ギリシア語で読むギリシア神話 女神アテナ出生譚 ヘシオドス『神統記』より
- Hellenike_tan
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(承前)"ἤμελλεν"は"μέλλω"の直説法未完了過去三人称単数能動態の二重加音型、"τέξεσθαι"は"τίκτω"の不定法未来中動態。"ὑπέρβιον"は"ὑπέρβιος"(凶暴な)の男性形単数対格、"ἦτορ"は「心」。(続きます)
2013-08-31 17:35:14(承前)"ἔχοντα"は"ἔχω"(持つ)の現在分詞能動態男性形単数対格。全体で「産むであろうことを運命づけられていた、凶暴な心を持つ(男)を」となります。
2013-08-31 17:40:14ここで、ゼウス万歳のヘシオドスは、こんなことを歌っています…
【899行-その前に】"ἀλλ᾽ ἄρα μιν Ζεὺς πρόσθεν ἑὴν ἐσκάτθετο νηδύν," (続きます)
2013-08-31 18:00:18(承前)"πρόσθεν"は「~の前に」。"ἑὴν ἐσκάτθετο νηδύν"(自らの腹の中に取り込んだ)は890行と同じ文言です。全体で「しかし彼女をゼウスはその前に自らの腹の中に取り込んだ」となります。「彼女」は、やはりメーティスのことです。
2013-08-31 18:05:15【900行-吉凶占いのため】"ὡς δή οἱ φράσσαιτο θεὰ ἀγαθόν τε κακόν τε." (続きます)
2013-08-31 18:30:16(承前)"φράσσαιτο"は"φράζω"の希求法アオリスト三人称単数中動態。全体で「女神が良いことと悪いこととを示してくれるようにするために」となります。「知恵の女神」を取り込んで「知恵」を我が物とした…というところですね…
2013-08-31 18:35:15…とこのように、運命すら逆手にとって「叡智」を我がものとした我らがゼウスさまでありました―となります。
一応ここまでをまとめたものをポストしておきました。
ヘシオドス『神統記』886~900行(ゼウスとメーティス) Ζεὺς δὲ θεῶν βασιλεὺς πρώτην ἄλοχον θέτο Μῆτιν πλεῖστα τε ἰδυῖαν ἰδὲ θνητῶν (cont) http://t.co/OZX4h50Mqt
2013-09-01 21:37:42この間でゼウスはあちこちで子供をこさえて「おさかんなようす」を見せます。
(その間、アテナへの言及は全くありません)
そして、最終的に、正室であるこの方をめとられます。
【921行-一番最後に】"λοισθοτάτην δ᾽ Ἥρην θαλερὴν ποιήσατ᾽ ἄκοιτιν:" (続きます)
2013-09-01 10:30:18(承前)"λοισθοτάτην"は"λοῖσθος"(最後の)の最上級女性形単数対格。"θαλερὴν"は"θαλερός"の女性形単数対格ですが、この言葉は「丈夫な」「豊かな」「新鮮な」「花の咲く」と様々な意味を持っています。(続きます)
2013-09-01 10:35:14(承前)"ποιήσατ᾽"は"ποιήσατο"("ποιέω"の直説法アオリスト三人称単数中動態加音省略型)のエリジオン型、"ἄκοιτιν"は"ἄκοιτις"(妻)の単数対格。(続きます)
2013-09-01 10:40:14(承前)"θαλερός"について岩波の廣川訳に倣って「花咲く」と解すると、全体で「一番最後に、へーレーを花咲く花嫁とした」となります。…ようやくここに「正室さま」登場です…
2013-09-01 10:45:14【922行-所生の子たち】"ἣ δ᾽ Ἥβην καὶ Ἄρηα καὶ Εἰλείθυιαν ἔτικτε" (続きます)
2013-09-01 11:00:27(承前)冒頭"ἣ"は関係代名詞女性形単数主格、末尾"ἔτικτε"は"τίκτω"(生み出す)の直説法未完了過去三人称単数能動態で、その間は神格の名前の対格です。全体で「ヘーベーとアレースとエイレイテュイアを産んだ彼女は」となります。
2013-09-01 11:05:13【923行-神々と人々の王と】"μιχθεῖσ᾽ ἐν φιλότητι θεῶν βασιλῆι καὶ ἀνδρῶν." (続きます)
2013-09-01 11:30:18(承前)"μιχθεῖσ᾽"は"μίγνυμι"(混ざる)のアオリスト分詞受動態女性形単数主格のエリジオン型、"φιλότητι"は"φιλότης"(情愛)の単数与格。"μιχθεῖσ᾽ ἐν φιλότητι"(情愛のうちに混ぜられた)は大人な婉曲話法で云々…(続きます)
2013-09-01 11:35:153行まとめると
【921~923行】この3行をまとめると、「一番最後に、へーレーを花咲く花嫁とした。神々と人々の王との情愛のうちに交わった彼女は、ヘーベーとアレースとエイレイテュイアを産んだ」となります。
2013-09-01 11:45:14これも全体をポストしておきました…
ヘシオドス『神統記』921~923行(ゼウスとヘラの結婚) λοισθοτάτην δ᾽ Ἥρην θαλερὴν ποιήσατ᾽ ἄκοιτιν: ἣ δ᾽ Ἥβην καὶ Ἄρηα καὶ (cont) http://t.co/t9RcWjXd8V
2013-09-01 21:43:35この「ご成婚」の923行の直後の924行から、「ゼウスの子供たちの出生過程」の一環として、あの場面に入ります。