通勤電車

PoKo @Poko8_m

【通勤電車51】彼女＊side スマホがヴヴヴッって震える。 自分の用事がある時は返信早いんだよねと思いながらスマホの画面を見る。相変わらずの絵文字もない文面。 でも、それが侯くんらしい。 明日、オカンに会いに行った帰りにデートするで。おしゃれして来いよ。 「デート？」

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【通勤電車52】彼女＊side え？いきなり、どうしたんだろう。 きっと、どうもしてないよね。 時々ある気まぐれ。そう思っても、何着て行こうかな…ってウキウキしてる私が居て。 さっきまで、忠義くんにドキドキしていたはずなのに。 pic.twitter.com/LRU6nyyEXD

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【通勤電車53】侯隆＊side 「あいつ、どんな顔して読んだんかな？」 既読を確認して、デートするでとか、自分で書いたのに、めっちゃ、恥ずかしなる。 いつもと違うちょっとだけ、いい店行って、飯食うだけやけど。 そんで…それから… 「ええ加減、ちゃんと、せなあかんよな…」

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【通勤電車54】侯隆＊side そんなことを思いながら、ベッドに横たわって、スマホを見上げる。 気付いたら、そのまま寝て居て、朝になってた。 「ねぇ、侯くん…。人を誘っておいて、いつまで寝てるの？」 と言うあいつの不機嫌な声に起こされる。 「何入って来てんねん、お前！」

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【通勤電車55】侯隆＊side 「ちゃんとインターフォンも鳴らしたんだよ？携帯に電話もしたし。なのに、出ないし。入って来ちゃった。不用心過ぎるよ」 親父は朝から会社のゴルフ大会やし、弟達は買い物と病院に見舞い行くって言うてたな… 「ん…悪い」 「ん？今日は珍しく素直だね」

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【通勤電車56】侯隆＊side そりゃ、嫌でも素直になるやろ。 仕事の時は知らんけど、俺と会う時なんて、大半が… デニムのパンツにチェックのシャツにパーカー。髪の毛は1つ縛り。 化粧もしてるかどうかわからないような感じやのに、おしゃれして来いって言っただけで、こうも違うとは…

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【通勤電車57】侯隆＊side 「今日、なんや、スカートなん？」 「おしゃれして来いって言ったの誰？」 「俺…やけどさ」 「もしかして、侯くんの好みだった？」 「…そんな…ん、ええねん。着替えるから部屋出ろよ。30分したら、迎えに行くから、家で待ってろよ」 「はーい」

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【通勤電車58】侯隆＊side 久々に見る、スカート姿に正直… うん。ちょっと…な。 布団被ったまま、隙間から横目で見ると、目の前にあるタイツこそ履いとるけど、とにかく柔らかそうな太もも… 何度も、こいつとのあんなこと、こんなこと、そんなことって、どんなことやねん。はぁ…

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【通勤電車59】忠義＊side 夜に掛けた電話の返事は朝になってもない。 メールくらいは来るかもと、何度もセンターに問い合わせを繰り返すけど、新着メールはありませんのまま。 今日明日…休みやし… 会える保証もあらへんけど。 それでも、会えるなら、会いたいと思う俺が居て。

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【通勤電車60】忠義＊side 通勤電車と違う電車に乗るために、駅のホームで電車を待つ。 「今から行くと…14時過ぎくらいか…」 出発の時間まで時間が少しあったから、ホームで目的地までの時間を考えながら、時刻表を見ていると、聞き覚えのある声と、見覚えのある2人が歩いてくる。

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【通勤電車61】忠義＊side 俺にあの子を勧めときながら、やっぱり、横山くん…って思いながら、ニヤニヤしながら、声を掛けた。 順調そうな2人が少しだけ、疎ましく思えて。横山くんじゃなくて、わざと彼女に… 「昨日はどうも」 と言う俺。自分で言うのもアレやけど甚だ性格悪い。

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【通勤電車62】侯隆＊side 「あ、忠義くん」 「昨日と雰囲気違うな。そう言えば、足…大丈夫？」 「えっ…あ…うん。まだ少し痛いけど」 「横山くん、彼女昨日、靴擦れしてなぁ…」 え…？いつの間にこの2人仲良うなっとんの？俺が居るのに、何で大倉、俺よりあいつに声を掛けんねん。

