『すみません、遅くなりま「遅い!!ってきゃあああ!?ど、……どういうことなの!?」『えーっとですね…』元々黒い上着だし目立たないかな、なんて楽観的に考えていたぼくが浅はかでした。困ったように眉を下げて笑うと、特に切羽詰まった様子でもないぼくにシャオは訝しみながらも騒ぐのをやめた。
2014-11-07 23:28:15「へぇ?それで…、偶然お手洗いで出くわした舞台衣装のままのロニカについうっかり興奮のまま熱烈なハグをかましてその様ですと?」『申し訳ありません…血糊ってなかなか落ちないですよね』「はぁ、あんまりにもリアルだから本物かと思っちゃったわ」『あはは……(嘘は、ついてませんからね)』
2014-11-07 23:34:58『シャオ、……シャオ!』呼ばれて初めて主人ははっと顔を上げた。「あら、何かしら?騒々しいわね」『……紅茶、冷めてしまいますよ』「あら……そうね、淹れなおしてくれる?」『構いませんけど、飲まないなら下げましょうか?もう口をつけないまま三回も淹れなおしてます』「そうだったかしら」
2014-11-09 14:33:05『……ぼくがこう申し上げるのは失礼かもしれませんが、なんだか最近ぼーっとしてませんか?なにか悩みでもあるんです?』「そ、そんなことないわよ!!」『っ、?そんな大きな声を出さなくても……』「え、ええ…そうね。失礼……少し自室で休むわ。やっぱり紅茶、下げて頂戴」
2014-11-09 14:58:57パタンと閉まる扉。『淹れ方、間違えたかな…?』主人が残していったカップに口をつける。ぬるくなってはいても茶葉の風味はきちんと出ていて渋みはない。砂糖はひとつ、いつもと同じだ。じゃあいつもと違うのはやっぱり主人の方なのだろう。『お母さんのことで色々悩まれてるんでしょうか』
2014-11-09 15:09:16バタンと大きな音ともに主人が部屋から出てきた。『あ、シャオ!今チーズケーキを焼いてるところなんです。もうすぐ焼き上がりますよ!』なんだか元気がなさそうだったから、と言えばきっと素直に受け取っては貰えないだろうから黙っておこう。「そう……なら、取っておいて。図書館に行ってくるわ」
2014-11-09 17:30:47『えっ、今からです?…あ、ではお送りします!』「いい。一人で行くわ」『ではお迎えは何時頃に「勝手に帰るから大丈夫ー!」言いながらも既に出かけてしまった玄関の扉がパタリと閉まった。タイミングを見計らったようにタイマーが鳴りケーキの焼き上がりを知らせる。辺りに甘いにおいが広がった。
2014-11-09 17:36:11002:少女が少女であったとき
いつもの場所、いつもの席。古い紙とインクのにおいが蔓延るどこか独特な静かな建物の中。ふと読みそびれていた本の存在を思い出して手に取ったのはグリム童話の本だった。文字は連なって言葉になり、言葉は連なって文章になる。そして文章は連なって時に残酷で、時に甘美な御伽の話を紡ぐのだった。
2014-11-09 18:13:17@old_library 「もし、お久しぶりね。この前はどうも、一言お礼が言いたくて」道すがら知った顔を見つけ白の少女が声をかけた。
2014-11-09 18:42:08@applex002 「あら、貴方様は先日の……ご来館くださりありがとうございます。無事に件のお話は解決いたしましたか?」声を掛けられふとそちらを振り返ると、にこやかに受け答えた。
2014-11-09 18:54:36@old_library 「ふふ、解決もなにも、わたしは調べ物をしていただけだから。でも、とても助かったわ。ありがとう」笑顔でそう言いながらも次の瞬間にはどこかそわそわとしながら言い難そうに口を開き「……ねぇ、…その、今日は来てないのかしら?えっと、白いスーツの男の人なんだけど」
2014-11-09 19:31:31@applex002 「ええ、左様でございますね。何に致しましてもお役に立てなのでしたら何よりでございます。……白いスーツのお方、でございますか?失礼ながら、そのお方は貴方様のお知り合いの方でしょうか?」
2014-11-09 20:00:46@old_library 「え!?知り合い、と言えば知り合いだけど別にそんな深い仲というわけでもなくて……ええっと、……いえ、ただ、その…連日ここで顔を合わせていたから今日はいないのかな、と……あなたに聞くようなことじゃなかったわね!ただ少し気になっただけよ、忘れてちょうだい!」
2014-11-09 20:07:09@applex002 少女の様子から他意はないだろうことを察しにこりと笑う。「ふふ、お答えできることでしたらなんでもお聞きくださって構いませんので。ですが……残念ながらわたくしも本日はお見掛けしておりません。…いえ、忘れた方がよろしいのでございますよね。失礼致しました。」
2014-11-09 20:35:05@old_library 「あ、…そう……そうなのね。ええ!全然まったく気にしないで!忘れてくださいな!!」白い肌をほんのり頬を染めるとパタパタと手を振り。「ああ、それと、……レーナ、いつもご苦労さま。明日もくるわ。良い夜を」
2014-11-09 20:55:42@applex002 「……あら。っふふ、お言葉ありがとうございます。貴方様も良い夜をお過ごしくださいませ。」思いがけない言葉にくすりと笑い一礼した。
2014-11-09 21:03:50「あら……来なくていいって言ったのに、クリス」図書館を出て少しすると反対側から歩いてくる見慣れた姿に足を止めた。『いえ、何かあってはと思うととても家でゆっくりはしていられなくて。お邪魔でしたか?』「……いいえ、お腹が空いたわ。今晩のメニューは何?」
2014-11-09 21:09:01『良いサーモンがありましたので、マッシュルームとクリーム煮に』「あなたの作るクリーム煮は嫌いじゃないわ。田舎料理はさすが、お手の物よね」『お褒めにあずかり光栄です』「それからチーズケーキも!ちゃんととってある?」『ホールで残ってますよ』「まぁ、素敵。お腹いっぱい食べられるわね」
2014-11-09 21:13:52『またね、』なんて言ったくせにあれから何度言っても男は図書館には現れなかった。一人の時間。ページを捲る音だけが耳に優しい。丁度、本の半分ほど読み進んだところでぱたりと閉じると小さく息を吐いた。「べ、別に待ってないし」誰に向けて吐いたわけでもない言葉に振り向く者もいない。
2014-11-12 22:10:50