東海道中膝栗毛 三編 下
- KumanoBonta
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喜多「ぶわーーっくしっ、こんちくしょう風邪ひいた。ぶわっひょいっ」 ブツブツ言いながら着替え、二人は再び歩き始めた。 やがて掛川宿にたどり着く。宿場の入口では、茶屋の売り子が声をあげている。
2013-08-30 19:05:33店員「お食事はいかがですかー。鯵に蒟蒻、干大根のお吸物がございまーす。蛸の煮付もありますよー。どうぞお休みくださーい」 弥次「おい、喜多ちょっと見てみろ。さっきの座頭達があそこで飲んでるぞ」 喜多「あ、みぃーつけた。ウヒ、ちょっとあいつらにイタズラしてやろうぜ。仕返しだ」
2013-08-30 19:05:42ばれないように声色を変えて店に入っていく。 喜多「こんちはー」 店員「いらっしゃいませ」 娘が茶を運んできた。喜多は座頭達のすぐ近くに座った。 店員「お食事はいかがなさいますか」 喜多「まだ腹は減ってないんだ」 座頭達は喜多には気づかず酒を飲んでいる。
2013-08-30 19:05:50犬市「まだ酒がたりねえな。もう少し頼もう」 猿市「そっすね。おーい、酒を二合頼む」 店員「はーい」 犬市「そういやよ、さっきの川の馬鹿野郎達はあれからどうしたかな」 猿市「あー、そういえばどうしたんでしょうね」
2013-08-31 09:45:03猿市が酒をひと口飲み、コップをテーブルに置く。それを喜多八がそっと取り、さっと飲み干してもとの位置に戻した。 猿市「あいつらホント図々しいヤツっすよね。のうのうと背中に乗りやがって。水に落ちたときは、情けない声で『たすけてぇー』だってよ。アハハハ」 犬市「俺もそれは聞こえたぞ」
2013-08-31 09:45:10猿市「きっといつもああやってズルいことばっかり考えるヤツなんすよ。護摩の灰かもしれないっす」 犬市「ああ、ロクなヤツじゃないのは間違いないな。こういう所に来ても食い逃げなんかして、きっとボコボコにされるタイプだ。ああ、おい、酒は飲んでるか」 猿市「おっと忘れてた」
2013-08-31 09:45:18猿市がコップを手に取り飲もうとすると、酒は一滴も残っていない。 猿市「あれ、こぼしちまったか?」 辺りを探るが何もない。 猿市「はて?まあいいや。あらためて飲もう」 また一杯ついでひと口飲み、テーブルに置いたところで喜多がさっと飲む。
2013-08-31 09:45:25犬市「こうやって飲んでるところにあいつらが来たりしてな」 猿市「いやあ、今頃びしょ濡れになった乾かして、まだ向こうでモタモタしてるに違いないっすよ。なんせバカっすから」 犬市「違いねえ。ワハハ」 猿市が再びコップを持ち上げる。また空っぽだ。
2013-08-31 09:45:33猿市「うわあ、また酒がねえ」 犬市「またこぼしたのか」 猿市「だからこぼしてないっす。いったいどういうことだ?」 犬市「お前、そんなこと言って一人で全部飲もうとしてんだろ。ズルいぞ」 二人が口論になっている横で、喜多八は銚子をとり、自分の茶碗に酒をついでそっと置く。
2013-09-01 08:25:06犬市「おいサル、お前のコップを俺によこせ」 犬市は猿市からコップを取り上げ、銚子を手に取り酒をつごうとするが、銚子の中にも酒はない。 犬市「なんだよ、お前一人で全部飲んじまったのか」 猿市「いや飲んでねえし」 犬市「銚子が空っぽじゃねえか。嘘をつくな」
2013-09-01 08:25:12猿市「はあ? おいお姉さん、銚子に酒が入ってねえぞ。どういうことだ」 店員「いえ、そんなはずは…」 猿市「俺達の目が見えねえからって騙そうとしてんだろ。おいっ、責任者を出せ」 店員は慌てて店の主人を呼びに行った。 主人「あの…何か粗相がございましたか」
2013-09-01 08:25:19猿市「さっき二合酒を頼んだはずだ。それがたったの二口とはどういうことだ」 主人「はい、間違いなく二合お出ししています。失礼ですがこぼしてしまったのではないですか?」 猿市「だからこぼしてねえって言ってるだろ! お前それでも商売人か? ここの酒代は払わねえからな!」
