天上院照樹の憑魔録 1~憑依融合~

@siren_Unknownさんから影響を受けて始まった、もう一人の退魔師の物語。序章に続くお話です。 ひょんなことから蔵に封じられた狗神に憑かれた少年、天上院照樹はどうなってしまうのか……? ※未完の作品ですので、今後もこちらのまとめを更新していきます。 ※TS(性転換)+TF(獣化描写)があるので、苦手な方はご注意を。
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たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

――――――次の瞬間、木製の下駄が黒い水たまりを踏み抜きました。  #憑魔録

2014-07-13 01:56:50
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

触手はぶちりと切れて、道路に黒い粘液が撒き散らされていきます。 間一髪……じゃったかのぉ? 突然の乱入者……天上院照樹に取り付いた狗神は、くくっと短い笑い声を漏らしました。そして彼女は、凛とした態度で告げるのです。 さて……早速で悪いが、主等には消えてもらおうかの? #憑魔録

2014-07-13 02:31:42
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

け、消すって……?今のでもう、終わりじゃないのか……? 照樹君の不安げな声を、全く同じ声が一笑に付してしまいます。 抜かせ。まだ、臭いは消えておらぬじゃろうが。 う、確かに…… 照樹君が鼻を鳴らすまでもなく、その辺りにはどぶを集めたような臭いが立ち込めています。 #憑魔録

2014-07-13 21:37:56
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

どれ、まずは… 首元の鈴が、風もないのに優しい音をゆらゆらと奏で始めます。 暗闇にその音が染み渡っていくにつれ、辺りからは鈴の音以外の音が徐々に消えていきました。いや、消えていったのは音だけではありません。……住宅街なのに、辺りには一切人の姿が見えないのです。 #憑魔録

2014-07-13 21:48:17
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

人払いは、こんなもんでよかろう。のう……そろそろ、殻に閉じこもっとらんと出てきてはどうじゃ? いつの間にか目の前にできていた、道路の道幅程はありそうな黒い水たまりに向かってミコトは挑発じみた言葉を投げかけます。 ぐじゅる… 水たまりが、奇怪な音を立てて膨らみだしました。 #憑魔録

2014-07-13 22:12:46
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

ぐじゅる、ぐじゅる… 膨張していく『それ』の大きさはやがて、少し背が伸びた筈の照樹君でさえ容易く越してしまいます。その様子を固唾を呑み眺めていた照樹君の前に…大きな手のようなものが、にゅっと伸びてきました。 …ひっ!? 思わず、彼女は可愛らしい悲鳴を上げてしまいます。  #憑魔録

2014-07-13 22:25:26
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

くふ、そう怯えんでもよかろ。ほれ、よく見てみぃ。 しかしミコトは全く動じず、おかげで照樹くんもじっとそれを眺めることができます。手のように見えたそれは、よく見てみれば黒い液体でした。粘性を持つ液体が手のような形を形成して、こちらへと伸びてきたのです。 #憑魔録

2014-07-13 22:53:10
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

『手』を伸ばす本体の方にも2つの小さく丸い光が灯り、まるで目玉のようにも見えます。しかし、体に当たる部分はというとドロドロと流れる液体がドーム状に覆っているだけ。どぶのような臭いを放つそれは、丸めた粘土に腕を加えて溶かしただけのような、歪な姿でした。 #憑魔録

2014-07-13 23:06:27
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

ウォォォォォォ!! かろうじてそんな言葉でしか表現できない唸り声を、それはあげます。それに返される言葉は、非常に落ち着いたものでした。 下級ではないか。上級…いや、せいぜい中級と下級の集合体と言ったところかのぉ? 黒い『手』が、今度は明確に照樹君を狙い伸ばされました。  #憑魔録

2014-07-13 23:23:41
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

ほっほ、そうはしゃぐでないわ。 しかし、対するミコトの動きは非常に滑らかなものでした。地面を蹴って空へ跳躍すると、一直線に伸びた黒い腕は地面や壁に衝突し飛び散ります。ぐるりぐるりと回転した体は、そのまま液体の塊の真上へと落下していきました。 すぐに遊んでやるから…の!! #憑魔録

2014-07-13 23:36:27
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

ミコトは回りながら落ちる体の右足だけを伸ばして、踵を正確に液体の塊に命中させます。それは、狗神に憑かれた者の筋力から放たれる強力な蹴り。重力さえも味方にしたそれは、人間ならまず無事ではすまないのでしょうが…… むにん、と予想だにしない柔らかい感触が足に伝わってきました。 #憑魔録

2014-07-13 23:50:46
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

黒い塊は凹んでこそいましたが、全く怯まずに黒い手を照樹君へと伸ばしていきます。何事もなかったかのような様子から、その手は自在に再生をできるのでしょう。 ……っ!! 勿論、そのまま何もしないミコトではありません。右足で『塊』を蹴飛ばして、強引にその腕の猛攻から逃れます。 #憑魔録

