東海道中膝栗毛 三編 上
- KumanoBonta
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喜多「娘のほうはいちばんこっち側で寝ているようだぞ。あとで行ってこよう。弥次、お前は寝たふりしてな。ちょっとは気を利かせろよ」 弥次「やだ、俺がいく」 喜多「まだ言ってる」 そして二人も布団をかぶった。
2013-06-11 19:36:41夜8時。四つ回りの拍子木の音が枕に響き、台所から聞こえる明日の準備の物音も消え、犬の遠吠えだけが鳴き渡る。 ゴソゴソ 喜多が頃合いを見てそっと起き出し、奥の間を伺った。
2013-06-11 19:36:46すでに行灯は消えて真っ暗。そろそろと忍び込み、暗い中を探りながら娘巫女の布団に潜り込んだ。意外にも、巫女のほうから喜多の手を取って引き寄せてくる。喜多八、こりゃありがたいと鼻を付き合わせて寝入った。 さらに一時間後、弥次郎兵衛がモソモソと起き出す。
2013-06-12 19:44:27弥次「ん、何時だろ。トイレトイレ。あーこりゃ真っ暗で何も見えねえな。トイレはこっちかな」 トイレへ行くふりをして奥の間に入る弥次。喜多に先を越されたとも知らず手前の布団に潜り込み、娘の頬を撫でる。 喜多「ひゃっ!」 弥次「うぇっ、えっ? 喜多八?」
2013-06-12 19:44:33喜多「弥次!? な、何で俺の顔を撫で回す! うげぇ、気っ持ちわるー」 この声で、一緒に寝ていた巫女が目を覚ました。 巫女「しーっ、静かに。娘が目を覚ますじゃない」 弥次/喜多「お、おかあさん!?」
2013-06-12 19:44:39喜多と寝た巫女は、娘ではなく母親のほうだった。喜多は二度ビックリ。蒲原宿に続いてまたもやババアと取り違えてしまったようだ。 慌てて自分の寝間着を抱えると、自分の部屋へ逃げ帰ってしまった。 弥次も同じく部屋へ戻ろうとするが、母巫女にわしっと腕を掴まれた。
2013-06-12 19:44:45巫女「せっかくいらしたんだから楽しんでいきましょうよぉ」 弥次「いえっあの、人違いですから、ボクじゃありませんからっ」アセアセ 巫女「そんなこと言わないの。私達こんなことは商売にはしないけど、少しばかりのお代金でお慰めするのも仕事のうちよ。さささ、いらっしゃあい」
2013-06-12 19:44:51弥次「いえ、え、遠慮しますですっ、おおーい喜多八ぃ」 母巫女「しっ、大きな声出さないの」 弥次「わあああ~ごめんなさい助けてぇ」 弥次は、すがる母巫女を突き倒して逃げた。 いち子ぞと 思うて忍び 喜多八に 口を寄せたる ことぞくやしき
2013-06-12 19:44:57