丹生谷貴志ツイートまとめ(2014年12月)

丹生谷貴志さんの2014年12月のツイートをまとめました。
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nibuya @cbfn

『V.』、ニューヨークの下水に棲む鰐の狩り、主人公が伝説の「ねずみ聖堂」に迷い込み、カトリックに回収したねずみたちの霊を想いながら、「許してくれ」と呟いて鰐を撃つ場面を読み返す。説明して仕舞えば陳腐だが、こんな簡素な感傷を嫌味なく描けるのは今ピンチョンくらいしか思いつけない・・・

2014-12-15 14:36:35
nibuya @cbfn

『V』に「stringを吸う」という場面があり、仏訳も古い邦訳もこれを大麻かマリファナと解して訳しているが新潮訳は文字通り「紐を吸う」と解してその人物のピンチョンらしい奇狂さと理解しているようだ。実際原文を見る限りどちらが間違っているとも言えないところがある。まあ、難しいところ。

2014-12-15 18:27:07
nibuya @cbfn

smoke stringを解しかねていろいろ調べると、ピンチョンの文意とは関係なく、これが養蜂に使う燻煙器の燃焼材のひとつの呼び名であることを知ったりする。蜜蜂はどんな煙でも麻痺するので新聞紙でもいいようですが、欧米では麻紐に油を染み込ませて使うことが多く、そこからそう呼ぶらしい

2014-12-15 18:32:39
nibuya @cbfn

『V』の当該箇所の訳は「紐」でもいいとして、新潮訳のその部分は何故か翻訳の行文にちょっと無理がある。デパートの梱包の紐と理解したためか、原文にはない「包装」という語が入り込んだり・・。それはそれとして、では当時の「梱包用麻紐」に大麻成分があり得たかは調べる価値があるかもしれない。

2014-12-15 18:44:57
nibuya @cbfn

訂正・・・仏訳は厳密には「シガー=細巻き煙草」と訳しているので、ほのめかしているだけで「大麻煙草」とは限定できません。如何に原文が解釈しづらいかの証拠でしょう。しかし五十年代当時のアメリカで「希少品のシガー」とは何だったのかという疑問もわきます。

2014-12-15 19:08:39
nibuya @cbfn

むろん「細巻きシガー」を例えばキューバ産どか想像することも可能で、意味は通ります。それを売る女の子を「pusher」と言っているのがカギでしょうか。単に「売り子」を意味しますがスラング系では「麻薬の小売人」の意味に使われるので・・・まあ、どちらにしろ大した問題ではないのでしょうが

2014-12-15 19:15:12
nibuya @cbfn

因みに同じ頁に出てくるマフィアという名の「女流トンデモ作家」のモデルはアイン・ランドだと言われているようで、多分そうでしょ。ランドは独自ニーチェ主義哲学者という押し出しの小説家で、アメリカでは白人系エリート大学生にやたら読まれたらしいベストセラー作家、驚いたことに邦訳もあります。

2014-12-16 02:26:14
nibuya @cbfn

「もはやスタンダードが存在しない以上良い作家悪い作家という基準はもはやないとメイラーが言ったという話ですが、わたしらの世代ではピンチョンがスタンダードと言ってよく、それに対して自分を判断しなければならないという気がしています」というようなことをデリーロが言っているようです。で?

2014-12-16 13:09:36
nibuya @cbfn

ざっくり言って、今更のことですが、哲学が「哲学者」を称する者と「哲学研究者」を生産するということは、少なくとも「大陸型哲学」にとって、ペーパードライバーがペーパードライバーを教育・生産することに似て、矛盾した不毛でしょう・・・とそれこそ今更急にイライラして来る訳で・・・

2014-12-16 15:35:19
nibuya @cbfn

エーコ『フーコーの振子』主人公の生の中心=失われた記憶は少年時の野原での号令トランペット吹奏の瞬間の陶酔だった。この顛末の平凡さは如何にも拍子抜けだが、思えばフロイト風の分析とは別に誰でも、例えば誰もこない置き去りの駅で待ち続けた記憶といった単純なものを反復して生きたりするのだ。

2014-12-17 10:18:30
nibuya @cbfn

・・・下らない話。略語猖獗は慣れてきましたが例えば「イルミ」がイルミネーションの略語だとはわかっていても、字面が「ミサイル」に似ているので、例えば「クリスマスに見たいミサイル六選」てな記事を錯覚してしまう。想像するとこれはこれでチャイナ・ミエヴィルか何かみたいで楽しいけど。

2014-12-17 12:12:22
nibuya @cbfn

カッセル・・・これはまったく批判でも慨嘆でもなく、まあ実に見事に美術はウォーホルの「予言」を実現していると感心、「世界はナッシングだがアーチストはナッシングに果てしなくナッシングを重ねて無償の消費として金を儲ける」、美術が誰も傷つけない復讐になりつつあるのならそれはそれで素敵!

