小松崎拓男氏による『TOKYO POPの終わり』とその反応

ベネチア・ビエンナーレで日本館(田中功起/蔵屋美香)が国別参加部門で特別表彰されたことに関する、小松崎氏の一連のツイートおよびそれに対する会田誠氏/村上隆氏/奈良美智氏/田中功起氏の反応をまとめました。 ◎日本館特別表彰に関する公式プレスリリース http://2013.veneziabiennale-japanpavilion.jp/archives/pdf/20130601ja.pdf ◎ベネチアビエンナーレ日本館(国際交流基金HP) 続きを読む
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小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

ある意味これは、現実界の森羅万象を、宇宙全体を、ただモノだけではない、人間の精神世界までも含めて展示してしまおうということである。だからこの展覧会の冒頭に心理学者ユングの「赤の書」が置かれなければならない理由がわかるのだ。7

2013-06-04 11:00:18
小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

この「赤の書」は中世の祈禱書のような赤い革で装丁された豪華本である。134点にものぼるユング自身の手による幻想的で色彩豊かな挿絵とカリグラフィが収められた手書きの本である。内容は彼自身が見た精神病から来る恐ろしい夢やヴィジョンとその解釈が詳細に書かれたものという。8

2013-06-04 11:00:29
小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

かつてヨーロッパでは「キャビネット」という部屋をつくり、そこに植物や鉱物標本、動物の剥製、あるいはさまざまな地域の珍奇なものなどを収集して展示することが行なわれた。これは「私家版の宇宙」であり、「世界の再現」でもある。富の象徴、学術発祥の揺籃ともなった。ルネサンスの頃である。9

2013-06-04 11:00:45
小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

今回の展覧会はまさにこの「キャビネット」の現代的な再現に他ならない。事実、展示の設計においては、16世紀から17世紀のキャビネットの典型的なレイアウトに何となく従っていると書いてあるではないか。10

2013-06-04 11:00:59
小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

さて、こうするとなぜ大竹伸朗が、というより、大竹伸朗のスクラップブックが展示されなければならない理由が明快にわかるだろう。膨大な量の世界の収集である。実にこの展覧会の在り方にマッチしているというより、体現している。澤田真一も精神世界というところでしかり。11

2013-06-04 11:01:13
小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

Gioniは、「プロのアーティストとマチュア、アウトサイダーやインサイダーの境界が曖昧になっている時に、自分は人類学的な仕方でイメージについての研究をこの展覧会で行う」と言っている。12

2013-06-04 11:01:30
小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

そして彼の意図は「世界がますますイメージのように(実体のないもの、リアリティが喪失)になっていくとき、世界のイメージを作り出すポイントとは何か?」そこを探りたいということだと思うのだが。その意味でも作品=モノではない、内的な世界である、夢や幻覚、ヴィジョンが重要なのだろう。13

2013-06-04 11:02:23
小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

ということで、どの程度こうしたコンセプトが実現できているかは未見なので何とも言えないが、村上さんがいう「表層を微細に見る」は当たらずとも遠からずだが、「ジャンルの融解」はこの展覧会では「争点」になってはいない。むしろ、イメージの初源的な在り様を問題にしているのだろうと思う。14

2013-06-04 11:02:52
小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

また彼の中ではプロとアマの境という意識、あるいはカテゴリーといったものは境界が曖昧になっているという認識はあるにしても明快に残っているだろう。何故なら、この展覧会のタイトル、エンサイクロペディアという語が、ディドロやボルテールの百科全書派を想起できること。15

2013-06-04 11:03:11
小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

あるいはユングが冒頭に提示されること、さらには「キャビネット」などルネッサンスから始まる、学芸の体系、ギリシャの自然学が源流となる西欧的知の体系、その文脈を踏まえているものだろうと思うからだ。つまりしっかりとした枠組みのある展覧会なのだ。16

2013-06-04 11:03:45
小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

それゆえ、東洋人の我々には感得の難しいような、イタリア人ならずとも欧米人には、自分たちの歴史のわくわくするような知の体系の壮大なロマンをこの展覧会には感じるかもしれない。17 以上

2013-06-04 11:04:05
小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

電子時代のやり取りは、ほとんど長考のないリアクションこそ鮮度を保つ唯一の方法なのだが、自身の性向ではなかなか難しい。気の抜けた返答ややり取りになる野暮は許していただくとして、どうしてもひとつだけ必要だと思うことをを応えておきたい。1〜4

