izuminoさんの岡田斗司夫「人生のトリセツ」を使った岩明均作品(『寄生獣』『ヒストリエ』)考察

まとめました。
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岩明均作品(『寄生獣』『ヒストリエ』等)のキャラクター類型(及び作者によるキャラクターの扱い)と岡田斗司夫「人生のトリセツ」

泉信行 @izumino

岡田斗司夫の「人生のトリセツ」 blog.freeex.jp/archives/51227… を使った作品考察はたいてい面白くなるのだけど、最近『寄生獣』についても考えてみて、これもやはり分析に耐える内容になっていて面白い。ヒストリエなども含めて、キャラクターの類型が→

2014-11-05 00:34:06
泉信行 @izumino

→知識欲(学者)、闘争心(軍人)、求道心(職人)、人間愛(王様)でくっきり分かれるように見えるからだろう。で、ヘウレーカもそうだけど岩明作品は明確に「知識欲があるほど偉くて強い」という価値観が前に出ている学者タイプ作品ということになる。→

2014-11-05 00:36:36
泉信行 @izumino

→興味深いのは、普通、学者タイプは実行力のある職人に憧れ、勝つことしか考えない軍人を見下すという理屈になるのだが、どうも岩明作品はどちらに対してもなんか冷淡だ。むしろ後藤のような闘争心の化身を「美しい」と評したり、興味が逆向きになってたりもする。→

2014-11-05 00:39:17
泉信行 @izumino

→アキレウスよりもオデュッセウス!と知恵好みが明確な『ヒストリエ』では、文官であるエウメネスにとって戦争は手段にすぎず、名誉も体育会系ノリでついていけないとやはり両方興味なさげである。ただ、兵器職人への好感度が高めなところはいかにも学者タイプっぽい。→

2014-11-05 00:44:00
泉信行 @izumino

→勝つことは手段、エゴイスティックな主義思想には冷淡(「寄生獣という言葉とガイア理論についてのくだりとか)であるのに対して、最終的にテーマの拠り所になるのが人間愛で、それは岡田理論でいうと実は「知識欲から一番遠くて興味がわかない」とされる性質だったりする。→

2014-11-05 00:48:06
泉信行 @izumino

→岡田理論…というか性格分類ものではユング心理学でもそうなんだけど「自分の対角線にある性質を取り込む」ということが人間の理想型とされるわけで、個人的には物語も「対角線に到達する話ほど完成度が高くなる」と考えているところがある。『寄生獣』はそれでまさに抜群の完成度を誇ると言える。→

2014-11-05 00:51:52
泉信行 @izumino

→ヒストリエはどうかというと、エウメネスの対極にいるアレクサンドロスが、闘争心・名誉欲・モテ・好奇心と総てを備えたスーパーヒーローなのだが、岩明先生のアレクサンドロス分析では「名意欲が勝っていて本人には孤独の匂いがする」とみなしているのがなるほど、対角線に欠如が見られる。→

2014-11-05 00:54:59
泉信行 @izumino

→しかしアレクサンドロスも途中退場する脇役でしかないのが『ヒストリエ』なので、問題は終生のライバルであるアンティゴノスがどう描かれるか。母性を描くのが巧い岩明作品としては、アレクサンドロス死亡までが田宮良子編、vsアンティゴノスが後藤編みたいな別れ方するのかなという予感もするかな

2014-11-05 01:03:05
泉信行 @izumino

あんまり結論みたいなものはないけど性格分類ネタというのはまぁそんなものです

2014-11-05 01:05:09
泉信行 @izumino

ちなみに王様オブオタクの岡田先生としては「モテるために必要なのは物知りっぽく見せることだ!」とめちゃくちゃ持論の実践っぽいことをしていてなるほどと思えるわけですな

2014-11-05 01:07:54
泉信行 @izumino

これは言葉遊びみたいな考え方だけど、「出発点とは対角線にゴールすると物語は引き締まる」という仮説で考えてみるとヒントになるかもしれない。闘争心が強ければ求道へ、知識欲が強ければ人類愛へ、エゴが強ければ実力主義へ、モテたい欲が強ければ知識がゴールになると考えて逆算する