2013-09-01 08:25:27主人「いえ、あの、お客様…」 押し問答になりもめているうち、店の中で子守をしていた子供がやって来た。 子供「ねえねえ座頭のおじちゃん、さっきから隣にいるおにいちゃんが、おじちゃん達のお酒を飲んでたよ?」 犬市「隣のおにいちゃん?」
2013-09-01 08:25:33喜多「え? いやっ、な、何を言ってるんだボク、おにいちゃんが飲んでるのはお茶だよ」 喜多八は慌てて茶碗の酒を飲み干した。 主人「ちょっとおにいさん、あんた酒臭いね。それに顔が真っ赤じゃないか」
2013-09-01 08:25:41喜多「やややめてくださいよ。ご主人までそこの子供みたいなこと言いますか。ボクは特異体質でね、茶をたくさん飲むと顔が赤くなってしまうんです。酒に酔った人はクダを巻くが、僕は茶だから酔うと言葉に『ちゃ』がつくんちゃ。酒なんて飲んでないちゃ。信じろちゃ。ちゃははははっ」
2013-09-01 08:25:51猿市「何ごまかそうとしてんだ。子供は正直に見たままを言うからな、お前が犯人だってバレてんだよ。おいっ酒代払えよ」 喜多「ちゃれやれ、何を言ってるんだかちゃっぱり分かりませーん。ちゃっきから飲んでるのは茶だと言ってます~。おちゃけをちゃくふくした覚えなどごちゃいませーん。ちゃはっ」
2013-09-02 18:48:00犬市「何がちゃはっだ。まだしらばっくれる気か。おいご主人、こいつの茶碗を調べてみてくれ」 喜多「やべっ」 慌てて茶碗を隠そうとするが、主人にもぎ取られてしまった。 主人「やっぱり酒じゃないか。おいおにいさん、この人達の酒代は払ってもらうよ」
2013-09-02 18:48:07喜多「ちゃけは飲んでないからちゃけ代は払わん。茶代なら出すよ。いくら」 主人「茶が二合で800円だよ」 喜多「茶を二合も飲むもんか。やなこった」 しつこくゴネる喜多八に、ずっと黙って見ていた弥次も、ついに堪忍袋の尾が切れた。
2013-09-02 18:48:14弥次「あああもういいかげんにしろ!さっさと払っちまえ。お前このままじゃケーサツ行きだぞ!」 弥次に怒鳴られ、喜多八は諦めて800円を払い、店を出る。 猿市「なんなんだよ、あいつら」 犬市「さっきの川越もあいつらの仕業だろ。人の酒を横取りして飲むってどんだけケチな野郎だ」
2013-09-02 18:48:21その話が店を出た喜多八の耳に入ったらしく、わざわざ引き返して反論し始める。 喜多「てめえっ、ケチとはなんだ!かかってこい!」 弥次「やめろバカ、悪いのはこっちだぞ。あぁ座頭さん申し訳ありません、こいつ茶に酔うと気が大きくなっちゃって。さ、ちゃっちゃと行こう。それではちゃいならー」
2013-09-02 18:48:28弥次は喜多の首根っこをつかみ、引きずりながら足早に去る。 喜多「うわーん悔しいよう。今日はさんざんだ。自分で金を出して飲んだのに割に合わねえじゃねーか」 弥次「お前はホントにバカだなぁ」 することも なすこともみな あしくぼや 茶に知られたる 人のしがなさ
2013-09-02 18:48:35やがて秋葉三尺坊の追分に来た。 弥次「脇差の 二尺五寸も なにかせん 三尺坊の 誓いたのめば」 喜多「どういう意味だ? 弥次「二尺五寸もある長くて役に立たん脇差より、三尺坊にお祈りしたほうが安心って意味だ」
2013-09-03 20:06:04【中ぼん】秋葉三尺坊というのは「秋葉三尺坊大権現」のことで、つまり秋葉山を指します。秋葉道の追分は東海道だけではなく中山道などにもありますが、この辺りあまり詳しくないのでAKB信仰に詳しいかたに補足していただければ幸いです。ともちん卒業おめでとう。
2013-09-03 20:06:37@yajikita_douchu 追分は掛川の先の大池橋です。 http://t.co/Qlf4rT87tF 三尺坊はこの山門の先でした。http://t.co/oICPj2UnON
2013-09-03 20:35:55位置情報あるのでこちら使って。 RT @yajikita_douchu 追分は掛川の先の大池橋です。 http://t.co/DUojHUzJe9 三尺坊はこの山門の先 http://t.co/sQkc0J5TbA
2013-09-03 21:08:08