ア・ニンジャ・サドン・ライズ・アンド・スクイーズ#2

ニンジャが出て搾る!
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@nezumi_a

ア・ニンジャ・サドン・ライズ・アンド・スクイーズ#2

2015-04-22 19:07:17
@nezumi_a

「エー、イラッシェー!」二人のニンジャが鉄板グリルキッチンのノーレンをくぐると、イタマエのイナセなアイサツが出迎えた。シルバーチタン製のアーマーを装着したニンジャ、ブルースティングと、その相棒のアイアンスタッグ。サイバネティックゴーグルを装着した軽装のニンジャだ。01

2015-04-22 19:08:32
@nezumi_a

一般のグリル店であれば、ニンジャの格好をした客を歓迎するはずはない。良くてサイコ扱い、悪ければヨウジンボが出てきて叩き出される事となる。しかし、ダークスーツのヨウジンボは微動だにしない。イタマエは気にした風もなく、カウンター前の席に着いた二人にオシボリとチャを提供した。02

2015-04-22 19:11:06
@nezumi_a

両者とも装束にクロスカタナのエンブレムを身に着けた、ソウカイヤのエージェントである。そう、ここは一般的なグリルキッチンではなく、飲食店に偽装したソウカイヤのアウトポスト(前線基地)なのだ。クローンヤクザが常駐し、情報伝達、物資補給といった支援を目的とする施設である。03

2015-04-22 19:14:07
@nezumi_a

このヤクザキッチンのように食事サービスを提供する店の他に、サイバー将棋やオイランサウナ店といった施設がネオサイタマの各所にあり、何も知らない善良な市民はイチゲン・カスタマお断りの店という認識でそのノーレンを避ける。04

2015-04-22 19:17:18
@nezumi_a

ブルースティングとアイアンスタッグの二人は、ネコソギファンドに敵対するカコイコミ・ホールディングスの系列会社の施設破壊ミッションを無事完遂し、祝杯を挙げるべくこの店に入ったのだ。何も言わずとも氷結したジョッキにビールがなみなみと注がれて出てきた。05

2015-04-22 19:20:10
@nezumi_a

「俺たちの勝利に」「ラオモト=サンに」ジョッキが打ち付けられ、二人は一息にケモビールを飲み干す。ニンジャとて味覚は人間と変わりない。一仕事終えた後の一杯は格別だ。熱せられた鉄板に手早く油が敷かれ、続けて肉が置かれた。ヤクザシェフがそれを巧みな手つきで裏返す。06

2015-04-22 19:23:06
@nezumi_a

肉が焼ける音をBGMに、二人はミッションを振り返った。「今回のビズは手応えがあったな」アイアンスタッグが言った。「そうか?カコイコミのニンジャごとき、物の数ではなかったぞ」ブルースティングが鼻で笑う。「ハハハ、その肩の包帯が何か言ってみろ」「黙れ」07

2015-04-22 19:26:08
@nezumi_a

今回の任務は護衛ニンジャとの戦闘が長引いた。しかしブルースティングとアイアンスタッグのコンビネーションは堅実で、カコイコミ社お抱えのニンジャ二名は工場の発電タービン諸共に爆発して死んだ。ブルースティングの肩の火傷はその時に負ったものだ。08

2015-04-22 19:29:55
@nezumi_a

「うちのニンジャでないといえば最近、妙なニンジャの噂を聞くな」アイアンスタッグが言った。「妙なニンジャだと?」相方のブルースティングが問うた。「そうだ。なんでも宴会に現れ、ロウゼキを働いて去っていくらしい」「ロウゼキ?」「なんでも俺に聞くな、詳しい事は俺も知らんのだ」09

2015-04-22 19:33:03
@nezumi_a

「お二方、そろそろ食べ頃です」ヤクザシェフがしめやかに告げた。この者は非ニンジャであるが、リアルヤクザとして修練を積み、シェフとしても確かな腕前を持つ。それ故に二人の放つニンジャ存在感を前にしてもニンジャリアリティショックを起こさずにいられるのだ。10

2015-04-22 19:36:10
@nezumi_a

焼きあがったのは、厚さ五センチはあろうかというバイオ水牛のステーキと、オーガニックサーモンのムニエルだ。ステーキは赤身の中に細かく脂の含まれるシモフリと呼ばれるグレード。それを大胆にカットし表面には適度な焼き目、内側はレアという職人のワザマエで焼き上げたものだ。11

2015-04-22 19:39:07
@nezumi_a

サーモンはドサンコで水揚げされたオーガニックサーモン。脂の乗った切り身はやはり熟練の技で丁寧に焼き上げられており、薄く纏ったコロモは魚の旨みをヒミツめいて抱え込んでいる。ニンジャのイクサは激しくカロリーを消耗するため、ミッションの後にはこうしたメニューが好まれるのだ。12

