メイド・アンド・ヘヴン

ニンジャスレイヤー二次創作です。ごめんなさい……色々ごめんなさい。 メイド殺戮者注意。
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碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

◆おしらせ◆ ウキヨエの最中ですが、これよりニンジャスレイヤー二次創作をちょっとだけ流します。気になる方はミュートなどお願いします。 実況タグは #タケノコスレイヤー です。

2015-05-07 19:34:34
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ネオサイタマ繁華街の片隅に、一軒の小さな喫茶店がある。店の前には、奥ゆかしい濃紺のワンピースにフリルエプロンを着た若い女性が呼び込みに立つ。そう……ここは、オイラン文化全盛のネオサイタマで、レッドデータアニマルめいた存在となったメイド喫茶である。1

2015-05-07 19:35:53
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ゲイシャ、マイコ、オイランドロイド。それもいい。仕事とあらば付き合いもしよう。だが……男には、時に休息が必要なのだ。それはニンジャであろうと、例外ではない。今日もまた、くたびれたネオンの下を歩く疲れきった男が、店の敷居を跨ぐ。2

2015-05-07 19:37:16
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

今宵、店に足を向けた男の名はラジオグラファー。アマクダリ・セクトに所属するニンジャであるが……現在は非番だ。「オイランドロイドは、中身が透けていけねぇ」彼の持つトウシ・ジツは警備に最適であり、それ故に最高幹部の安全確保という、精神をカツオブシめいて削る激務を日々こなしてきた。3

2015-05-07 19:39:41
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「女は生身、それもメイドに限る」だがそれは、この一時の安息のため。扉を潜れば、そこには可憐なメイド装束侍女達が『オカエリナサイマセ、御主人様』といつものアイサツで彼を出迎えてくれる天国が待っている……その、筈であった。4

2015-05-07 19:42:37
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「ドーモ、イラッシャイマセ御主人様。だが、ニンジャは殺す」しかし、ブッダは寝ていた。彼の目の前に現れたのは、赤黒の死神だった。それも、メイド装束を着た。その口元は、おお……何たることか!『忍』『殺』のカンジが刻まれたメンポ!メイドがあからさまにニンジャスレイヤーなのだ!5

2015-05-07 19:48:54
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「待て……!」ラジオグラファーは思わず、尻餅を付いた。彼のトウシ・ジツはメイド装束の下に着込まれた、赤黒のニンジャ装束すらも見通していた。目の前に居るのは、紛うことなき臨戦態勢のネオサイタマの死神!「待たぬ。アイサツせよ」裏方であるラジオグラファーのカラテは実際弱い。6

2015-05-07 19:55:20
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

読者の皆様はこのままラジオグラファーが無残にも爆発を遂げると思われただろうが、そうはならかなかった。彼の……卓越したニンジャメイド喫茶通い力が、蜘蛛の糸めいた一筋の天啓を齎したのだ。「愛情オムライスケチャップサービス付き、トロピカルドリンクもセットだ!!」「……なに?」7

2015-05-07 20:00:12
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

一瞬戸惑う、ネオサイタマの死神。「斬新なハイクだな」「いや……違う。こいつは、注文だ」そう、ラジオグラファーが発したのは、メイド喫茶に古くより伝わる注文チャントである。「注文した以上、俺は客だ。最期にメシぐらい食わせろ」ニンジャスレイヤーの脳裏に一瞬、ある過去の情景が過った。8

2015-05-07 20:07:20
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

それは、彼がニンジャスレイヤーとなる前の……遥か彼方の出来事。「……良かろう。だが、この店を出るときがオヌシの命日だ。逃げれば即座に殺す」そう言い残し、ネオサイタマの死神は厨房へと去った。緊張が解けたラジオグラファーはしめやかに失禁した。9

2015-05-07 20:11:19
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

例えブザマを晒そうと、ラジオグラファーは一時死神の足音を遠ざけた。それは、特筆すべき快挙であろう。だが、店内に他の客の姿は無く。店の隅には急性MRS(メイドリアリティ・ショック)に襲われたと思しき本来のメイド達が蹲っている。「畜生、地獄絵図だ」10