2014-07-14 00:07:30
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

受け身を取って体勢を立て直しつつ距離を離すと、再びミコトと『塊』は両者が対峙する姿勢となります。緊張感が漂う、ピリピリとした空気の中。 な、なぁ!!大丈夫なのかよ、これ!!あいつ、今の攻撃全く聞いてないみたいだったぞ!! 恐怖心に駆られて口を開いたのは、照樹君でした。 #憑魔録

2014-07-14 00:20:20
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

…って、うわぁ!? しかし、ミコトには悠長に質問に答えている時間はありませんでした。『塊』が体を震わせたかと思うと、体を覆う粘液の一部が突然目の前に飛んできたのです。体は慌てて跳躍し、再び『塊』の真上を正確に捉えました。しかし、これでは状況はさっきと何も変わりません。  #憑魔録

2014-07-14 00:38:04
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

しかし、それでもミコトは不敵に笑ってみせるのでした。 のう、お主よ……お主は、あれが儂の全力とでも思うておるのか? ……え? 聞き返している間にも照樹くんの体は、蹴りの勢いを付けるために回っていきます。 見せてやろうぞ……狗神の本気を!! ミコトの右足が、炸裂しました。 #憑魔録

2014-07-14 00:47:59
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

グァァァァァ!! 明らかに手応えのある感触と、『塊』のあげる悲鳴のような音。蹴りを食らった場所からは湯気が立ち上っています。 仮にも『神』と呼称される者が……炎術ぐらい、扱えぬわけがなかろう。 照樹君の履く大きな下駄が、赤い炎に包まれて辺りを照らしているのでした。 #憑魔録

2014-07-14 01:02:52
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

す……すげぇ!! 燃え盛る足元を見下ろして、照樹君はそうつぶやきます。 下駄が燃えているのです、人間ならば火傷どころではない話ですが……どうも彼女は、一切熱さを感じないようです。 くふ、最初から全力を出すなど阿呆のすることよ。さて……そろそろとどめと、行こうかの?  #憑魔録

2014-07-14 01:03:44
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

一撃で崩れ落ちた『塊』は、息も絶え絶えといったところでしょうか。斜めに傾いて、ぴくりとも動こうとしません。 安心せい。儂とて鬼ではない、一瞬で終わらせてやろう。 そう言って構えた足を振り下ろそうとしたその時。 ……!? 塊の触手が排水口に向かっている事に気が付きました。 #憑魔録

2014-07-14 01:18:06
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

……うじゅる。 慌てて振り向いた頃には、『それ』は既に排水口から染みだしていました。それも、照樹君達のいるところからはるか遠く。……鈴の音が聞こえず、人がすぐ側を通るような排水口でした。 まずいっ……!! ミコトが跳躍するのとその液体が飛び出すのは、ほぼ同時でした。 #憑魔録

2014-07-14 01:24:27
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

―――――結果から言って、その日人間の中では誰も『塊に』襲われる事はありませんでした。最も近づいた時でさえ、ミコトによって襲われるのをし防がれたのですから。 ぐっ……!!うぁぁっ…… ……その代わりに、ミコトがその身に液体を受け止めることとなりましたが。  #憑魔録

2014-07-14 01:29:58
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

おかげで大きな胸元から腹にかけてがぐっしょりと、黒に染まってしまいました。獣の毛がネバネバとした液体に覆われる感覚は、控えめに言っても気持ちいいものではありません。 しかし……その程度で済むなら、まだよかったのでしょう。 …っ!? なんだ、これ……力が……抜ける…!!  #憑魔録

2014-07-15 21:40:40
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

じゅうじゅうと焼けつくような熱さとともに、照樹君はがくりと膝をついてしまいました。 ぐっ……!!こやつ、霊力を吸いよるのか……!!このっ!! ミコトが状況を理解したところで、状況は好転しません。手で払おうと思っても液体は手にまで絡みついてきて、状況は悪化していくのです。 #憑魔録

2014-07-15 21:44:11
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

その内に、手までだらりと垂れ下がってしまいます。壁に体重を預け、舌を出す照樹君のその姿は、息も絶え絶えになっていました。 力、入らない……あ、そうだ!!さっきの炎で、バーっとやるってのは!? 名案を思いつき、声をあげる照樹君でしたが……ミコトは首を横に振ります。 #憑魔録

2014-07-15 21:55:33
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

霊力を、吸収される量が……思ったよりも、多くての… じゃ、じゃあどうするんだよ!!このままじゃ……!! 言いながらも、彼女はどこかで信じていたのでしょう。この狗神なら、きっと何とかしてくれると。 ……そうじゃの。もう……儂には、無理じゃ。 だから、耳を疑いました。  #憑魔録

2014-07-15 22:15:32
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

は…? もう…儂等は、殺されるしか、ないの。いや、違うか。正確には取り込まれて、奴らの一部となり… なんだよ、それ…ふざけんなっ! 満身創痍の体で、照樹君は叫びます。 俺を勝手にこんな体にして、危険なとこ飛び込んでって!それで最後は死ぬって……!俺を何だと思ってんだ! #憑魔録

2014-07-15 22:33:44