2014-11-05 01:20:26
泉信行 @izumino

すぐに全パターン思いつくわけではないけど、例えば勝負目的の軍人タイプは既存のルールの中で競いたいので無駄にシステムとかぶっ壊したがらない。「弱肉強食だ」とか言い出すのは、とにかく「壊れにくいルールが予め決まっててほしい」願望の裏返しという典型例。→

2014-11-05 01:23:19
泉信行 @izumino

→なのでシステムぶっ壊す系のオチにすると、なんか引き締まった感が出ちゃうんだと思う

2014-11-05 01:23:52
泉信行 @izumino

知識と「モテたい、賞賛されたい」が妙に一致していて成功している漫画といえば『マンガで分かる心療内科』の登場人物見てるとそういえばそうだな感ある

2014-11-05 01:34:09

○関連(というわけでもないのかもしれませんが)
アニメ版『寄生獣 セイの格率』と原作について

泉信行 @izumino

寄生獣のアニメは今後の脚本レベルの心配を差し引いて、現状の演出レベルではすごく信頼して見ていられるがそうではないという意見もあるだろうからそのあたり感想をすり合わせてみたい

2014-10-31 22:31:13
泉信行 @izumino

劇伴もそんなに気にならなくて、岩明均のドライな作風にウェットな音・絵を足しているのがアニメ版の寄生獣なのだ、というこの点を受け入れられるかが好き嫌いの分かれ道で、いやウェットじゃだめだろ、という感想も当然想定できるのだけど、ある意味で寄生獣はウェットな物語だと感じる部分もあるのだ

2014-10-31 22:44:08
泉信行 @izumino

というのは、そもそも音も色もない紙の漫画にウェットな要素なんて本来どこにもない。そのかぎりなくドライなメディアを用いて…というかドライさを突き詰めて生を表現することに特化したのが岩明均の寄生獣だとすると、色も音もついてしまうアニメではハナから「真逆の表現」で生を演出するしかない

2014-10-31 22:46:46
泉信行 @izumino

そのアンビバレンツに立ち向かう形で平松さんのナチュラルな芝居や、ざらつきや情感の強い劇伴、ヒューマンビートボックスの効果音を採用しているとなれば相当意図的な「漫画との対決」なので、コマの間の描かれえぬ行間を埋めるというよりも、行間を裏返して描いているように感じるといったところか

2014-10-31 22:50:24
泉信行 @izumino

逆に、岩明均が諸星大二郎に例えられるくらいに「変な漫画家」扱いされることすらあるというのは、逆説的に普通の日本の漫画は、ドライなメディアを突き詰めるのではなく「ドライさを隠し、あるはずのないウェットを作り出す」様式に向かうものだとも言える。綺麗なトーンとか多彩な写植とか

2014-10-31 22:54:12
泉信行 @izumino

擬似的なウェットさを作り出す様式が漫画で主流だからこそ、漫画からアニメの映像化はある意味で「考えなしに」手癖で作ることもできていたと言えるかもしれない。当然、メディアの誤差が埋まることなんかはないのだが表現の向きはまだ近いからだ。でも寄生獣は逆方向を目指すしかない

2014-10-31 22:57:38
泉信行 @izumino

とまあここまで考えた上で「んなわけあるかよ」という感想があるならどういうものか分析したい

2014-10-31 23:00:40
泉信行 @izumino

しかし「セイの格率」とはほんとによくできたサブタイトルで、格率とは「世間に広まっている基準」という意味だから、つまり何が主流なのか、常識だと思っていたものが実はそうではないのか、比較論で見え方は当然異なるのではないか、という疑いをメディア表現の「生」にも問うているようでもある

2014-10-31 23:04:39
泉信行 @izumino

漫画で表現されたままの「生」は、アニメでも同じように表現できる生であり、基本、同一の普遍的な基準で計っていいものである、というのがまだ疑いのない状態の「格率」と呼べるわけだ

2014-10-31 23:06:39