日本刀問題

武術、武道家を含めて刀剣学の知識もなくいい加減な事を言う人が多いので、刀についての解説を作りました。
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又四郎 @matamatamatayan

現代の刀剣学用語としての薙刀、長巻の定義と歴史用語としての定義は違う部分があるようです。刀剣学は原則として刀身のみで定義する傾向があるのに対して、歴史は昔の人の意見を尊重するので違いが生まれます。

2015-07-19 09:46:16
又四郎 @matamatamatayan

刀剣学と武術でも用語の意味が違う事があります。太刀(たち)と打刀(うちがたな)の違いについて刀剣学が重視するのは銘(めい)の位置ですが、武術では銘の位置などどうでもよく、柄や鞘など外装が重要です。

2015-07-19 09:46:38
又四郎 @matamatamatayan

もっと違うのが小太刀(こだち)です。刀剣学では刃渡り65cm前後の太刀の事で、用途には諸説あります。武術で小太刀と言えば脇差(わきざし)か短刀の事です。

2015-07-19 09:46:54
又四郎 @matamatamatayan

野太刀の流行は短期間で終わりましたが武器としては減少しつつも後世まで残りました。薙刀は長巻に似た形状から進化して柄が長く刃渡りが短くなり後世でも普及しました。しかし長巻は廃れています。

2015-07-19 09:47:13
又四郎 @matamatamatayan

長巻が廃れた正確な理由は不明ですが、推測すると武器として中途半端だったのでは?と考えられます。刀ではなく長物とも言い切れない刀と長物の中間、使い方も刀の要素と長物の要素が混ざった微妙な存在、それが廃れた理由のように思われます。

2015-07-19 09:47:32
又四郎 @matamatamatayan

廃れたと言っても少しは残っていて上杉家や織田家には若干の長巻隊がいたようです。しかし槍が下手な者に持たせろ、他家になし、等の記録があるようなので、戦国末期には珍しい物となっていたようです。

2015-07-19 09:47:50
又四郎 @matamatamatayan

平均的な日本刀は重量が大体0.8~1.2kg程であり、高校野球の試合用バットは0.9kg以上です。プロ野球は高校野球より重いバットを使う人もいれば軽い物を使う選手もいるようです。長さも的にも重さ的にも刀とバットはほぼ同じという事になります。

2015-07-28 22:40:43
又四郎 @matamatamatayan

これは偶然ではなく、威力、頑丈さ、使い勝手の良さを追求した結果でしょう。長くて重い刀もありますが標準にならなかったのは使い勝手の問題でしょうね。

2015-07-28 22:40:58
又四郎 @matamatamatayan

さて、南北朝時代には野太刀(のだち)、大太刀(おおだち)と呼ばれる長い刀が主流となりましたが、短期間の流行で終わっています。この時代には薙刀が普及していたのになぜ薙刀を使わなかったのか?という疑問があります。

2015-07-28 22:41:19
又四郎 @matamatamatayan

これは武士の正式武器は何か?を知っていれば答えが出る問題です。平安~鎌倉時代の薙刀は兵士の武器であり、武士にとっては二次的、三次的な武器であったと考えられています。

2015-07-28 22:41:35
又四郎 @matamatamatayan

戦国初期の大名の肖像画には正式武装で薙刀を持っている物があるのでこの頃には薙刀も武士の正式な武器になっていたようです。長い武器を使いたいが薙刀は正式武器ではないので、刀を長くしたというのが最も合理的ではないでしょうか?

