「フラワー、サン、アンド・レイン」#2 ――『ニンジャスレイヤー』二次創作小説

サイバーパンクニンジャ活劇『ニンジャスレイヤー』(@NJSLYR )の二次創作小説です。 第一回(http://togetter.com/li/705461 ) 第二回(このまとめ) 第三回(http://togetter.com/li/734011 )
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うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

サイバーパンクニンジャ活劇『ニンジャスレイヤー』二次創作集『ニンジャ・ラン・ウィズ・ネオサイタマ・ランドスケープ』より。

2014-09-23 23:34:51
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

篠突く雨を避け、四人と一人は倉庫の軒下へ走った。アヤセ・ジャンクションの眠りを知らぬ明かりが、却ってこの倉庫街の闇を深くしている。四人のうち一人がIRC通信機にコードを打ち込むと、中空に張り渡された無線LANに符牒信号が走り、低い音を立てて扉のボルトが開いた。 1

2014-09-23 23:36:19
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

四人のうち、別の一人が扉を開く。倉庫の中から白けたLEDの明かりが漏れだし、彼らの顔を照らした。中で待ち受ける男たちの顔が驚きを浮かべた。「ドーモ」四人とは別の一人がアイサツした。「モロダ・ケンイチです」声の主は姿が見えなかった。 2

2014-09-23 23:39:12
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「ドーモ、モロダ=サン」待ち受ける男たちの一人がアイサツを返した。「ラスティネイルです」赤茶けたニンジャ装束に身を包んだそいつは、テーブルにしていたPVCカーゴケースにカードを置いて立ち上がった。近寄る声の主と名刺を交わした。「ゴテイネイニ」「ソチラコソ」符牒が交わされた。 3

2014-09-23 23:42:08
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「ドーモ、モロダ=サン」待ち受ける男たちのもう一人がアイサツした。「スカウトマンです」迷彩ニンジャ装束に身を包んだそいつが、ラスティネイルにつづいて名刺を差し出した。名刺には名前とともにクロスカタナのエンブレムがプリントされている。「ゴテイネイニ」「ソチラコソ」「イヤーッ!」 4

2014-09-23 23:45:20
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突然のカラテシャウトに、ラスティネイルとスカウトマンが瞬時にカラテ警戒に入る。視界が後退し、四人の男たちが懐から銃器を取り出すのが見えた。彼らは一様に同じスーツを着て、同じくポニーテイルの髪型。うち二人の、振り返った顔、目を覆うサングラスまでが同じだった。 5

2014-09-23 23:48:08
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

そのサングラスの一つを、飛来した金属片が叩き割った。「グワーッ!」男は緑の血を吹き出して倒れた。その奥では、ラスティネイルとスカウトマンが両手を鞭のように振るい、一人は何かを投げ、一人は飛来する何かをつかみとった。KILLINN、KILLINN。金属音が鳴り響く。 6

2014-09-23 23:51:23
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「ドーモ!ラスティネイルです!」ラスティネイルが叫んだ。「ドーモ!」スカウトマンも叫んだ。「スカウトマンです。アイサツせよ、襲撃者=サン!」彼らの叫びに呼応するように、振り返った暗い雨の中に、うっそりと二つの影が姿を表した。 7

2014-09-23 23:54:06
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「ドーモ、ソウカイ・シンジケート=サン、ヨロシサン製薬=サン」影の一つがアイサツした。「マンハントです」「ドーモ」影のもう一つがアイサツした。「デッドリーエッジです」「そして……」背後で声がした。「スレイグラウンドです」次の瞬間、視界が右に720度回転した。 8

2014-09-23 23:57:04
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「フラワー、サン、アンド・レイン」#2

2014-09-23 23:59:11
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

……視点の主の死とともに、折りたたみUNIXのディスプレイが砂嵐に覆われた。「以上が、昨夜の襲撃現場から回収した、弊社社員のサイバネアイ録画データです」サイバーサングラスを着けた恰幅のいい男が言う。側に控えていたボブカットの美女がUNIXを閉じる。……屋形船に一瞬の静寂。 9

2014-09-24 00:01:10
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

そして再び周囲の喧騒が聞こえてくる。浮かれ騒ぐ街の声、屋形船のモーター、断続的に響く花火の破裂音。カキン、シュボッ。オイルライターの音がして、電子的に閉鎖された屋形船に紫煙が漂った。「マンハント、デッドリーエッジ……スレイグラウンド」ブラックヘイズが襲撃者の名を口にした。 10

2014-09-24 00:04:28
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「ご存じですか」恰幅のいい男が尋ねた。「ああ。ご同業の名前だよ。チームを組んでいる。……確かもう一人いたはずだな」この返事を、ブラックヘイズの対面に座るソードモンガーが引き継いだ。「アークボルト。こやつが首領よ。カラテのほどは不明だが、闇のネットワークではつとに高名だ」 11

2014-09-24 00:07:09
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「それは嫌味かね」ブラックヘイズが葉巻をくゆらせながら言った。「謙遜するな」ソードモンガーが答えた。「正統派カラテのマンハント、ハヤ・ヤリでタツジン級ワザマエのデッドリーエッジ、シノビ・ジツのスレイグラウンド。アークボルトだけがワザマエがわからぬ」 12

2014-09-24 00:10:07
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「よほど慎重を期す相手ということか」とブラックヘイズ。「それはこちらで調査中です」恰幅のいい男が言った。「情報が入り次第、お二人には彼らを襲撃、奪われたものを取り返していただきたい」「取り返すべきものはなんだ」ブラックヘイズが葉巻の灰をクリスタルの灰皿にそっと落とした。 13

2014-09-24 00:13:29
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「企業秘密……とのみ申し上げてはシツレイにあたりますね」恰幅のいい男が頷いた。「古代ニンジャスクロールの解析データとそのサンプルです。ニンジャピルの一種ですが、その成分の何種類化が失伝しており、ソウカイヤ=サンから分析を依頼されていたのです」「なるほど」 14

2014-09-24 00:16:21
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

ブラックヘイズが言い終わるや否や、ボブカットの美女がどこからか小型アタッシェケースを取り出し、テーブルに置いた。指紋認証ロックを解除、中身を見せる。屋形船の内部にさんざめく光があふれた。天井から下るシャンデリアのLED光を受けて輝くのは大量のコーベイン。 15

2014-09-24 00:19:17
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「前金です」恰幅のいい男が言った。「二人で分けろと?」ブラックヘイズが尋ねた。「お一人分です。もう一つある」ボブカットの美女がもう一つ小型アタッシェケースを取り出した。二つを前に、四人は沈黙した。 16

2014-09-24 00:22:32
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「聞きたいことがある」ソードモンガーが口を開いた。「相手は我等と同業、つまりあなた方のような取引相手が存在するはず」「その件に関しても調査中です」恰幅のいい男が答えた。「正直に申し上げて、心当たりがありすぎます。あるいは取引相手はこれから探すのかもしれません」「なるほど」 17

2014-09-24 00:25:42
うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

「もうひとつは」と、口を開いたのはブラックヘイズ。「どうして俺たちなのか、だ。あなた方には、我々よりも先に声をかけるべき相手がいるはずだ」「信用問題ですよ」恰幅のいい男が即答した。「今回、私どもヨロシサンは、ソウカイヤ=サンより先に彼らをケジメさせなければなりません」 18

2014-09-24 00:29:52