ギリシア語で読むギリシア神話 女神アテナ出生譚 ヘシオドス『神統記』より
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【924行-頭から】"αὐτὸς δ᾽ ἐκ κεφαλῆς γλαυκώπιδα Τριτογένειαν" (続きます)
2013-09-01 12:01:21(承前)"αὐτὸς"は「自らが」。先ほどからの続きなので、主語はゼウスになります。"κεφαλῆς"は"κεφαλή"(頭)の単数属格。全体で「(ゼウス)自らが頭から輝く瞳のトリトゲネイアを」となります。
2013-09-01 12:05:15【925行-恐るべき】"δεινὴν ἐγρεκύδοιμον ἀγέστρατον Ἀτρυτώνην" (続きます)
2013-09-01 12:30:23(承前)"δεινὴν"は"δεινός"(恐るべき)の女性形単数対格。これは前の行で単数対格をとった女性名詞"Τριτογένεια"に係ります。"ἐγρεκύδοιμον"は"ἐγρεκύδοιμος"(戦で鬨の声を上げる)の単数対格です。(続きます)
2013-09-01 12:35:15(承前)"ἀγέστρατον"は"ἀγέστρατος"(将軍を率いる者)の単数対格。"Ἀτρυτώνην"は原義では「疲れを知らない女を」、ホメロスのように固有名詞ととれば「アトリュトーネーを」となります。(続きます)
2013-09-01 12:40:13(承前)"Ἀτρυτώνην"について岩波の廣川訳に倣って「疲れを知らない」と解すると、全体で「恐るべき、鬨の声を上げ、将軍たちの疲れを知らない指導者を」となります。
2013-09-01 12:45:13【926行-戦に喜ぶ女王さま】"πότνιαν, ᾗ κέλαδοί τε ἅδον πόλεμοί τε μάχαι τε," (続きます)
2013-09-01 13:00:15(承前)"πότνιαν"は"πότνια"(女主人・女王)の単数対格。"κέλαδοί"は"κέλαδος"(騒音)の、"πόλεμοί"は"πόλεμος"(戦い)の、"μάχαι"は"μάχη"(戦闘)の複数主格。(続きます)
2013-09-01 13:05:15(承前)三つの主語を受ける述語動詞"ἅδον"は"ἁνδάνω"(喜ばせる)の直説法アオリスト三人称複数能動態。全体で「女王を、騒音と戦いと戦闘に喜ぶ彼女を」となります。
2013-09-01 13:10:143行まとめると…
【924~926行】この3行をまとめると、「ゼウス自らは、頭から、恐るべき輝く瞳のトリトゲネイア、鬨の声を上げ、将軍たちの疲れを知らない指導者にして、女王である彼女を、騒音と戦いと戦闘に喜ぶ彼女を」となります。述語動詞がありませんが、「生んだ」ということでしょう…
2013-09-01 13:15:15これも全体をポストしておきました…
ヘシオドス『神統記』924~926行(ゼウスの頭からアテナ誕生) αὐτὸς δ᾽ ἐκ κεφαλῆς γλαυκώπιδα Τριτογένειαν δεινὴν ἐγρεκύδοιμον ἀγέστρατον (cont) http://t.co/Uk93X2uSMB
2013-09-01 21:46:39結び
【メーティスとアテナの関係は】今日一般に言われるところでは、女神アテナの母はメーティスで、ゼウスに飲み込まれた後その体内でアテナを成長させて武装も整え、育ったために頭痛に見舞われたゼウスが頭をかち割ったら…とされていますが、『神統記』では間の部分が記されていません、なぜか…
2013-09-02 14:30:14(承前)もっとも、メーティスが飲み込まれるくだりでは「アテナを産むことになっていた」云々とされており、両女神の「母娘関係」そのものが否定されている訳ではありません。ただ、ヘシオドスは「飲み込む場面」と「産まれる場面」を分かち、後者で前者に全く触れていない…という訳です。
2013-09-02 14:35:14