【邪悪の樹】第一交流フェイズ――『智の剣』陣営

『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

『愚鈍』がにたりと笑うのを、『貪欲』は満足そうにニヤリと笑って頷いた。 「思い出してくれて良かったぜ」 それからくるりと背中を向けて。 「おい、『愚鈍』。俺らはこれから大広間に行くから、お前もついて来いよ。話があんだ」 それだけ言って歩き出す。今度は、ゆっくりとした歩調であった。

【物質主義】（キムラヌート） @Evil_Quim

歩き出した『貪欲』を目で追い、『愚鈍』を見上げてにいと笑む。高揚を隠さない瞳。 「さ、行こう『愚鈍』。今日はこれから、うんと面白いことがあるらしいよ？」 に、ともう一度笑いかけて、ひょいと身を翻し『貪欲』の背を追う。一瞬遅れて白衣が揺れる。

『愚鈍』エーイーリー @nowalu

「う、ん……行こ、う」 二人の口調がどこか楽しげなのを感じ自然と自分も心持ちが楽しげになる。 思わず丸めていた背を伸ばしかけたほどだ。 「行こう…………」 自分よりも幾らも小さい二人の背を追って、『愚鈍』も歩を進めることにした。

『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

後ろから二人がついてくることを確認しつつ、廊下を進む。背後に巨大なのが居ると圧迫感があるなァ、などと考えながら歩き続けていれば、次第に大広間の扉が見えてくる。その間、誰か——『色欲』と『醜悪』に会うことはなく。 「あの二人は何処にいんだかなァ…」 面倒臭そうに呟いて、頭を掻く。

『醜悪』カイツール @kaituls

次第に近づいてくる足音。犬の頭がぴくり、と反応を示す。聞き覚えのある足音ばかり。静かにぬいぐるみの体が揺れた。まるで、彼に告げるように。 「……んぅ、」 『醜悪』はゆっくりと体を起こす。寝ている間で乱れた服には気を留めぬまま、目にかかる前髪を撫で、微睡む紫紺をやんわりと開かせた。

『醜悪』カイツール @kaituls

「……ああ、このままだと、狭くしてしまうね……」 ゆったり呟きながら、熊の頭に手を伸ばす。座り込んだままの彼の手に、頭を下げる熊のそれが触れる。ぽんぽん。響く軽い音。それと同時に、巨大なぬいぐるみはゆっくりと小さくなっていく。 ぬいぐるみは地面が近づくと、そっと彼を床に下ろした。

『醜悪』カイツール @kaituls

ぺたりと床に座り込んだ『醜悪』はぬいぐるみが腕の中に収まる程度に小さくなったのを認識するとまた、抱き寄せる。 「……もう、少し、寝れる、かな」 寝ない方がいいだろうか。ぎゅうとぬいぐるみを抱きしめ、考える。微睡むように頭が揺れ、そうして。 ぱたり。その体は床の上で丸くなった。

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

「ピエトロにジョルジュ、アレッシオもいるね。…あとまだ見つかってないのはアンドレアだけかな」 ずるずる、ずるずる、 子供達の亡骸を引きずりながら、色欲は未だ見つかっていない最後の一人を探していた

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

散々引きずられた骸は最早見るに堪えない状態になっていたが、そんな彼らですらもこの道化は愛する事が出来るだろう。 残るはアンドレアと呼ばれた少年ただ一人。色欲が耳をよく澄ましてみれば、小さな小さな足跡が此方から遠ざかって行くのが微かに聞こえた。

【醜悪(ヘスリヒ)】 @Akagachi_atom

大方、こちらが近づいてきた事に気が付いて隠れ場所を変えようとしてるのだろう。 「これは鬼ごっこじゃないのになー」と軽く肩をすくめて、それでも道化はクスリと笑った。 「あっちは…大広間の方だね」 小さな足音が向かっていった先、そこへ向けて、道化は再び歩み始めた。

『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

二人の居そうな場所を考えようとして、思考を止める。どうせ考えても分からない。大広間へ繋がる扉の正面に立ち、『貪欲』はそのノブを引いた。 キィ、と音が立つ。蝶番が軋んだようなその音を耳に入れながら、扉を大きく開け放って大広間を見回した。 大広間にあるのは、

『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

屋敷に住む仲間の数より多い椅子と、長い机。その上には花の生けられた花瓶があり、壁には絵画。床に敷かれた幾何学模様の絨毯を踏み、『貪欲』はある一点で目を留める。 大広間の一角。丸まるようにして床で眠る存在に溜息を吐き、そちらへと足を向け。 「起きろ、『醜悪』」 声をかける。

『醜悪』カイツール @kaituls

声が聞こえた。んんと呻き、『醜悪』の瞼がゆっくりと持ち上げられる。 「……おはよぉ、『貪欲』」 緩慢な動きで体を起こしながら、声の主へ紫紺を緩め、微笑む。相対する『貪欲』の不機嫌そうな顔を気にしないような、呑気な笑みだ。 ゆっくりと、乱れていた服を着直すべく、ぬいぐるみを手離す。

