の側にあるとする「倒錯した態度がまかり通る状況が作り上げられてしまう」。クレディビリティを回復する措置を取り、それにふさわしい
2013-04-26 13:15:1611続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』言葉を述べるのではなく、トラストできないことに問題があるとして、トラストを強要し(フェイスを求め)ていることになる。このように「信頼の喪失は市民/被害者の側の問題だとする効果をもつようなかたちで発言がなされる状況では」
2013-04-26 13:15:3312続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』「個々の発言の内容をめぐる信頼だけでなく、信頼そのものを支える基盤が社会の中で失われるのも無理はありません」p79。影浦氏はこう結んでいるが私なりの説明を付加。力を行使して問題を起こした側のクレディビリティ喪失を認めず
2013-04-26 13:16:0013続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』市民の側の「不安」に主要な問題があるとすることで、個別のコミュニケーションにおいて信頼喪失が深まるだけでなく、社会状況において広く「信頼の条件」が失われていく結果を招いている。これは科学の倫理性の喪失(第2章)、
2013-04-26 13:16:1614続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』科学情報に関わって社会倫理の観点が必要であることを自覚できないでいること(第3章)と大いに関連している。科学の倫理性の欠落、社会倫理性の自覚の欠如は、力を行使する側が信頼の条件を失った原因を省みることの欠如と不可分。
2013-04-26 13:16:3315続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』説明を足しておくが、「不安をもつな」「トラストをもて」という専門家らは、災害や汚染を起こした側と自覚していないことが多い。だから信頼喪失の責任は感じていない。ただ専門家のクレディビリティが失われたという事実は認知してる。
2013-04-26 13:16:4916続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故…ことば』ところが信頼の場の回復にはクレディビリティの喪失を取り戻すような措置が必要という認識がない。また「科学」「学術」の側として共同の責任があるという認識も欠けている。「不安をとれ」という自らも不信の対象になるという自覚はあるはずだが。
2013-04-26 13:17:2117続々・影浦峡氏『信頼の条件―原発事故をめぐることば』原発災害を起こした側である政府が、健康被害の可能性についてそれはミニマムであり対策をとるほどのものではないという立場をとっている。その状況・文脈で「対策をとる」ことと「不安をなくす」ことが対比されているという前提での話。
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