丹生谷貴志ツイートまとめ(2014年1月)
三島由紀夫が『個人的な体験』のヒューマニズムの問題を指摘した時大江さんはそれをヒューマニズムという思想に対する批評と受け取ったようだ。しかし三島はヒューマニズム的思想の是非を指摘したのではなくそれと大江的天性としての文体とが矛盾を引き起こすという技術上の問題を指摘していたのだった
2014-01-24 10:18:55或る「作家」を「理解」するためにその遺したありとあらゆる細部を「証拠」として収拾せよという「研究指令」。証拠の上に築かれるプロファイリング・・・結果持ち帰るのは紋切り型辞典めいた「警句」。まるでテレビドラマ『クリミナル・マインド』のように!
2014-01-24 10:34:45風邪で全く集中力を欠き、かといって何もしない気力もないのでロバート・ソウヤー『ゴールデン・フリース』を飛ばし読み。知的コンピュータを絡めた設定はどうも僕には面白くない。パワーズ『ガラテア2』みたいなのすら途中で飽きた。まあ、パワーズはだいたいいつも長過ぎると感じるがそれは別問題。
2014-01-25 20:54:25ヒルデスハイマーの『詐欺師の楽園』をネット古書でさがしたらとんでもない値段になっている。どうやら佐藤亜紀さんとい作家の推薦の余波?で高値の模様。しかしドイツ原書はともかく翻訳があるのは日本語訳だけのようで、日本のドイツ語系の翻訳家の地味な努力にはときどき驚かされる。
2014-01-25 21:00:04ヒルデスハイマーはその『眠れぬ夜の旅−−ティンセット』が或いはベケットのモロイ三部作、特に『マロウン』『名付け得ぬもの』のアイディア源の一つではないかという話があったはず。
2014-01-25 21:04:30・・・佐藤亜紀さんはそのシャム双生児?の貴族とか特殊能力の子供たちが近世ヨーロッパやらを舞台に・・・という設定が僕の触手にないので何となく避けて来てしまった。失礼なのでまずは『天使』入手。大学での小説論の講義も評判らしく、ぼんやりデビュー当時の栗本薫さんを思い出す。これも失礼か。
2014-01-25 21:11:32クローデルの『真昼に分つ』は戯曲と言うより劇詩で、上演台本としては原語・翻訳に関わらずかなり面倒・・・というか、演出と演技によほど周到じゃないと「歯が浮くような」駄舞台になるでしょう。実際、クローデルの他の戯曲と同じく、これにも別作としか見えない「上演ヴァージョン」がある・・・
2014-01-26 19:00:51本棚のゴタゴタから斎藤磯雄著作集とかが出て来ると、しかしその師日夏耿之介大人とともにすでにその鬱金泥のような壮重さが雲海の軽さとユーモアすら帯びて感じられることの不思議さ。旧字旧かな体の持っていた金銀色雪模様の微細歯車のような不思議な軋む論理性を日本語が取り戻すことは難しいか
2014-01-26 20:20:46クローデル『真昼に分つ』の魔的ヒロイン、イゼの台詞を読んでいて何となく『黒蜥蜴』を思い出し・・・さしあたりは江戸川乱歩で・・・・。しかし美輪明宏主演の映画版は何の事情で再販されないのかしら。主題曲が『シャレード』に似過ぎてるからってわけでもないでしょうが・・・
2014-01-26 20:37:54タランティーノが映画『黒蜥蜴』のファン?なのはよく知られているでしょうが、この三島さんの戯曲は意外な人気があるらしく、以前YouTubeでイタリア人の素人?劇団のやった伊語での上演ダイジェストを見たことがある。これがなかなか素敵だった。
2014-01-26 20:42:06「列車は玉のやうな曇り日のなかを走つてゐた。つややかな茜色の茶畑の連なりが、もくもくと蠢くやうに窓外に移つた」・・・この全く無内容の自動作用のような文、要は「空疎な美文」が、しかしむしろその無内容を固持する意志のようなものでいっそ率直で好ましい・・・のは読むこっちの衰弱か?