2015-04-22 19:43:02
@nezumi_a

「なにがムニエルだ、食通ぶりやがって」肉汁溢れるステーキを頬張りながらアイアンスタッグが笑う。「バカめ、魚は身体にいいのだ」ブルースティングはショーユをほんの少しサーモン垂らした。香ばしい香りがニンジャ食欲を刺激する。その時である。13

2015-04-22 19:46:10
@nezumi_a

「レモン・シボリマスネ」居合わせたニンジャ、ヤクザのいずれでもない声が謎めいたチャントを紡ぎ、ハーフカットされたレモンを握る腕が、ブルースティングのムニエル上空に突き出された!「イヤーッ!」SPLAAAAASH!14

2015-04-22 19:49:12
@nezumi_a

カラテシャウトと共にオーガニックレモンは瞬時に握り潰され、たっぷりのオーガニック果汁を迸らせる!レモン果汁はムニエルをしとどに濡らし、隅々まで行き渡った!「「「アーッ!?」」」その様子に、ニンジャもヤクザも驚き叫んだ。15

2015-04-22 19:52:13
@nezumi_a

「そこだ!イヤーッ!」ブルースティングの放ったスリケンがヤクザシェフの右腕を吹き飛ばす!「グワーッ!」ケジメ!ヤクザシェフは腕から噴水めいて出血しながらその場に蹲る、しかし失禁なし!なんたるヤクザ胆力か!16

2015-04-22 19:55:15
@nezumi_a

「何者だ!」ヤクザシェフの背後にはいつの間にかダークブルーの装束のニンジャが居た。そしてその人差し指と中指の間にはスリケンがあった。ブルースティングの投げた物だ。「ドーモ、初めまして。スクイーズです」先手を打って濃紺のニンジャがオジギをした。17

2015-04-22 19:58:39
@nezumi_a

「ドーモ、スクイーズ=サン、ブルースティングです」「ドーモ、スクイーズ=サン、アイアンスタッグです」ソウカイヤのニンジャもオジギを返した。闘争本能すらも凌駕するニンジャの作法。それがアイサツである。「キサマ、ソウカイヤのニンジャではないな」18

2015-04-22 21:27:46
@nezumi_a

「そうだ」ブルースティングの問いに、スクイーズと名乗ったニンジャは短く答えた。カウンターを挟んで殺意が高まり、ヤクザキッチンの空気がどろりと濁る。「ザッケンナコラー!」イクサの緊張感に耐え切れなくなったクローンヤクザがチャカガンを抜いた!「イヤーッ!」19

2015-04-22 21:30:18
@nezumi_a

スクイーズはしなやかな動作で右腕を素早く振った。指で挟んでいたスリケンが「セルフに」と書かれたカウンター備え付けのボトルを貫通し、中身のチャを鉄板の上にブチ撒ける!ZAAAAAPPP!!一瞬にしてジゴクめいた蒸気が立ち上り、ソウカイニンジャたちは視界を遮られた。20

2015-04-22 21:33:06
@nezumi_a

蒸気の向こうで風が渦を巻く気配、そして「イヤーッ!」CRAAASH!窓ガラスの破砕音!「逃がすな!」「応よ!」二人はスクイーズを追い、店外へと飛び出した。アイアンスタッグは素早くサイバネアイを赤外線モードに切り替える。21

2015-04-22 21:36:05
@nezumi_a

緑色の闇の中、熱を強く纏った白いシルエットが向かいのヌレバメガネ社のビル屋上へと着地する姿を鮮明に捉えた。「いたぞ!」二人は猟犬めいて走り出す。ビルの外壁を駆け上りながらブルーは言った。「連戦だぞ、気を抜くな」「お前の方こそな」と、スタッグ。22

2015-04-22 21:39:07
@nezumi_a

戦闘者たちは三十階建てのビルを数秒で登りきると、フェンスを乗り越え、同時にエントリーした。ヌレバメガネ社のビルは周囲よりも高く、ニンジャであれば逃走の為に飛び降りるビルには事欠かない。しかし、サングラス型ネオンサインの傍らの闇に、スクイーズは雨に打たれて佇んでいた。23

2015-04-22 21:42:13
@nezumi_a

「逃がさんぞ、スクイーズ=サン」ブルースティングが背負っていた大振りなサイバーニンジャソードを抜き放ちながら言った。アイアンスタッグもまた、腰のホルスターへと手を伸ばしながら、抜かりなくスクイーズをスキャンする。24

2015-04-22 21:45:09