モーサイダー!~Motorcycle Diary~ 外伝 恋する少年のクリスマス~

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IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「回された両腕……背中に感じる巨乳の感触……日原院くんはそんなものが素晴らしいと思うのっ!?」 「べ、べつにそんないかがわしいつもりじゃないよっ!!  つもりじゃないから……折れそうなほど、ボールペン握りしめるの止めてほしいんだけど」 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:03:40
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「………………失礼。  すこし興奮しました」  興奮するようなことだろうかと、ティックはその時はじめて楓の言動に疑問をおぼえたが、きっと女子にしかわからない何かがあるのだろうと思った。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:03:48
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「ともあれ、これではっきりしたわね」 「えっ」 「あなたが三鳥栖さんと二人乗りしたいと言うなら━━プレゼントは『アレ』じゃないかしら?」  琴呂楓(ことろかえで)。16歳。  伊達眼鏡をはずして、三つ編みをほどけば、校内有数の美少女で通るはずの優等生。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:04:03
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(ふふふ……それにしても、今日はおいしいわ。  姉の彼氏━━長身の美形! このシチュは次回のネタに使いましょう……!) #mor_cy_dar

2013-12-21 22:04:29
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 彼女こそは、ティックをモデルにした金髪美少年が、幾人もの同性とドロドロ愛憎劇を繰り広げる小説を、ネットに投稿して好評を博している腐り女子であるが。  今のところ、その正体は校内の誰にもバレていない。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:04:37
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

~~~~~~Motorcycle Diary~~~~~~ #mor_cy_dar

2013-12-21 22:04:45
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 それから数日後。夜の三鳥栖家。 「おにいちゃん、お鍋もういい?  残りは雑炊にしてあしたの朝ご飯にするね」 「ああ、そうだな」  あと数日で二学期も終わろうかという月曜日の夜は、志智にとっても千歳にとっても、平穏で貴重な時間だった。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:04:53
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「えへへ~」 「なんだよ、急に」 「私、月曜日とか火曜日とか好きだなあ。だって、おにいちゃんのアルバイトがないもん」  水炊きの残り汁に米を放り込んでフタをすると、千歳は志智の隣に椅子を動かして、肩をすりつけてきた。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:05:06
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「そりゃあ、俺だって夜遅くまでバイトしなくていいのは楽だけど、こういう日も働いていたら、もっと千歳を楽させてやれるのになって思うよ」 「もう、そんなに無理しちゃダメだよ。  おにいちゃんも私もまだ高校生なんだからね」 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:05:17
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「まあ、そうだけど……さ」  ━━肩越しに、千歳の髪の匂いをかいでいると、すこし頭がぼうっとする。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:05:23
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(ちょっと暖房強かったかな……?)  決して立派とは言えない、それどころかみるからに古くさい石油ファンヒーターを見つめながら、志智は思う。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:05:30
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「あっ、そういえばね」 「ん?」 「あのね、今日クラスで変なことがあったの。  琴呂さんっていう、すっごく頭のいい子がいるんだけどね、休み時間に髪をいじらせてって言ってきてね」 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:05:42
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「ふぅん」  髪をいじる。その表現から、相手が男でないことを確認すると、志智は頬の筋肉から力を抜いた。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:05:49
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「でもねぇ……なんだか変だったんだ。  いいよーって言ったんだけど、何かするわけじゃなくて……メジャーで頭のサイズとか計られちゃった」 「俺にはわからないが、女の髪ってのは頭のサイズとかも関わってくるのか?」 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:05:59
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「うーん……髪の長さはともかく、そういうこともないと思うんだけど……あっ、でも頭の形はみんな違うから、琴呂さん、そういうところまで気にしてたのかも。  やっぱり成績トップの人は違うなあ」 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:06:12
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「……まあ、お前だって成績は悪くないんだからさ。  頭のサイズを計らせてやったかわりに、勉強でも教えてもらえばいいだろ」 「えへへ、そうだね」 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:06:18
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 肩と肩を接点に、志智と千歳はおたがいの体温を感じている。  兄は所在なげに前へ視線を向け。妹は甘えるような上目遣いで兄を見つめている。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:06:28
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(おにいちゃんの横顔、かっこいいなあ……)  時を止める魔法が使えたなら、命尽きるまで乱発してしまうだろうと、いまの千歳には思えた。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:06:37
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「そういえば、千歳」 「えっ、な、なに? おにいちゃん」 「明日ってクリスマスだよな……あれっ、明後日だっけか」 「えっと、明日がイヴだね」 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:06:49
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「そうか。何か欲しいものとかあるか?」 「それって、クリスマスのプレゼントってこと?」 「まあ、そうだな。  今月はほとんど金使わなかったから、すこし手持ちがあるんだ。頑張って探せば、もうちょっといい暖房器具とか━━」 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:07:05
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「時間」  志智の言葉をさえぎるように。  そして、離れていこうとする大切な人へすがりつくように、兄の袖をつかみながら、千歳は言った。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:07:16
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「おにいちゃんの、時間がほしいです」 「時間……?」 「あっ、その、えっと。  半日でいいから、私の言うこと何でも聞いてくれる時間とか……そういうの、ダメかな?」 「ダメもなにも、そんなことでいいのか、俺が申し訳ないくらいだよ」 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:07:27
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「えへへ、やったぁ。  おにいちゃんの時間……本当はイヴがいいけど、終業式のあとでもいい?」 「クリスマスの当日だな。それでいいよ」 「うんっ!」  志智には、千歳がなぜこんなにも嬉しそうなのかわからない。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:07:35
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(でもまあ……喜んでるなら、それでいいや)  理由などいらない。事実があればそれでいい。 「損しないように、今からよく考えておけよ」 「もちろんだよ~」  満足げな志智に、千歳が改めて幸せそうな笑顔を見せたそのとき━━電話が鳴った。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:07:46
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「……誰だろ?」 「ちょっと待ってろ」  志智は固定電話代わりに使っている、070の受話器をとる。 #mor_cy_dar

2013-12-21 22:07:54