2014-01-26 23:27:44気になる人も居ないでしょうが一応礼儀で言っておきますと先ほどの引用は三島由紀夫『盗賊』。余りの作り物めいた書き方にこれだけ読み通したことが無かったので・・・まあ、22歳の男が書いたものだし・・・しかし、この驚異的な空疎が変に面白く感じるのはこれまたこちらの衰弱かもしれません。
2014-01-27 01:47:45根が視覚型のせいでしょうか僕は小説についてそこに盛られた?思想性みたいなものに殆ど興味が無く記憶すらしないようで、例えばドストエフスキーのようなものすらその「思想内容」を殆ど覚えていません。「大審問官」の章がどうこうなんて感じもしなかったと思います。
2014-01-27 01:57:33「地球といふ天體は喋りながらまはつてゐる月だつた。喋りつづけてゐるおかげで、人類は地球がもうすつかり冷却して月とかはりのなくなつてゐることに気付かない」・・まあ最初の長篇に遺作の先取りなど関係なく、要は如何にも小洒落て空疎な警句めいた言葉ですが、月ファンの僕としてはいい感じです。
2014-01-27 23:57:14最初と最後に「同じもの」を置くというのは三島さんが露骨にやったことで、『花ざかりの森』のラストが遺作に似ているとか、或いは最晩年に触れた小説がグラックの『暗鬱な美声年』で、これが『盗賊』と似ているとか・・・まあ、これは或いは意図的なトラップかもしれません。何のためかはともかく。
2014-01-28 00:52:43三島さんは堀口大学訳『ドルジェル』の訳文の呪縛から逃れようとして苦労し・・・確かにこの本に関する限り堀口さんの訳文は決定的なものに見えてしまう。「眠りなさいマアオ、僕がそれを望む」でしたか、この決め台詞の生硬な優雅さの見事さ。江口訳では「さあ、マオー、眠りなさい! 眠るんだよ」
2014-01-29 10:15:34・・・ああチェスタトン『新ナポレオン綺譚』の解説は佐藤亜紀さんだったんですね。読んだはずが筆者名を見逃してました。どこぞの中年のオジさんの文章文体みたいに思ってました。失礼!
2014-01-29 10:20:09田中小実昌さんはマクベインなんかを東京の横田基地の理化学研究所?職員だった時に「仕事中に隠れて」訳してたんですね。しかし今読むと「トルコ風呂」なんていう死語かつ禁止用語が出てくるのはご愛嬌。マクベインは全部は切りがないんで加島訳と田中小実昌訳だけは持ってます・・・
2014-01-29 10:38:50都知事選は相変わらず頓狂な幻魔大戦じみた感じですね。いろんな人がいる。そろそろドクター中松・・・って訳にはいかないでしょうがね・・・元長年都民としては、毎度のこと・・・
2014-01-29 10:44:11或る理由でいわゆる「空飛ぶ円盤」を信じているのですが、それはともかくヴォイニッチ文書のようにほぼ本物と分かっている「謎の文書」のようなものでも真面目に参考文献を調べようとなるとたちまち「トンデモ本」に覆われてしまうのは、「円盤ファンが円盤をくだらないものにしてしまう」のと同じです
2014-01-29 16:38:45上田敏訳のラフォルグの詩の冒頭「感情の封鎖。近東行の郵船・・」とあってオヤと思う。僕の世代?は吉田健一訳で「感情の封鎖。東風の襲来・・・」と暗記している。どちらかが誤訳? 原文は「Messageries du Levant !」フランス語が出来る方はこの「異なる訳」をどう取るか。
2014-01-29 21:18:12試験じゃないので解答? 上田敏訳はともあれ直訳に近い。messagerieはメッセンジャーと同語源で「Levant」は「日が昇る方向=東」ですから。吉田訳はというとそれを比喩的にとって「冬を東から運んで来るもの」という西ヨーロッパの季節風、つまり「冬を運ぶ東風」と解したのでしょう
2014-01-29 21:35:34