古代ギリシアの「地道な生活のすすめ」 ヘシオドス『仕事と日』の生活訓
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【363行】"καὶ θαμὰ τοῦτ᾽ ἔρδοις, τάχα κεν μέγα καὶ τὸ γένοιτο." "θαμὰ"は希英辞書では"often"という訳語が充てられている―という程度の頻度を意味します。(続きます)
2013-10-12 17:30:16(承前)"ἔρδοις"は"ἔρδω"(行う)の希求法現在二人称単数能動態。"τάχα"は「速やかに」、"γένοιτο"は"γίγνομαι"(生じる)の希求法アオリスト三人称単数中動態。全体で「これをしばしば行えば、速やかにそれは大きくなるだろう」となります。
2013-10-12 17:35:15【362~363行】全体を通してみると、「わずかずつでもこつこつ貯めていけば、やがて大きな財産になる」という意味になります。
2013-10-12 17:40:16ものは家の中に置いておくこと
【364行】"οὐδὲ τό γ᾽ ἐν οἴκῳ κατακείμενον ἀνέρα κήδει." "οὐδὲ"は「~ではない」という意味で、全体は否定文になります。"ἐν οἴκῳ"は「家に」。(続きます)
2013-10-13 10:30:17(承前)"κατακείμενον"は"κατάκειμαι"(据えて置く)の現在分詞中・受動態で、前方に"τό"があるので中性形単数主格又は対格。"ἀνέρα"は"ἀνήρ"(人)の単数対格の異型、"κήδει"は"κήδω"(煩わす)の直説法現在三人称単数能動態。(続きます)
2013-10-13 10:35:15【365行】"οἴκοι βέλτερον εἶναι, ἐπεὶ βλαβερὸν τὸ θύρηφιν." "οἴκοι"は「家に」という意味の副詞。"βέλτερον"は"βελτίων"(よりよい)の異型です。(続きます)
2013-10-13 11:00:15(承前)"βλαβερὸν"は"βλαβερός"(有害な)の中性形単数主格又は対格、"θύρηφιν"は"θύρα"(扉)の属格詩的表現。全体で「家にあることがよりよい、扉のそれは有害だから」となります。
2013-10-13 11:05:16「今あるもの」を食いつぶすと「必要なとき」に難儀する
【366行】"ἐσθλὸν μὲν παρεόντος ἑλέσθαι, πῆμα δὲ θυμῷ" "ἐσθλὸν"は"ἐσθλός"(よい)の中性形単数主格又は対格、"παρεόντος"は"πάρειμι"(傍らにある)の現在分詞能動態中性形単数属格。(続きます)
2013-10-13 11:30:14(承前)"ἑλέσθαι"は"αἱρέω"(とる)の不定法アオリスト中動態。"πῆμα"は「悲惨」で"θυμῷ"は"θυμός"(心)の単数与格。全体で「確かに傍らにあるものを手に取ることはよい、だが心に悲惨が」となります。
2013-10-13 11:35:14【367行】"χρηίζειν ἀπεόντος, ἅ σε φράζεσθαι ἄνωγα." "χρηίζειν"は"χρῄζω"(必要とする)の不定法現在能動態、"ἀπεόντος"は"ἄπειμι"(~がない)の現在分詞能動態中性形単数属格。(続きます)
2013-10-13 12:00:26(承前)"ἅ"は関係代名詞中性形複数主格又は対格、"σε"は二人称代名詞単数対格、"φράζεσθαι"は"φράζω"(示す)の不定法現在中・受動態。"ἄνωγα"は「命令する」という意味で、形式は完了ながら意味は現在です。(続きます)
2013-10-13 12:05:14(承前)全体を直訳すると「必要とするものがないこと、これをお前が示されることを命じる」です。"σε φράζεσθαι"(お前を示されること)を「示された状態にあり続ける」→「心にとどめておく」と解するのが自然でしょう(岩波の松平訳はそういう考え方のようです)。
2013-10-13 12:10:16【366~367行】全体で見ると、「手元にあるものをとるのはよいが、必要とするものがないと心が悲惨になる。このことをよく心にとどめておけ」といった意味になります。
2013-10-13 12:15:15節約と消費のタイミング
【368行】"ἀρχομένου δὲ πίθου καὶ λήγοντος κορέσασθαι," "ἀρχομένου"は"ἄρχω"(始めにする)の現在分詞中・受動態単数属格。"πίθου"は"πίθος"(ワイン甕)の単数属格です。(続きます)
2013-10-13 12:30:22(承前)"λήγοντος"は"λήγω"(止まる・なくなる)の現在分詞中・受動態単数属格、"κορέσασθαι"は"κορέννυμι"(満たす)の不定法アオリスト中動態。全体で「ワイン甕は最初の頃となくなる頃に満足行くよう使うこと」となります。
2013-10-13 12:35:15【369行】"μεσσόθι φείδεσθαι: δειλὴ δ᾽ ἐνὶ πυθμένι φειδώ" "μεσσόθι"は「中間で」、"φείδεσθαι"は"φείδομαι"(使い控える)の不定法現在中・受動態。(続きます)
2013-10-13 13:00:21(承前)"δειλὴ"は"δειλός"(悲惨な)の女性形単数主格。"πυθμένι"は"πυθμήν"(底)の単数与格、"φειδώ"は「節約」。全体で「中間では節約すること。底をついたところでの節約は悲惨だ」となります。
2013-10-13 13:05:14【368~369行】全体で見ると、「ワイン甕は最初の頃となくなる頃に存分に使うこと、中間では節約すること。底をついてからの節約は悲惨だ」となります。
2013-10-13 13:10:14ここまでの原文のまとめ。
ヘシオドス『仕事と日』352~369行 μὴ κακὰ κερδαίνειν: κακὰ κέρδεα ἶσ᾽ ἀάτῃσιν. τὸν φιλέοντα φιλεῖν, καὶ τῷ προσιόντι (cont) http://t.co/aECRmdsZ8Y
2013-10-16 00:27:11その3 雇いや貸し借りの心得