無名大戦;第一戦闘フェイズ 第七の狭間ログ

第七の狭間は水の都市。沈んだ廃墟に幾重も橋が折り重なる。 立つのは強欲( @noname_greed )、勇気( @fortitude_nonam )のふたつ。
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強欲グリード @noname_greed

思いっきり扉を開け放ったその勢いのまま踏み出す。暗い。足元で変な音がしてすぐに立ち止まった。ばしゃりと耳に聞こえる。水の音。 おお、と声を零す。見渡せば明かりの一つとして灯っていない背の高い廃墟が林立している。背中で扉の崩れる微かな気配。足元は薄く水が張っている。波紋。

2014-02-11 18:19:50
強欲グリード @noname_greed

ぐるりともう一度見渡す。水から顔を出している所を見つけてそこに小走りに。そうしながら様子を伺えば自分以外には何もいない——いや、必ずひとつ。此処にいるはずだ。 傾いだ建物の縁に立つ。水に沈んだ街らしい。足元の更に下は水ばかり。夜のおかげであまり深くは見えない。

2014-02-11 18:26:11
強欲グリード @noname_greed

それでもなんとなく水の中を伺っていればきらりと何かが微弱な光を反射する。月と星の光。しゃがんで膝を抱える。よくよく見てみれば何度がきらきらと煌めく。 「……おお、魚だ」 感動したような驚いたような声を上げる。いるんだ。そのまま、これからの事など忘れたかのように水底を見つめる。

2014-02-11 18:31:43
勇気fortitude @fortitude_nonam

扉は太陽のない空の下へと通じていた。背後には方形の小屋がひとつ。その平らな屋根の上には、巨大な円柱形の、金属でできた容れ物が据え付けられている。小屋と地面は、『今の俺』が見たことのない、継ぎ目のない灰色のざらついた石でできている。 「屋上かな」と、『以前の俺』の記憶が言う。

2014-02-11 20:23:51
勇気fortitude @fortitude_nonam

屋上の縁に寄り、錆びた金網に指をかけて、その隙間から下を伺う。真っ暗な闇が、並び立つ高層建築を飲み込んでいた。その闇のいっそう昏いところが水中にあるのだとは、距離のためか気付かない。温く湿った風が吹く。空には細い月と無数の星。雲はない。これから降るのでなければ、今は雨後だろうか。

2014-02-11 20:24:04
勇気fortitude @fortitude_nonam

昏い。でも、静かだ。ここにはおそらく、『俺たち』以外の何者もないのだろう。まだ知らない水の中に、魚たちの棲む場所があったとしても、それは水面一枚を隔てた異世界なのだ。 すう、と息を吸い込んで、声を上げる。廃墟の隅々まで、届くように。 「――ここにいるよ!」

2014-02-11 20:24:33
強欲グリード @noname_greed

響いたそれに顔を上げた。上の方かな。抱えていた膝を放して立ち上がる。周囲を見渡す。登る場所があるか目で探す。ない。周りの建物は崩れてしまっている。『凝聚』を使えば行けるかもしれないがそもそもどこにいるんだ。口の横に手を当て息を吸い込む。 「悪いちょっと時間かかるかもー!」

2014-02-11 20:38:34
強欲グリード @noname_greed

言っておく。あでも降りて来てくれた方が楽できて良かったかも。それとも水得意じゃないのかな。思いながら上の方へ顔を向ける。風が少しだけ。水よりかは良いか。手を伸ばす。くるりと回せば掌に大きめな透明な玉。空気を『凝聚』すれば密度の下がったそこに風が集まってくる。握ったそれを振り被る。

2014-02-11 20:43:52
強欲グリード @noname_greed

足元に叩き付ける甲高い音。爆発した暴風を形にならない程度に『凝聚』。軽く跳んだ身体の下に。押し上げられるそのまま崩れた建物の屋上に舞い上がる。空中で回転、着地。風の『凝聚』を解いて一息。周囲を確認する。 向かいの屋上にひとり。こちらの方がまだ低い。手を振ってみる。気付くかな。

2014-02-11 20:52:26
勇気fortitude @fortitude_nonam

応答は思いの外、すぐに返った。少し低い場所で、同じ建物ではないようだった。聞こえた方へと足を向けて、もう一度声をかけようとした時、そちらから、何か大きな音がした。 目を瞠る。小柄な人の姿が身軽に跳び上がって、高いところへ降りるのが見えた。

2014-02-11 21:30:13
勇気fortitude @fortitude_nonam

きょろきょろと周囲を見回した彼女が、こちらを見つけて手を振ってくる。こちらも笑って振り返した。表情まで見えるかは、わからないけれど。 挨拶をするのに上からでは失礼だと、耳のピアスをひとつ、左手でぶちりと引きちぎる。耳朶から血が垂れて首を伝い、襟首に染みをつけていく。

2014-02-11 21:30:32
勇気fortitude @fortitude_nonam

血塗れの銀は手の中で形を変え、細い鎖を象った。その一端を支柱に固定して、その外へと身を踊らせる。鎖はじゃらじゃらと音を立てて延び、やがて彼女と目線の高さが変わらなくなると、ぴたりと変化を止めた。片腕を鎖に吊られ壁に背を預けたまま、微笑んで名乗る。 「はじめまして。俺は《勇気》。」