2014-12-17 12:22:43
nibuya @cbfn

「大洪水の後、一匹の野兎がツリガネ草に・・・」に始まるランボーの詩は美しいが、例えば今年の世界短編映画集やら日本アニメ短編集みたいなのを見るとあらかたがこの詩のアポカリプス風景のヴァリエーションのようで、そうなるとこの詩もLED仕込みのコピーライトに変わる。名文句の運命でしょう。

2014-12-17 12:38:18
nibuya @cbfn

ああデリダの『動物、主権』が訳されたんですね。原文はいつもながらデリダのゼミの講座ノートで、崇拝者-学生に囲まれての和気藹々の雰囲気、真面目なデリダさんはその雰囲気への軽い苦笑も忘れずに講座を進めているようですが、さて訳文はどうなってるのか。しばらく「哲学動物」が流行るのでしょう

2014-12-17 12:46:36
nibuya @cbfn

仏訳『V』で意味がはっきりしない数行、邦訳を見るとどうやらかなりきわどい「猥語」の箇所、仏訳女性は理解できなかったか敢えて直訳で意味を避けたか、ともかく不正確なのだが、気になったのはむしろ邦訳の猥語のだらしない薄汚さで、使い慣れない猥語を使う訳者の育ちの良さが別の意味で災いしてる

2014-12-19 10:04:22
nibuya @cbfn

妙な言い方だが英語、特にピンチョンの「猥語」は或る意味「洗練されて」いる。しかし邦訳は米語に見合う「洗練された猥語」に該当するものを見出せなかったのか、あらかた「品格」に欠ける。そのせいで邦訳は原語以上に「下品に」なる傾向がある。まあ上品であればいいなんで意味じゃありませんがね。

2014-12-19 10:26:14
nibuya @cbfn

・・・ああ、ちなみに邦訳は旧訳、新訳両方を見て言ってます。

2014-12-19 10:30:05
nibuya @cbfn

さっき言った『V』の同じ原文がどれだけ違うものになるか、まずは仏訳を直訳してみます--「他の娘にはそもそも、彼女をこの街角のアーチのピカピカ電飾よりも高い場所へ飛び出させてくれる程度の資産はあるのだ」まあたぶんこれは仏訳者の誤訳なんでしょうが、まあこんな具合です。次に・・・

2014-12-19 23:07:30
nibuya @cbfn

旧訳--「合い棒で突き上げてやればあの電球のアーチよりも高く彼女はとび上がるだろう」・・・しかしこの「合い棒」ってなんなのか、よくわかりませんがかなり意味が違った・・・というか何だか原文が同じ文らしいという気配しかありません。そして新訳・・・

2014-12-19 23:21:31
nibuya @cbfn

「もし本物のスファチム野郎に出会ったら、この子は、思いっきり妊娠しちゃうかもしれない」。とても同じ原文を訳したものには思えないものなる。原文は、「The other could knock her up higher than those arches of light.」さて?

2014-12-19 23:26:31
nibuya @cbfn

まあ原文の前後を示さないでこの文の翻訳をどうこう言うのは意味ないですが、ともかく同じ文がこれだけ違うものになる。僕がどう思うか・・・は難しいところで、じつはこのどの訳も強弱いろいろ引っかかりがあってどれが一番原文の「文意」に近いのか決められないというのが今現在です。

2014-12-19 23:38:47
nibuya @cbfn

新訳は「knock up」という熟語が米俗語で「妊娠させる」という意味を持つことに注目して「彼女を妊娠させる」とした訳で一番読み込んでいるように見えますが、結果「アーチより高く」という副詞句を邪魔として「思いっきり〜」という副詞の修辞的言い回しとして解消しているのが引っかかる。

2014-12-20 00:25:00
nibuya @cbfn

旧訳は「合い棒で突き上げる」という言い方が僕には意味がわからない。こういう隠語的言い回しがあるのかもしれませんが・・結局僕なら「オレ以外のもっとまともな奴なら彼女をこの電飾よりずっと高いところへ舞い上がらせてやることもできもしようが」程度の曖昧な妥協訳にするでしょうか。自信なし。

2014-12-20 00:33:27
nibuya @cbfn

こう訳せば、原文の多少の性的含みを残した上に、貧しいイタリア人地区の少女の出口なしの生き方への主人公プロフェインの「悲しい気分」の意味も残せるような気もします。仏訳の主語の誤読を切り取って文意を多少生かしてみることもできます・・・が・・・

2014-12-20 00:38:02
nibuya @cbfn

まあ、こんな細部の誤訳どうこうはどうでもいいとして、ともかく気になるのはスラングや猥語を使う日本語文の熟れの悪さ、育ちのいい優等生が無理に慣れない「若者下世話言葉」やら俗語やらポルノ風言い回しを真似してるような無様感で、これは訳者のせいというより現代日本語書き言葉の問題でしょうか

2014-12-20 07:25:23