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uchida_kawasaki
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近時,「放射能おばけ」という言葉が私のTLにしばしば登場するようになったので,気になって調べてみたところ,小野さんという医学者の方@masahironoが書かれた一連の論稿「放射能恐怖という民主政治の毒」で用いられている概念であることが分かりました。
2015-01-19 20:43:38
氏の一連の論稿はこちら((1)~(8),未完) (1)→bylines.news.yahoo.co.jp/onomasahiro/20… (2)→bylines.news.yahoo.co.jp/onomasahiro/20… (3)→bylines.news.yahoo.co.jp/onomasahiro/20… ※以下,(8)までリンクが張られています。
2015-01-19 20:44:07
私はいままで,ツイッター上で他の学者や専門家の皆さんと何度かやりとりをした経験があります。その過程で,少なからぬ学者や専門家が,真摯な議論の姿勢自体を有していないことに気づきました。
2015-01-19 20:44:31
これに対し,小野さんのこれらの論稿は真摯に記述されており,誠実に考える方であることが分かります。
2015-01-19 20:45:00
何よりも,今回の事故に対する社会的対応という困難な問題に対し,正面から実名で考えるところを説いておられる姿勢は尊敬に値します。
2015-01-19 20:45:06
私見では,氏の論理のいくつかには同意できますが,少なくとも氏の説く「放射能おばけ」は,説得力を持って示されているとは言えないとの結論に達しました。
2015-01-19 20:45:35
そこで,以下では,主に上記論説の(1)を使って,私の事実認識と氏の事実認識のどこに違いがあるのか,結論を導く論理や評価にどのような違いがあるのかを分析してみます。以下で「 」でくくってあるのは氏の論稿からの引用,「→」から始まるのは私のツイートです。
2015-01-19 20:46:22
「私が言いたいのは、現実がこれほど混迷していて、また科学が唯一の解答を与える存在ではない以上、社会で関係する人たちが集まって知恵を絞り、科学者の助けを借りながら議論をして、幅広い合意をつくるという喫緊の必要があるということだ。」
2015-01-19 20:46:58
→幅広い合意を作る必要があるという点はその通りだと思います。また,科学者ないし専門家なくして現代社会のシステムはそもそも機能しませんから,科学者ないし専門家が,議論の前提となる事実を分かる範囲で明確化することも必要です。
2015-01-19 20:47:32
しかしその前に,ここにいう「科学者」とは具体的に誰を指すのでしょうか。放射線が身体に及ぼす影響については,科学者の中でも見解が分かれているのではないでしょうか。
2015-01-19 20:49:00
科学者や専門家の中で見解が分かれている場合,その集団の中できちんと議論して,「科学者・専門家の中での一般的見解はこれだ」と指し示せるようなシステムが必要なはずです。そうでなければ,より一層の混乱が生じることは明らかでしょう。
2015-01-19 20:49:59
そのようなシステムがないとすれば,ある特定の科学者の述べていることの合理性を一般人が判断することは困難です。
2015-01-19 20:51:00
また,科学者もまた自然人(生身の体を持った人間のこと。法人の対概念)である以上,その判断には様々なバイアスがかかるのが,むしろ通常かつ自然です。
2015-01-19 20:51:18
このことからすれば,「科学は、本質的に権力・政治・社会といったものに全くの無関心である」(氏の論稿(7)からの引用)との抽象論を持ってきても意味がありません。
2015-01-19 20:52:48
私見では,問題は科学を用いる科学者にあります。理念だけを述べるのではなく,現実に社会に存在している科学者に視点を当てなければ問題を見誤ります。氏のこの文章に続けて,私見に沿って現状を述べれば,次のようになります。
2015-01-19 20:53:06
「科学は、本質的に権力・政治・社会といったものに全くの無関心である」(以下は私見)が,残念ながら,少なからぬ科学者は,権力,金,地位,名誉に多大の関心がある。(続)
2015-01-19 20:53:35
(承前)現在,多くの自然科学系の研究を進めるには,多額の金銭と研究ポストが必要であることに照らせば,このことは容易に推察できる。また,人と離れて科学が存在し得ない以上,科学を「本質的に権力・政治・社会といったものに全くの無関心である」と性質づけること自体が無意味である。
2015-01-19 20:53:51
従って,まず必要なのは,専門家集団自体が自律性を持ったシステムを構築すること,及び,社会全体で専門家のバイアスをできるだけ排除するシステムを検討し,専門家集団と共同して構築することです。
2015-01-19 20:56:33
「福島原発事故の規模は大きく、 多額の国民の税金と多くの労働力を投入して、何十年という時間をかけて解決しなければならない。つまりすべての国民が、直接・間接に福島の放射線問題に関わらざるをえない。放射線問題は科学的な問題でありながら、科学をこえて国政の重大課題である。」
2015-01-19 20:56:55
→氏のこの指摘も,放射線問題は国政の重要課題であるという基本認識は共通しているのですが,私見では,重要な点が抜け落ちています。
2015-01-19 20:57:28
なぜ,氏は直接の加害者たる東京電力の費用に言及されないのでしょうか。法的観点から見れば,原子力損害賠償法に基づき,東京電力は無過失で損害の賠償責任を負います。これが出発点のはずであり,法治国家のタテマエからすれば,国民の税金と労働力を投入する必要はありません。
2015-01-19 20:58:16
もちろん現実には,国家が関与しなければ問題は解決しないことは言うまでもありませんが,氏自身が別の箇所で書いておられるように,国も企業も国民も等しく法令を遵守しなければならないのが原則です。
2015-01-19 20:58:33
とすれば,まず,東京電力にできる限りの責任をとらせるべきですし,税金を投与するとしても,その根拠法令を明確にしつつ,最終的には東京電力に求償できるシステムにしておかなければならないはずですが,現実は,果たしてそのようになっているでしょうか。
2015-01-19 20:58:57