『醜悪』カイツール @kaituls

そうして変わらぬ笑みを浮かべたまま、ゆっくりと服の乱れを直し、『醜悪』はぐるりと周囲を見回す。 「『物質主義』と『愚鈍』も一緒なんだねぇ。何かあったの？」 『貪欲』の後ろに見える二人に、へらりと笑いかけながら、問いは『貪欲』へ。 首を傾げる度に、黒雲のような髪が揺れ、床を撫でた。

『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

「おはよう、寝ぼすけ。寝るなら自室でって、いつも言ってんだろ」 目を覚まし、微笑んだ『醜悪』に、『貪欲』は眉間に皺を寄せ、額を軽く小突く。何度言っても聞かない奴だ。少しだけ湧いた苛立ちを溜息で散らして、懐から手紙を取り出しヒラリと振った。

『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

「手紙が来た。全員揃ったら、中身について話す。……後は『色欲』だけか。面倒くせえな」 言いながら、大広間の入口へと目を向ける。恐らく、『色欲』はいつもの遊びの真っ最中。動き回っているだろうから、探すのは頗る面倒臭い。さてどうするよ、と言わんばかりの視線で『貪欲』は三人を順に見た。

『醜悪』カイツール @kaituls

額を小突かれ、耳朶を打つ聞いたことのある苦言には、「ごめんねぇ」と言い慣れた言葉を呑気な笑みと共に返す。 『貪欲』が振った手紙には、ぱちりと瞬きを落とし。 「手紙。珍しいねぇ」 と、ゆるゆる笑みを深めた。 『色欲』だけという『貪欲』の言葉、尋ねるような視線に、ゆら、と頭を揺らす。

『醜悪』カイツール @kaituls

そうして、傍に控えていた双頭のぬいぐるみを撫でる。目を伏せ、耳を澄ませば、軽い——『色欲』のものでない足音を聴覚が拾った。 「探さずとも、此方に来ているようだよ。アレを追って」 指差す。それの先、開け放たれた扉の前を駆ける子供がいた。いいなあ、欲しいなあ。 「……捕まえていい？」

『醜悪』カイツール @kaituls

欲を滲ませながら、問う。 「アレを此処で捕まえていたら、それを追ってきた『色欲』も此処に間違いなく来るよねぇ。ああ、でも『色欲』の邪魔をしちゃうか、どうだろう」 言い訳のように付け足しながら、『醜悪』は首を傾げた。ぬいぐるみを撫でる手は止まらず、紫紺は子供を追っている。

【物質主義】（キムラヌート） @Evil_Quim

「んー……捕まえとくだけならいいんじゃない？」 強くなる鉄の臭いを拾い、ひょいと小さく肩をすくめる。 『色欲』の美学はよくわからないけれど。逃げ回る小鳥が好みなら、また広間に放せば良いだけだ。

『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

『醜悪』が指差す先を見て、ああ、と納得した。見たこともない子供が一人、大広間へ至る廊下を必死になって走っている。 「好きにしろ」 子供そのものには興味が無い。『色欲』がさっさと集まるならば。真面目に言葉を返している『物質主義』を横目に、『貪欲』はさっさと椅子に座った。

【物質主義】（キムラヌート） @Evil_Quim

欲を滲ませ輝く紫紺に笑いかけ、身体をずらして道を作る。椅子に座った『貪欲』同様、彼も子供に興味はない。黒髪を踏まないように横を抜け、湯を沸かそうと奥に向かう。紅茶の缶を手に取って、思い直して棚に戻した。優雅なチェスでもないだろう、ならば紅茶は似合わない。

【物質主義】（キムラヌート） @Evil_Quim

代わりに冷えたサイダー瓶とクラッカーを取り出し、机のほうに声をかける。 「みんなもサイダーでいいかい？他に欲しいものがあれば持っていくよ」

『醜悪』カイツール @kaituls

「りょーかい」 『物質主義』と『貪欲』の返答に嬉しげに笑う。と同時に大小様々なぬいぐるみがついているマントから二つ、色違いのうさぎのぬいぐるみを引き千切った。 それらをそれぞれ縦に引き裂く。綿が飛び出すのも気にせず、裂いた片方を入れ替えて、いつの間にか指先から出ていた糸で縫った。

『醜悪』カイツール @kaituls

朧げに紫の光を放つその糸は色違いのぬいぐるみを縫いとめて、あっという間に左右で体の色が違ううさぎが二体出来上がった。 「ぼく、歩くの遅いからさ、あの子の動きを止めておいで」 気怠げな声で『醜悪』はうさぎに笑いかける。それに応えるようにうさぎは駆け出し、彼はゆっくりと立ち上がった。