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【通勤電車63】 しかも、何？昨日って。 あいつの帰りが遅かったん、大倉と飲んでたのが理由なん？ 俺、大倉の前では、こいつに興味ない素振りしたかもしれんけど… あれからの短期間で、飲みに行ったり、すぐにそんな関係になんの？なるもんなん？ って考え始めたら悶々としてくる。

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【通勤電車64】忠義＊side 彼女と話しをしながら、横山くんの方を見ると、やっぱり、不機嫌そうに口を尖らせながら、俺の方を見てる。 ごめん、横山くんからかうの相変わらず… ちょっとおもろいゎ。 それにさぁ…好きなら好きで、俺にそんなややこしいこと、言わなければいいのに。

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【通勤電車65】侯隆＊side 話しを聞いていて、大体のことはわかった。2人は幼稚園の頃の仲のいい友達と言うこと。 昨日の帰りに偶然会って、2人で飯を食いに行って、帰りが遅くなって、終電なくなって、歩いて帰ってたけど、あいつが靴擦れして、タクシー拾って、帰ってきたと言うこと…

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【通勤電車66】侯隆＊side 普通のことや思うで？ 俺やって、保育園の頃仲良かった奴とか居るし。 せやけど、許せる相手と許せない相手が居るねん。ちっちゃい男やと思われるかもしれへんけどな？ 高校時代… 付き合うてた子が、大倉が好きになって、俺は振られたりとかがあんねん。

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【通勤電車67】侯隆＊side 時間通りに来た電車に、乗り込みながら、大人になってまで、大倉に嫉妬せなあかんの？ でも、口出しすんのもおかしな話しやし、そんな悶々が無駄に続く。 隣で楽しそうに話をしてる2人を尻目に考えてまう。 「○○駅。○○駅です。…お乗り換えのお客様は…」

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【通勤電車68】侯隆＊side 「あ、降りなあかんから。またな」 「じゃあね」 「じゃあな」 「おん、またな」 よかった居なくなった。と思って安堵の表情を浮かべそうになると、 「ねぇ？侯くん。もしかして、ご機嫌斜め？」 と俺の顔を覗き込むあいつ。 「なんで、そう思うん？」

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【通勤電車69】侯隆＊side 「んー？なんか、ブスッとした顔して唇尖らしてたから」 完全に、バレとるやん。 「たまたま、昨日帰りに会って。ただ、男の人と2人だったって、言うと侯くん気にすると思って、言えなかったんだ…」 って、ごめんねって顔をしながら、彼女が言ってくる。

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【通勤電車70】侯隆＊side 「ん、わかっとる、何か嫌やってん。それより、足大丈夫なん？」 「うん」 「痛かったら我慢せんと、言えよ」 「珍しく、優しい」 「俺はいつも優しいですぅ」 「はいはい、わかってますよ」 やっぱり、はっきりさせとらんくても付き合うてるよな。コレ…。

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【通勤電車71】忠義＊side 横山くんたちと別れて、俺はいつも乗っている路線の電車に乗り込んだ。 目的地に向かうまでに、以前は当たり前のように乗っていた円を書くように街を走る電車にも乗った。その窓から見える高層ビルの景色はすでに懐かしい。 また、違う電車に乗って終点まで。

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【通勤電車72】忠義＊side 最後に乗換えた電車は人も疎らで。電車の椅子に座っていると、ウトウトしてしまう。 久々に夢も見た。 あの人と出会った時と別れた時の夢やったと思う。 全てが俺の中で美化されて居て。 ちっともいい思い出やないのに、夢の中で俺は彼女と笑っとった。

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【通勤電車73】忠義＊side 着いたのは、元カノが行きたいと必ず言った海。こんな所に来たからと言って、会える保証もないのに… 彼女からの電話が来るたびに、俺は嬉しくて、バイクを飛ばして会いに行った。 そんな彼女からのリクエストの大半は同じで、俺達は決まって、この海に来た。

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【通勤電車74】忠義＊side 最期に来たのは海水浴客も居た夏の終わりやったな… そんなことを思いながら、缶コーヒーを飲みながら、海を眺める。 もう、今は寒いだけで人も疎らで… 遠距離が理由で別れたわけやないねん。 ホンマは… 海を眺めていると携帯が鳴る。 「もしもし」

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【通勤電車75】彼女＊side さっき、駅で忠義くんに会ってから、侯くんのご機嫌斜め。 その理由が、私が昨日の帰りが遅かったのが、忠義くんと2人でご飯を食べに行ったと言うことだったみたいで… そのことに、嫉妬してくれてるんだって思ったら、嬉しくて口元が緩んでしまうのだけど、