酵素について復習

「酵素ダイエット」や「酵素ジュース」など、実際の酵素とかけ離れたニセ科学が多いので、ごく基本的なことを解説してみました。
科学 酵素 生物学
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飯島明子 @a_iijimaa1
今更知ってるわい、と言われそうだけれど、「酵素ジュース」の話がTLに出て来ているので、酵素について解説してみます。 酵素とは、生物が細胞の中で作り出す「触媒」で、さまざまな生化学反応を押し進める役割を担っています。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 例えば消化酵素。 アミラーゼという酵素はデンプンを麦芽糖に分解します。 マルターゼという酵素は麦芽糖(マルトース)をブドウ糖(グルコース)に分解します。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 ペプシンという酵素はタンパク質の複雑な立体構造を伸ばして途中でちょん切り、ポリペプチドという物質にします。 トリプシンという酵素はそれをさらに小さなペプチドに分解します。 ペプチダーゼという酵素はペプチドをアミノ酸にまで分解します。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 酵素が働くのは消化(分解)だけではありません。 DNAポリメラーゼという酵素は、遺伝子の本体であるDNAを複製する時に働きます。 RNAポリメラーゼという酵素は、遺伝子DNAの持つ情報をRNAという物質にコピーする役割を担っています。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 ATP合成酵素は、我々が取り入れた栄養(糖、脂質、アミノ酸など)を細胞内で分解してエネルギーを得る時に、そのエネルギーを捕捉するATPという分子を作り出します。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 酵素の種類はとてもたくさんあります。なぜなら、それぞれの酵素が触媒できる反応は1種類だけ、だからです。 アミラーゼはデンプンを麦芽糖に分解することはできますが、麦芽糖の分解はできません。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 というのも、アミラーゼにはデンプンが「はまりこむ」凹みのようなものがあってそこでデンプンを「つかまえる」のですが、その凹みには麦芽糖はハマらないからです。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 このように、酵素と反応する相手(基質といいます)は、一対一の関係にあります(酵素の基質特異性)。 したがって、多くの酵素が連動しながら我々の体内で生化学反応を行っているのです。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 ちょうど、工場内で、ある機械は鉄枠を曲げてプレスするだけ、別の機械はビスを打ち込むだけ、と決まっているようなものです。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 ではこれらの酵素は、他から、つまり植物などの持つ酵素を飲んだり食べたりすることで補給できるのでしょうか? 答えは「できない」。 なぜならば、これらの酵素はすべてタンパク質からできているからです。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 タンパク質は、細胞の中で、アミノ酸を原料として作られています。 20種類のアミノ酸のどれを、どこにいくつ配置するか、によってタンパク質の性質は決まります。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 筋肉を作るミオシンやアクチンというタンパク質も、髪の毛を作るケラチンというタンパク質も、抗体として使われるイムノグロブリンというタンパク質も、上 に挙げた多くの酵素も、その働きの違いは構造(形)によって決まります。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 そしてタンパク質の構造は、結局のところ、「どのアミノ酸がどこにいくつ配置され ているか?」によってほぼ決まります。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 そしてこの配置を決定している「設計図」に当たるものが、遺伝子DNAです。 つまり、我々のもつタンパク質(酵素を含む)は、すべて自分の細胞が自前で作り出すもの、なのです。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 「生野菜や果物などの酵素を食べたり飲んだりすることによって、足りなくなった酵素を補給する」という説はトンデモです。 生野菜や果物にも確かに酵素は含まれていますが、これはヒトの持つ酵素ではありません。 どの生物でも酵素はオーダーメイド、自前です。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 しかも酵素はタンパク質ですから、飲み食いしたらまず胃の中で胃酸に出会い、変成します(生の魚を酢で締めたら白く変成しますね?そして二度と元に戻らない。それと同じです)。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 さらに胃の中のペプシンの働きによって寸断され、その後、膵臓から分泌されるトリプシンや、小腸粘膜上に存在するペプチダーゼの働きによってアミノ酸にまで分解されるはずです。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 アミノ酸それ自体は必要なものですが、アミノ酸を効率よく摂るためにはタンパク質を多く含む食品(肉、魚、卵、豆)を摂った方がはるかに良い。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 市販の「酵素ジュース」とやらにどんな成分が入っているのか私は知りませんが、「酵素を摂ると身体に良い」ということはデタラメですので、皆様どうぞご注 意を。
飯島明子 @a_iijimaa1
@a_iijimaa1 また「手作り酵素ジュース」なるものの中にワサワサと細菌やカビが生える、という実験をスズメ8たいちょうグループがやっておられるので、まとめを是非。http://t.co/gGQpBh0J0Z

コメント

後藤寿庵 @juangotoh 2013年10月4日
原酵素とかミラクル・エンザイムとか、なんか「酵素の元になるもの」が体内に一定量あって、酵素が作られるとこれが消費され、いずれなくなってしまうという考えを広めてる人たちがいましてな。だから酵素を生で食べろという話に。
neologcutter @neologcuter 2013年10月4日
素直に質のいいタンパク質を取った方がイイじゃないか…と言う考え。
taka(維新は要らない) @smoketree1 2013年10月5日
体内で一生のうちで作られる酵素の量は決まっているので、歳を取ると外から補給しなくてはならないなどというトンデモな宣伝を見たこともある。よくもそんな大嘘をと思うものの、騙される人もいるから売れるのかと思うと悲しい。
飯島明子 @a_iijimaa1 2013年10月5日
今指摘されて気がついたんだけど、このまとめにくっついている広告が全部怪しいじゃないですか〜〜〜!!! 「飲む酵素”太陽の酵素”」、「えっ、天然の酵素飲料が無料!?」とか、もう、笑ったらいいのか怒ったらいいのか分からないレベルだよこれ!!!
徳叉迦🚤 @dtaksak 2014年1月3日
タンパク質がそのまま体内に吸収できる方法があれば、糖尿病患者はインスリンを経口摂取できてどれだけの人が助かる事やら。 ┐(´ー`)┌ ★
飯島明子 @a_iijimaa1 2014年12月28日
自前じゃない酵素についても触れておいた方が、というご意見を頂戴したので、このコメント欄でちょこっとだけ追加します。 反芻動物(偶蹄目のウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ラクダなど)は第一胃(ルーメン)に微生物を共生させていて、これらの微生物がセルロースを分解するセルラーゼという酵素を分泌し、植物の細胞壁の主成分、セルロースを分解することができます。
飯島明子 @a_iijimaa1 2014年12月28日
セルロースはグルコース(ブドウ糖)が多数結合した有機物で、紙や木綿の繊維はほぼセルロースでできています。我々ヒトほか、哺乳類はみな自前のセルラーゼを持たないので、セルロースを分解できる微生物を消化管内に共生させている動物しか、セルロースを栄養源として利用できません。
飯島明子 @a_iijimaa1 2014年12月28日
反芻動物以外では、ウマは巨大な盲腸の中にセルロースを分解する微生物を共生させています。木の葉を主に食べるテングザルも、消化管の一部が大きく、セルロース分解を担う微生物を共生させています。葉っぱを主に食べる哺乳類の多くが、消化管のどこかでセルロース分解を担う微生物を共生させています(そのため身体が大きい)。
飯島明子 @a_iijimaa1 2014年12月28日
他にもセルロース分解を担う微生物を共生させているのは、例えばシロアリが有名です。シロアリは自前のセルラーゼも持っているのですけれど、共生微生物のセルラーゼも必要なようです。
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