ギリシア語で読むギリシア神話 女神アテナ出生譚 ヘシオドス『神統記』より
- Hellenike_tan
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つぶやき始めたのは…
8月も今日が最終日となりました。長文をいろいろと引用してきたこの月の終わりに、中の人の趣味で『神統記』の886行以降を取り上げます。戦乱を経て「神々の王」となったゼウスが最初の妃をめとる場面からです―
2013-08-31 11:25:13886行から
最初の妃はメーティス
【886行-最初の妃は】"Ζεὺς δὲ θεῶν βασιλεὺς πρώτην ἄλοχον θέτο Μῆτιν" (続きます)
2013-08-31 11:30:17(承前)"ἄλοχον"は"ἄλοχος"(寝床の相手の女・妻)の単数対格(ちなみに女性名詞です)。"θέτο"は"τίθημι"(置く)の直説法アオリスト三人称単数中動態で「加音省略型」です(以後逐一の言及は省略します)。(続きます)
2013-08-31 11:35:13(承前)"Μῆτιν"は"Μῆτις"(メーティス)の対格。全体で「神々の王ゼウスは、メーティスを最初の妃とした」となります。
2013-08-31 11:40:15【887行ー最高の物知り】"πλεῖστα τε ἰδυῖαν ἰδὲ θνητῶν ἀνθρώπων." (続きます)
2013-08-31 12:01:00(承前)"πλεῖστα"は「最高の・最大の」、"ἰδυῖαν"は"οἶδα"の完了分詞女性形単数対格("οἶδα"は「完了形」なので実質現在分詞)。"θνητῶν"は"θνητός"(死すべき)の複数属格。(続きます)
2013-08-31 12:05:16【886~887行】この2行で「神々の王ゼウスは、死すべき人々の中で最高の物知りであるメーティスを最初の妃とした」となります。
2013-08-31 12:15:14ところがゼウスは…
【888行-ところがそのとき…】"ἀλλ᾽ ὅτε δὴ ἄρ᾽ ἔμελλε θεὰν γλαυκῶπιν Ἀθήνην" (続きます)
2013-08-31 12:30:15(承前)"ἔμελλε"は"μέλλω"(運命づけられる)の直説法未完了過去三人称単数能動態。"θεὰν γλαυκῶπιν Ἀθήνην"は―解説不要でしょう。全体で「しかし輝く瞳の女神アテーネーを運命づけられていたそのとき」となります。
2013-08-31 12:35:14【889行-策でだます】"τέξεσθαι, τότ᾽ ἔπειτα δόλῳ φρένας ἐξαπατήσας" (続きます)
2013-08-31 13:00:23(承前)"τέξεσθαι"は"τίκτω"(生み出す)の不定法未来中動態。"τότ᾽"は"τότε"(そのときに)のエリジオン型で"ἔπειτα"は「そこで」、"δόλῳ"は"δόλος"(えさ・策)の単数与格、"φρένας"は"φρήν"(中心・心)の複数対格。(続きます)
2013-08-31 13:05:15(承前)"ἐξαπατήσας"は"ἐξαπατάω"(だます)のアオリスト分詞男性形単数主格。全体で「生み出そうとすること、するとそのときに策に心をだます(彼が)」となります。
2013-08-31 13:10:13【890行-お腹の中に】"αἱμυλίοισι λόγοισιν ἑὴν ἐσκάτθετο νηδὺν" (続きます)
2013-08-31 13:30:13(承前)"αἱμυλίοισι"は"αἱμύλος"(甘言の)の複数与格、"λόγοισιν"は"λόγος"(言葉)の複数与格。"ἑὴν"は"ἑός"(彼・彼女の)の女性形単数対格詩的表現。(続きます)
2013-08-31 13:35:14(承前)"ἐσκάτθετο"は"κατατίθημι"(据え置く)の直説法アオリスト三人称単数中動態のホメロス風表現で、加音は省略され、"εἰς"の短縮形"ἐσ"が前置されたもの。「中に取り込んだ」といった意味になります。(続きます)
2013-08-31 13:40:13(承前)"νηδὺν"は"νηδύς"(腹)の単数対格。全体で「甘い言葉を用いて自らの腹の中に取り込んだ」となります。
2013-08-31 13:45:14妊娠した奥さんを丸呑みする―これではクロノスの所業(ヘスティアからポセイドンまでの子供たちを次々飲み込んだ)をとやかく言えないような気がしますが…
そして、その裏には…
【891行-ガイアとウーラノス】"Γαίης φραδμοσύνῃσι καὶ Οὐρανοῦ ἀστερόεντος." (続きます)
2013-08-31 14:00:29(承前)"Γαίης"は"Γαῖα"(ガイア)の単数属格、"φραδμοσύνῃσι"は"φραδμοσύνη"(賢明さ・狡猾さ)の複数与格、"Οὐρανοῦ"は"Οὐρανός"(ウーラノス)の属格。(続きます)
2013-08-31 14:05:16(承前)"ἀστερόεντος"は"ἀστερόεις"(星のような)の男性形単数属格。全体で「ガイアと星の輝くウーラノスの入れ知恵で」となります。
2013-08-31 14:10:13