山本七平botまとめ/【臨在感の歴史的裏付け①】なぜ回教徒に神社礼拝を強要したか/浄土教ショック/輪廻転生思想の受容/天然自然に従っていればいい

山本七平著『比較文化論の試み』/4 臨在感の歴史的裏付け/37頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【臨在感の歴史的裏づけ/なぜ回教徒に神社礼拝を強制したか】こういうちがいというのは、一体なにから出てきているのか。<『比較文化論の試み』

2014-02-12 03:08:58
山本七平bot @yamamoto7hei

②これは当然歴史的な伝続から出てきている。 そしてその伝統に基づき、各人各様に臨在感を持ち、それに応ずるものの見方をしている。 これは歴史的に形成されたものだ、 ということを相互に認めませんと、互いに相手が理解できなくなるわけです。

2014-02-12 03:39:08
山本七平bot @yamamoto7hei

③これが逆に出ますと、 自分が臨在感を感じるものに、他人も感じなくてはいけない、 という考え方になります。 これが実に大きな禍根を残した例は、太平洋戦争の時にいくらでもあります

2014-02-12 04:09:01
山本七平bot @yamamoto7hei

④完全に調査した訳でありませんから真偽は…保留しますが、軍はシンガポールに昭南神社を建てた。それはそれでよいのですが驚いた事にマライ人を呼んで頭を下げさせようとした。 下げない人間をなぐったかどうかしたんだろうと思いますけれども、彼らはイスラム教徒ですから絶対やれないんです。

2014-02-12 04:39:30
山本七平bot @yamamoto7hei

神社に対して日本人はなにか臨在感を持つしたがって他人も持たねばならぬ、 という態度になる。 日本人には、 あっちはあっちで別だ、別の伝統があるんだから、向こうは向こうで別の臨在感を持っているんだ、 というようには考えられないんです。

2014-02-12 05:09:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥しかしこれは、そう考えないで済む社会に住んでいたからそうなったんであって、特に日本人が悪いというわけではないんです。

2014-02-12 05:39:12
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦ただ、これからもそういうふうですと、ますます困ることになりますので、 一体この臨在感というのがどういうふうに出てきて、それが日本の場合にどう作用しているかこれをまず、他との連関において検討しなくちゃならない。 まあそういう時代になってきたわけです。

2014-02-12 06:09:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧【浄土教ショック】こういうものを検討する場合に、これはどこの国でもやる方法なんですが、文化ショックということが一つの目標になるわけです。 たとえば、仏教なら仏教というものが伝わってきて、それによってその国の伝統的文化というものがショックを受ける。

2014-02-12 06:39:12
山本七平bot @yamamoto7hei

ショックを受けて、それを取り入れて、変化させてしまうこれを広い意味のグノーシス現象ーー知識化現象ーーと言うんですけれど、日本の場合それがとう行れれたかというと、一番面白い例は浄土宗なんです。

2014-02-12 07:09:03
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩歴史家、専門家は、これを浄土教と言います。 本当の仏教学者は、仏教と分けるんです。 これは仏教ではない浄土教というのは別の宗教だとみた方が理解しやすい、と。 といっても、これは仏教とはなにか、浄土教とはなにかを明確に定義しないといえないことです。

2014-02-12 07:39:16
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪簡単にいえば、定義の仕方で同じとも違うとも言える事ですが、少なくとも浄土教はインド思想とは関係ないと言えると思います。 インド思想とは何か、 といいますとこれまた問題ですが…セム族の思想が一言でいえば一神教だといえるような言い方をすれば 輪廻転生 という考え方でしょう。

2014-02-12 08:09:10
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫一神教はたしかに不思議な思想で、神という概念と一という数字がなぜむすびついたかは、いわば人類史の謎といえる事件です。 元来、この二つは結びつく必然性は全くないのですからーー。 一方、輪廻転生も非常に明確な考え方ですが、やはり不思議な思想です。

2014-02-12 08:39:20
山本七平bot @yamamoto7hei

①【輪廻転生思想の受容】この思想がどこで発生したのか。 インドかイランか。 学者の中に様々な説がありますが、いずれにしましても二千五百年ぐらい昔に、この思想が表われますと、文字通り実に急速に、いわゆるインド・アリアンの世界に広がりました。<『比較文化論の試み』

2014-02-12 09:09:34
山本七平bot @yamamoto7hei

②西はガリヤいまのフランスのドルィド教に、またギリシャ人に広がり、束は全インドに広がり、ついで仏教として更にチベット、中国、インドシナ、日本にまで広がったわけです。

2014-02-12 09:39:11
山本七平bot @yamamoto7hei

③今では輪廻転生など迷信だと簡単に片づける人が多いーー特に松陰の延長線上にある人はそうでしょうがーーと思いますが、よくよく考えてみますと、この思想は、人間をはじめて「個人」として捉えた実に進歩的な思想であることがわかります。

2014-02-12 10:09:10
山本七平bot @yamamoto7hei

④それまで「私」という一個人は、父の子として、また子の父として、一言でいえば先祖から子孫につながる生物学的系譜の中の一単位としてとらえられていたわけです。 いわば血縁による自己規定です。 この捉え方は、自分の前には父があり、自分の後には子があります。

2014-02-12 10:39:19
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤しかし輪廻転生という考え方をしますと、その個人の前には前世があり、個人の現世のあとには後世があるのであって、人間はすべて前世と後世の間にある「等しき一人間」として把握されてしまうのです。 そしてこの個人が、宇宙の秩序にそのままリンクしているわけです。

2014-02-12 11:09:11
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥個人を規定する前提すなわち「人間の条件」はその「前世」であって、父でなく、人間がこの前提のもとに現世で行うことは「後世」に対して責任を負うのであって、子に対して責任を負うわけでありません

2014-02-12 11:39:09
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦【天然自然に従っていればいい】こう規定されますと、人間の規範は、宇宙の秩序と同じものでなくてはなりません。

2014-02-12 12:09:10
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧それはヒンズー教の梵我一如といった神秘主義にもなりますし、カントの「天なる星辰・内なる道徳律」といったような、人間の道徳律と天体運行の秩序は基本的には同じ秩序だといったような考え方にもなります。

2014-02-12 12:39:16
山本七平bot @yamamoto7hei

これは、インド・アリアンの基本的な考え方の一つですが、ヨーロッパには後にキリスト教が入って来て、セム文化の影響を強くうけますから、一見、きわめて変形していますが、この思想の基本は、常にヨーロッパにあります

2014-02-12 13:09:08
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩ただこの思想が日本にきましたとき、すでに相当に変形しておりましたが、その変形されたものが、日本でさらに変ってしまいました。 インド思想の底にありますものは元来は論理学です。

2014-02-12 13:39:15
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪数学ももちろんありまして、いまの数字はインド数字ですが、この論理とか数理といった思考の基本は、非歴史的・非時間的・空間的で、かつ抽象的・合理的だということです。 一言でいえば科学的・分析的であっても、直観的・感覚的ではありません。

2014-02-12 14:09:11
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫したがって、人間の個人がそのまま宇宙の秩序にリンクする存在だということは、いわゆる「自然に順応せよ」「自然に帰れ」といった考え方ではないのですが、日本にきますと、これが 「天然自然に従っていればよい」 という、まことに日本的な考えになってしまうのです。

2014-02-12 14:39:19
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬これがすなわち浄土教的な考え方、その中にはいまのべましたように非常に強く日本の風土、すなわち神道と似たものが入ってきていまして、″自然(じねん)″という言葉が出てくるんです。

2014-02-12 15:09:09