2013-06-06 14:20:48
小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

村上さんは今回の田中功起の受賞で何かが変わるなら1995年のそれはどうなんだと言って来た。当時の雑誌の記録によれば千住博が賞を受けたとある。コミッショナーは美術評論家の伊東順二、参加アーティストは千住博、日比野克彦、河口洋一郎、崔在銀。2

2013-06-06 14:21:00
小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

賞というのはご承知のように審査員の顔ぶれで受賞者が決まってくるようなことがある。このときのこの受賞はそうしたひとつの例だと考えている。記憶が曖昧で確認に手間取ってしまったが、実はこのときの国際審査員団の中に高階秀爾が含まれているのだ。3

2013-06-06 14:21:19
小松崎拓男 T.Komatsuzaki @平凡社『TOKYO POPから始まる』 @takuokomart

従ってこのときの受賞はこの高階秀爾の尽力が非常に大きいと私は考えている。だから今回の田中功起の受賞とはその環境が大きく異なるということである。念のため。4 以上

2013-06-06 14:21:38
田中功起 koki tanaka @kktnk

ちょっと遅くなりましたが、小松崎さんが書かれた千住さんの受賞と今回の日本館の受賞との違いが、見当違いなものだったので一応書いておきます。まず千住さんのは個人に与えられたもので、今回は日本館に与えられたものです。 @takuokomart

2013-06-08 06:19:27
田中功起 koki tanaka @kktnk

当時、日本人審査員がいたから受賞できた件というぼくにはどうでもいいように思えることを持ち出すことによって、今回とは違う、書いていますが、そういうことこそがぼくが巻き込んでほしくないところです。なぜならそれって狭い業界内のゴシップ的な話ですよね。 @takuokomart

2013-06-08 06:23:20
田中功起 koki tanaka @kktnk

今回の審査は、おそらく明確なテーマとビエンナーレへの審査員自身による自己批判の意味も込めて、アンゴラ、キプロス+リトアニア、日本が選らばれています。テーマとしていたのはおそらく「協働」です。その上で大国主義的なものや個人が強くでているものなどを @takuokomart

2013-06-08 06:29:29
田中功起 koki tanaka @kktnk

選んでいません。またメイン展のマッシミリアーノと審査員の考え方は異なっていたように感じました。従来の作家性への疑いという点では共通点がありますが。なので彼は日本館を完全にノーマークで見ていませんでした。審査とは常に、審査員たちの態度を示す場でもあり、 @takuokomart

2013-06-08 06:32:35
田中功起 koki tanaka @kktnk

たまたまその方向性に日本館も合致していたわけです。協働や作者性への懐疑などは、前回のドクメンタの流れをくむものでもあるし、ぼくもその影響下にあります。あるいは、それぞれの審査員がいままで何をしてきたのかを調べれば、自ずと見えてきます。 @takuokomart

2013-06-08 06:34:48
田中功起 koki tanaka @kktnk

メイン展の方で受賞した人たちも、同様の基準を経て選ばれており、ぼくは不勉強で知らなかったアーティストもいましたが、彼女でさえもクレアビショップと知り合いだったりしたので(授賞式後のカクテルに来ていました)、推して知るべしという感じです。 @takuokomart

2013-06-08 06:36:31
田中功起 koki tanaka @kktnk

その意味で、「このぼくの活動」が認められたということよりも、審査のテーマに沿っていた+彼ら・彼女たちによる、あのドクメンタ後にどういう活動をあえてベニスの文脈で評価するべきかという態度表明に合致していたということだと思います。 @takuokomart

2013-06-08 06:40:22
田中功起 koki tanaka @kktnk

と少しうがった見方を書いた上で、でも、この日本館はじっさいに「協働」の産物なわけだし、それがストレートに伝わったという事実は素晴らしいことだと思います。何が起きているのかを実際にベニスに来て確かめてください。おそらく、 @takuokomart

2013-06-08 06:43:51
田中功起 koki tanaka @kktnk

最初に日本館を見るとまったく「軽快」でもなく、散漫で、地味で、わかりにくいと感じるかもしれません。でもその後、他館を見て戻ってきて、もう一度見ると、なぜ「ぼくら」がそうした遠回りを選んだのかが見えてくると思います。そしてそのあとには、 @takuokomart

2013-06-08 06:48:47
田中功起 koki tanaka @kktnk

おそらく「ライト・コンセプチュアル・アート」というような名称は使わなくなるでしょう。一度しかお会いしたことがないのにほんとうに生意気ですみません。でもどうしてもこの場で書いておくべきだと感じましたので。 @takuokomart

2013-06-08 06:51:15
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