2015-07-28 22:41:54
又四郎 @matamatamatayan

余談ですがこういう事は西洋の騎士にもあったらしく、騎士の正式装備は馬上では槍、馬を降りたら剣であり、その他の武器もありましたが好ましくないと考えられていたようです。現代人は合理的に考えすぎるところがありますが、昔の人は合理性以外の部分もかなりこだわっていたようです。

2015-07-28 22:42:25
又四郎 @matamatamatayan

その他の理由としては敵を威嚇する、戦場で目立つという事も考えられます。現代と違って昔の合戦は目立つという事が重要視される世界で、甲冑なども極端に派手な物があります。大型の武器にもそういう意味があったはずです。

2015-07-28 22:42:45
又四郎 @matamatamatayan

野太刀の中には全長が4m近い物もあり実際に戦場で使用されたと言いますが、実用性よりは目立つ、威嚇すると言う意味合いが強いと考えられます。

2015-07-28 22:43:03
又四郎 @matamatamatayan

江戸時代になると幕府が長い刀を禁止しますが、これは傾奇者(かぶきもの)と言う武士の中の不良のような人達が長い刀を好んだ為です。普通の武士でも旅の安全の為に長い刀を携帯する事がありました。

2015-07-28 22:43:26
又四郎 @matamatamatayan

傾奇者や旅行中に野太刀を携帯した武士全てが野太刀を使いこなせたとは思えませんから、威嚇、目立つというのは戦場外でも重要だったのでしょう。

2015-07-28 22:43:43
又四郎 @matamatamatayan

補足 昔の人の非合理性とか武士の装備の話を少し補足しておきます。非合理的な部分があったという話ですがこれが武術になるとまた違っていて、非常に合理的であり、武士の美学を無視している部分がかなりあったりします。

2015-07-28 22:44:04
又四郎 @matamatamatayan

例えば岡山藩(備前藩)に備前七英士とか黒袴七人衆と呼ばれた七人の侍がいました。この中に古流柔術と鎖鎌の使い手として中野半助という武士がいます。武器としての鎌と農具の鎌は一応別とはいえ武士に好まれるような物ではありません。

2015-07-28 22:44:24
又四郎 @matamatamatayan

特に鎖鎌は武士の魂である刀を仮想敵とする特殊武器ですから嫌いそうなものですが、半助はこれが得意で、どうも日頃から携帯していた可能性が高いようです。武士と言っても一般の武士と武芸者では感覚が違うようです。最も全ての武術が武士道と矛盾する訳でもなく、武士らしい流派もありますが。

2015-07-28 22:44:51
又四郎 @matamatamatayan

昔の武用刀は刃引きしていたか?という問題ですが徳川家康の言葉として「刀は中研が良い」という記録があるようです。中研ぎで斬れるし夜に刀が光らないから良いそうです。家康時代の中研がどの程度の砥か知りませんが美術刀剣の砥とは違うようです。

2015-08-06 22:39:54
又四郎 @matamatamatayan

幕末の記録では寝刃(ねたば)について興味深い話があります。寝刃には矛盾する二つの意味があります。一つは刃先が鈍った刀に鋭い刃をつける。もう一つは研いだ刀を中研に戻すという説です。

2015-08-06 22:40:12
又四郎 @matamatamatayan

この記録では前者の意味で用いていますが、戦場では寝刃は付けないとなっています。犯罪者との戦いでは付ける事もある。試斬では付ける事が珍しくないそうです。状況によって刃を付けたり付けなかったりするという主張ですね。

2015-08-06 22:40:30
又四郎 @matamatamatayan

近代の話ですが軍刀操法の戸山流は極寒の中国北部を想定しているので鋭く研いでいたはずです。寒い所では防寒着を着ていて、その上から斬る為の大技で体系を構築しているようですから。刃のつけ方一つとっても色々あったようです。

2015-08-06 22:40:55
又四郎 @matamatamatayan

奈良刀(ならがたな)と言えば粗悪品ですが、これについて面白い記録があります。昼頃に注文すると夕方には4~5振出来ていたと言います。作り方は長い棒を切って形を整え砥までやったそうです。明らかに普通の刀と製造法が異なります。

2015-08-16 20:53:47
又四郎 @matamatamatayan

量産品を数打ちと言いますが、江戸時代には数打ちにも上、中、下があったようですし、焼入れしていない刀もありました。木を刀の形にして漆を塗り金具を付けて真剣のように見せかけた木刀、竹光、鯨のヒゲで刀身を作った物まであったようです。この中には芝居用もあれば、実際に使った物もあるとか。

2015-08-16 20:54:41
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