2014-02-11 21:31:10
勇気fortitude @fortitude_nonam

「あなたは、大罪のひとつで、間違いない?」

2014-02-11 21:31:24
強欲グリード @noname_greed

手を振り返される。おお。フランク。ちょっと暗がりで顔まではよく見えないけれどいきなり殴られたりはしなさそうだ。良かった。目線を合わせてくれるのを見てその鎖に目を取られる。なんだろうあれ。見た事無い。 「《勇気》な。うん、間違いない。『強欲』」 問いには淀みなく返した。

2014-02-11 22:11:07
勇気fortitude @fortitude_nonam

「《強欲》、それがきみの背負う罪の名前だね。」 言葉が通じることに安心する。美徳と知るや荒ぶるような苛烈さは持たないらしい。 「空を飛んだように見えたけど、それがあなたの力……罪科? なのかな?」 問いかけながら、彼我の距離を目測する。このまま壁を蹴れば建物を飛び移れるだろうか。

2014-02-11 22:44:40
強欲グリード @noname_greed

罪。欲は罪だと人は言うが。ならあの美徳の、《勇気》の使う言葉は人間に近いそれだろうか。強欲には人間がよくわからない。美徳もそうだとしたらどうしよう。『不安』のようなものが片腕に。人間の経験を『凝聚』して取り入れ始めてからこういう事が多い。 「飛んだ……っていうか」 言葉を探す。

2014-02-11 23:04:47
強欲グリード @noname_greed

ここに憂鬱がいたらいちいち受け答えしなくてもと言うかもしれない。憤怒だったらどうだろう。キレるのかな。それでも強欲は『強欲』だ。向けられたものは受け取らないと『落ち着かない』ような心地になる。 「なんかこう、欲しいなーって思ってきゅってするとああなる?」 全く具体性に欠ける説明。

2014-02-11 23:07:17
強欲グリード @noname_greed

強欲は持ってさえいれば良い。それだけで良い。だから持っているこれが自分の能力だと理解していてもその仕組みがどうなのか全てを知り尽くしているわけではない。『凝聚』という名も『仲間』に付けてもらったものだ。 「あんまし良く分かんない。使えてるしいっかなーって。罪科は罪科らしいけど」

2014-02-11 23:09:40
勇気fortitude @fortitude_nonam

たどたどしい説明に相づちを打つ。 「なるほどね。」 《強欲》は外見に反して、その内面はまったく幼子のようであるらしい。 「呼吸の仕方は説明できない、という感じだね。俺なんかは、勉強と練習で身につけたものだけど。」 そうして漸く生きられた。何度も死に瀕しながら、不屈の心で留まった。

2014-02-12 00:00:49
勇気fortitude @fortitude_nonam

流石に脚力だけで飛び移るのは無理そうな距離だった。右手でもうひとつピアスを毟って、簡易な射出装置を形作る。鎖の先を延ばしてその端を錘状にすると、それを装置に嵌め込んで《強欲》の方へと向ける。バチンと音がして、鎖の錘はそちらの屋上へと飛び込み、床の上をゴロゴロと転がり始めた。

2014-02-12 00:01:00
勇気fortitude @fortitude_nonam

どこか、絡み付いて鎖を固定できる場所を探して、ゴロゴロと。

2014-02-12 00:01:13
強欲グリード @noname_greed

そうだな。呼吸に近いかもしれない。思っているうちにまたその《美徳》が動く。向けられたそれは自分を攻撃する為には見えない。身構えずにいれば錘が飛んできて屋上の上に転がった。重い音。《勇気》ところがるそれとを交互に見る。 周囲を見渡す。鉄の柵があった。駆け寄ってそれに触れる。

2014-02-12 01:33:38
強欲グリード @noname_greed

『凝聚』する。要素を取り出すのでなく鉄をそのまま玉の形に集める。それを握って錘の方に駆け戻って鎖のすぐ傍にしゃがんだ。鎖の上に玉をかざす。掌から転がり落ちそうになった玉は瞬間に槍のようにして鎖を屋上へと縫い止める。 これでいいのかな。しゃがんだまま《勇気》を見る。

2014-02-12 01:36:37
勇気fortitude @fortitude_nonam

探している間に、《強欲》の能力が手助けをしてくれた。しっかりと向こう側に固定されたことを手応えで確かめると、俺は少し高い位置に戻ってから壁を蹴った。跳びながら素早く鎖を縮めて、錘の側へと俺を引っ張らせる。その目論見はうまくいって、俺の体は建物から建物へと移動した。

2014-02-12 09:18:34
勇気fortitude @fortitude_nonam

足での着地はうまくいかずに、体勢を崩したあとはコンクリートの上で何度か転がることになってしまったけれど。せいぜい頭を打たないように受け身をとって、あちこちに擦り傷と打ち傷をこさえるだけですんだのは、むしろ幸運だろうか。 「いったたた……慣れないことをするとダメだね。」

2014-02-12 09:18:40
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