二振り目の薬研藤四郎・日記3

二振り目の薬研藤四郎bot @second_Yagen

燭台切「無茶でもしなきゃ、守れないじゃないか…！」薬研「…っくそ、こうなったら…」長谷部「…主、主！ご無事ですか？！」薬研「…え、あ。長谷部の旦那…？」長谷部「薬研、燭台切！主は無事か？！」薬研「おう…無事、だぜ」燭台切「…長谷部くん達も、帰還…したんだね」薬研「って事は、外は」

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長谷部「あらたかは撃退した。それで、主は」薬研「だから大将なら無事だって…ちゃんと部屋ん中で大人しくしといてもらったから、心配いらねえよ」燭台切「……終わった？」長谷部「そうか、主は無事か、良かった…。…ん、燭台切？」薬研「！ 旦那！（崩れ落ちかけた燭台切を慌てて支える）」

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長谷部「酷い傷だな。手入れ部屋に放り込むぞ…。薬研、お前もだ」薬研「俺よか先に、外で戦ってた連中を」長谷部「俺に、こいつに加えてお前まで担ぎ上げていけと？」薬研「（何が何でも放り込むぞってツラだな…）…分かった」長谷部「自力で歩けるか」薬研「…歩ける」長谷部「よし。行くぞ」

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長谷部（燭台切は背に深い太刀傷、右上腕部、右腿、右腹部に深い傷。確かに重傷だ。だが薬研、お前だって左肩に深い槍傷、左右の腕に複数の切り傷、腹部、左腿に深手を負っているんだぞ。…二人揃って、大人しく手入れ部屋に入っていろ）

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長谷部「本丸の結界が破られるとは…対応策を考えねばな」石切丸「今日のところは、張り直した結界を私が補強しておいたよ」山姥切「重傷者は燭台切、薬研、江雪。中傷者は…本丸防衛に参加した者のほとんどだ。手入れ部屋が空き次第、順次治療に入らせる」

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長谷部「遠征組も順調に帰還しているから、本陣の警備はひとまず問題ないだろう。…山姥切、お前も手入れ部屋が空いたら治療しろ」山姥切「俺は後でいい」長谷部「ついさっき、お前の兄弟達が帰還していたぞ」山姥切「…二人に捕まる前に、手入れ部屋が空いたら入る」長谷部「そうしろ」

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堀川「兄弟っ、怪我したって本当？！」山伏「襲撃に遭ったというが、無事か兄弟！」山姥切（無言で逃走）堀川「あっ、こら、怪我してるのに無茶しちゃ駄目だよ！」山伏「待て兄弟！拙僧が山にて入手したこの薬草を！」 長谷部「（駆け去っていった堀川派三振りを見送って）…仲が良い事だな」

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燭台切「……ぅ、…」薬研「(刀身の手入れもまだ完了してねえとは聞いたが…こっちの傷も、まだ酷ぇな)…大丈夫か、燭台切の旦那(額に浮いた脂汗を拭う)」燭台切「……とうしろう、さん…」薬研「…悪いな。俺は薬研藤四郎だが、恐らくあんたの“藤四郎さん”じゃねえんだ…」燭台切「……、あ」

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薬研「燭台切の旦那。あんたが呼ぶ“藤四郎さん”は…一振り目だろ？」燭台切「…ごめん」薬研「謝る事じゃねえよ。あんたにとって一振り目は、特別なんだな」燭台切「…うん。…特別だったんだ」薬研「あんたの特別が折れて、見た目だけは同じ俺が来て。どう呼んでいいのか分かんなくなったのかい」

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燭台切「…違うって、分かっているんだ」薬研「ああ」燭台切「分かっているのに、呼び間違えてしまいそうで、…怖くて」薬研「ああ…大切な相手の事を、誰かと間違えちまうなんて嫌だよな」燭台切「違うよ」薬研「ん？」燭台切「あの人に対しても、君に対しても、だよ」

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燭台切「違う存在だって分かってて、どちらか片方をないがしろになんか、したくなくて、なのに混同してしまいそうで、それで、だから…ずっと、呼べなかった。いつかうっかり、呼び間違えてしまいそうで」薬研「…そうか(俺の事も、そこには含まれてたのか)」燭台切「なのに…ごめんね」

