アイヌアニメ第三話『ニタイパカイェ』解説

アイヌ文化研究者・丹菊逸治さん (@itangiku) によるアイヌアニメ第三話『ニタイパカイェ』の解説です。
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丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。さて、ポイヤウンペ、サンプトゥンクル、カムイオトプシ、チウセレスの鎧が同じ形なのは原作通り。「色違い」なのはアニメオリジナル。でないと誰が誰だか分からないので。

2014-04-19 14:17:55
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。実はサンプトゥンクルの鎧は原作では「同じ」とは言われていないが、アニメでは同じにした。これはあとでアエオイナカムイが出てくることともちょっと関係する。

2014-04-19 14:20:28
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。さて、「お前は俺たちの弟だ」と言われてポイヤウンペが腹を立てるのは原作通り。でもなぜ怒るのかアイヌ口承文学初心者にはよく分からないだろう。そこで「他人に言われると腹が立つもんだよな!」という台詞を追加。

2014-04-19 14:22:30
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。アイヌ語脚本では直訳すると「俺の正体を探ったことが腹立たしい!」とした。アイヌの伝統的価値観では相手の素性を知ることは相手を支配することである。逆に素性を知られるのは支配されること。プライドも大いに傷つく。

2014-04-19 14:23:51
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。ポイヤウンペが刀を振るうと衝撃波のようなものが起こる。これはアニメオリジナル。だが、そもそも叙事詩では刀を振るうと炎が飛び散り周囲が燃えたり、暗闇で刀の光だけが見えたり。衝撃波くらい可愛いもんではないか。

2014-04-19 14:25:19
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。「我が名はサンプトゥンクル、甥たちの助太刀にきている」という名乗りも原作通り。もちろん韻文は口語に変えてある。ちょっと間延びしそうなものだが、ここでがらっと音楽が変わる演出はなかなかである。

2014-04-19 14:29:52
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。なお、音楽とSEも札幌のスタジオです。スタジオジョーダウンさんすごいです!

2014-04-19 14:31:01
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。この辺の台詞の流れは概ね原作通り。シヌタプカ勢が名乗れといい、ポイヤウンペは自分の素性を知らないので名乗れない。(ニタイパカイェから「素性を隠せ」といわれているという資料もある)

2014-04-19 14:33:07
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。この話では戦士は名乗って戦うが、正体をあえて知らせる「名乗り」は勇気と傲慢の証。逆にそれができないのは臆病。そう明確に言われることはないが、アニメでは説明のために「臆病者」という台詞を追加。

2014-04-19 14:36:13
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。ポイヤウンペの「取り消せーっ!」もアニメオリジナルの台詞。そもそも「取り消せ」というのは極めて日本語的表現でアイヌ語に訳しにくい。

2014-04-19 14:38:59
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。原作ではここで「ポイヤウンペが足を出すと、サンプトゥンクルが剣と間違えて避ける。そこを刀で切り殺す」という殺陣になっている。一種のフェイントなのだろうが、どうも絵にしにくい。

2014-04-19 14:41:19
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。フェイントの演出は困ったのでピコグラフさんにお任せした。すると「回転して切りつける」という前回の「ルロアイカムイ」での演出を流用してきた。なるほど!そういうのも「あり」だと思う。

2014-04-19 14:41:42
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。ポイヤウンペに切り殺されて倒れたサンプトゥンクルの身体から光が飛び出して上昇する。これが「霊魂」である。「どーん」という音もする。続いてゴワーッと飛んでいく音がする。これが「霊魂の飛び去る音」である。

2014-04-19 14:43:53
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。この辺は解釈がいろいろあるだろうが、叙事詩においては「霊魂が飛び出す音」「霊魂が飛んでいく音」、どちらかの音がすると考えていいのではないか。

2014-04-19 14:46:41
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。霊魂は上空で右方向に水平移動して行く。それを見たカムイオトプシが「大丈夫、魂が飛んだのは東だ」という。西なら復活できない死、東なら復活できる死。なおアニメの中では右が東で左が西になっている。

2014-04-19 14:47:14
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。すると天からオレンジ色の戦士が降りてきて、ポイヤウンペの鎧に光が当たると、そのまま鎧がばらばらに外れ、ポイヤウンペは天にさらわれてしまう。この辺りも原作通り。

2014-04-19 14:48:44
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。原作ではこのままポイヤウンペの視点で語られる。残されたカムイオトプシとチウセレスの会話はアニメオリジナルの説明ゼリフ。アエオイナカムイについて示唆し、ニタイパカイェの名を出す。

2014-04-19 14:49:17
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。ところでこの緑色のおじさん「サンプトゥンクル」は何をしに出て来たのであろうか。いかにもやられそうで、そしてやられる役。こういう「話を進めるためのやられ役」は叙事詩にはつきものである。

2014-04-19 15:09:48
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。こういった「やられ役」は特にポイヤウンペの感情のトリガーになることが多い。

2014-04-19 15:14:20
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。さてポイヤウンペの身体から外され地上に残された鎧が燃えているのは、天から来た者の正体(アエオイナカムイ=アイヌラックル)を暗示するアニメオリジナル演出。

2014-04-19 15:19:33
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。原作ではポイヤウンペの身体から外れた鎧はカムイオトプシが手早く回収する。これはアニメの最後の場面に少し反映されている。

2014-04-19 15:22:27
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。なお、原作では連れて行かれるポイヤウンペが、自分をかついでいる者を見てアエオイナカムイだと気づくことになっているがアニメでは省略。

2014-04-19 15:29:11
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。アエオイナカムイは「伝承神」の意。この地域ではアイヌラックル「人間くさい神」とも呼ばれる。人間に伝承や文化を伝え、人間の味方をする神である。ときにはオキクルミと同一視される。

2014-04-19 15:30:24
丹菊逸治 @itangiku

@itangiku アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。なおアエオイナカムイは、すぐ近くの千歳方言地域ではオイナカムイと呼ばれる。そこではやはりシヌタプカの戦士の味方とされるが、アイヌラックルやオキクルミと同一視はされない。

2014-04-19 15:31:52
丹菊逸治 @itangiku

@itangik アイヌアニメ2。第三話『ニタイパカイェ』ネタバレ解説。原作では「ニタイパカイェ」という名前は直接は語られないが一緒に伝わっている。正確には「ニタイパカイェ・ニタイパラマ」と言い、「木の枝を折り、木の枝を曲げる」というような意味らしい。竜巻の魔神だという。

2014-04-19 15:33:40
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