2015-05-07 21:31:45
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

最早この店は天国でもメイド喫茶でも無い。入った者を冥土へと誘う巨大なカンオケだ。厨房からは、何らかの調理を行う音が聞こえてくる。ラジオグラファーは疲れに沈むニューロンをMRSで叩き起こし、生存ルートを模索する。11

2015-05-07 21:35:47
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

出口から逃げようとすれば、厨房からスリケンを受け死。かといって、まともにイクサを挑めば死。かくなる上は、少しでも時間を稼ぎ……アマクダリからの救援を望む他は無い。「俺は御主人様だ」ラジオグラファーは己に言い聞かせる。この契約がある限り、死神は手出ししては来まい。12

2015-05-07 21:40:04
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ジャッ、ジャッ、タマネギだ。タマネギを炒めている。通常のメイド喫茶の料理は作り置きも珍しく無く、レトルトを提供する店舗さえある。だが、それをフジキドは知らぬ。彼はメイド装束のまま、不器用な手つきでフライパンを振り続ける。無論、敵ニンジャの監視は怠ってはいない。13

2015-05-07 21:49:01
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

彼のニューロンから呼び覚まされるのは、大昔の記憶。ただのフジキド・ケンジであった頃の記憶。僅かな休日に、或いはフユコが体調を崩した時に。台所に立った、微かな記憶が彼の体を動かしていた。鶏肉、ウィンナー、ライス、ケチャップ。そして……彼は、もう一つのフライパンに油を挽いた。14

2015-05-07 21:55:41
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ジャアアア……!蒸発音を立てながら、卵がフライパンの上で広がる。「ニンジャ……殺すべし」フジキドは無意識にそう呟いていた。殺すべきは、アマクダリ・セクトのニンジャ、ラジオグラファー。彼を殺せば、アマクダリ・セクトの最中枢……12人の警備網に穴が開く。15

2015-05-07 22:01:07
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

だが、それは秘密裏に行わねばならない。ニンジャスレイヤーによるものであることを決して知られてはならない。知れれば、却ってアマクダリは防備を固めるだろう。自然に……そう、ごく自然に殺さねばならぬのだ。豚足やサツバツナイトなど、様々なオプションを検討した。16

2015-05-07 22:06:58
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

最終的に、ラジオグラファーの警戒が最も緩むポイントとしてこのメイド喫茶が浮上した。ナンシーは他の準備が忙しく、単独作戦となったが……失敗は許されない。ラジオグラファーはここで密かに殺す。フジキドは完成したチキンライスを移し替え、卵でとじる。その端は、微かに焦げていた。17

2015-05-07 22:14:37
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

◆アニメイシヨンに備えるために今日はここまで◆

2015-05-07 22:15:38
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「ドーモ、ラジオグラファー=サン。オムライスです」ニンジャスレイヤーは完成したオムライスをラジオグラファーの元へと運ぶ。オーボンにはオムライスと……ケチャップ・チューブが搭載されている。「違う……」「何?」「『ご主人様』だ」ラジオグラファーは絞りだすように言った。18

2015-05-08 00:10:06
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

例えネオサイタマの死神相手と云えど、譲れぬものは、ある。譲ってはならぬものはある。「勘違いするな。オヌシを今すぐ殺しても良いのだぞ」それは字面を追えば、古のツンデレ・リアクションのように捉えられたかもしれない。だが……殺忍機械の言葉には偽りが一切無い。19

2015-05-08 00:14:28
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「……わかった」ラジオグラファーは要求を飲み込んだ。彼はこの時、己の魂に屈したのだ。例えネオサイタマの死神であろうと、メイドの姿をし、メイド喫茶で給仕をしていればそれはメイド存在であるとみなすことが可能なのではないか?だが……ラジオグラファーはそれを自ら辞めてしまったのだ。20

2015-05-08 00:18:21