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薬研「ん？」燭台切「…間違えた」薬研「…ああ」燭台切「あの人が折れた時の事、思い出してしまって」薬研「旦那」燭台切「…あのね。彼はね。…藤四郎さんは、僕を庇って、折れたんだ。僕と、一期くんと、御手杵くんと、にっかりくんと、螢丸くんの前で」

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薬研「うん」燭台切「僕のせいなんだ」薬研「んな事ねえよ。…ああ、でも」燭台切「…うん？」薬研「やっとだな」燭台切「…何が？」薬研「やっと、泣いてくれた」

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薬研「やっと俺の前で泣いてくれたな、燭台切の旦那」燭台切「…っ、なあに、それ…。僕を泣かせたかったの？」薬研「おう。だってあんた、一人の時しか泣こかなかったじゃねえか」燭台切「…まって、何で、知ってるの」薬研「そりゃ、今まで泣いた事ねえんだから知ってるに」燭台切「そうじゃなくて」

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燭台切「何で、一人の時しか…って」薬研「…泣いてたろ。藤の下で」燭台切「？！」薬研「一人の時しか泣かなかっただろ。…だから、泣かせてえわけじゃあないが、泣いてくれんのは嬉しいぜ」燭台切「……藤の下での事は、忘れて…」薬研「無理」燭台切「本当に忘れて…」

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薬研「(あんまいじめたら可哀想だな)俺が起こしちまったようなもんだが…まだ手入れも終わってねえし、休んだ方がいいぜ、燭台切の旦那。いると気になるだろうから、もう行くぜ」燭台切「…あ」薬研「ん？」燭台切「…少しだけ、側にいてくれない、かな」薬研「…いいぜ。代わりに、聞いてもいいか」

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薬研「あんたが言いたくなけりゃ、無理には聞かねえが」燭台切「なあに？」薬研「一振り目と俺の違うとこ、聞いてもいいかい」燭台切「…いいよ」

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燭台切「藤四郎さんは、お酒も煙草もほとんど口にしなかったよ」薬研「そりゃあ品行方正だな」燭台切「じゃあ君は品行方正じゃないの？」薬研「さあなあ？」燭台切「それから、料理は上手だったよ」薬研「その才能は分けてほしいな」燭台切「目玉焼き、上達した？」薬研「黒い」燭台切「黒いんだ…」

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燭台切「君ほど感情表現が開けっぴろげじゃなかった…かな」薬研「そうなのか？」燭台切「かなり初期からここにいる人だったから…皆の面倒を見る側だったせいかもしれないね。他の短刀の子達とも仲は良かったけど、皆出遊んでるところは見た事なかったから」薬研「(むちゃくちゃ一緒に遊んでる)」

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燭台切「違うところはたくさんあるよ。ちょっとした表情とか、仕草とか。…でもね、時々君は、同じ事をしたり、言ったりする」薬研「ん？」燭台切「他の人には内緒だって、僕の口に甘いもの放り込んだり。僕の目を飴玉みたいだって言ったり。…違うのに、時々同じ事を言うから、少しだけ…辛かった」

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薬研「そっか…すまねえ」燭台切「君にそんな顔させたくないから、黙ってたんだ」薬研「燭台切の旦那は優しいなあ」燭台切「狡いだけだよ」薬研「んな事はねえさ」燭台切「…それからね」薬研「うん」燭台切「藤四郎さんは僕を、光忠って呼んでた」薬研「(だから俺が呼ぶと、悲しそうな顔したのか)」

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燭台切「…まだ聞く？」薬研「あんたが嫌じゃなけりゃ」燭台切「…ん、いいよ。…そうだな、藤四郎さんは…」

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青江「…様子を見に来てみれば」石切丸「おや。…燭台切も薬研も、仲良く手を繋いだまま眠っているね」青江「二人とも体力消耗してる筈だしね…。無理に離すのも可哀想だから、薬研には上掛けをかけてあげて…よし」石切丸「…今日はよく頑張ったね。おやすみ」青江「…おやすみ」

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お付きの狐「これは一体何事でございましょう？！」鳴狐「…襲撃？」骨喰「まさか」平野「…結界が張り直された上で強化されているようですし、門に残る傷…間違いありません、戦闘が行われた形跡が残されています」鯰尾「俺達が存在できてるって事は、主君は無事って事だろうけど…」